今更聞けない「心理的安全性」とは -心理的安全性をぬるま湯にしない関わり方-

心理的安全性とは
「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織やチームの中で、自身の気持ちや考えを気兼ねなく安心して発言できる状態を指します。
たとえば、上司の意見に対して「少し違和感があるけど、経験と実績のある〇〇さんの言うことだから、一旦従っておこう」と思うことは無いでしょうか?
このような状態は「心理的安全性」が確保されている職場環境だと言うことは出来ません。
ビジネスに限らず人間関係において敬意をもって相手に配慮することは重要ですが、相手に遠慮して自分の考えを発言出来ないようでは優れたチームとは言えないのです。
「心理的安全性」に関するよくある落とし穴
それでは「心理的安全性」を職場の中で作っていくためにはどのようにすれば良いのでしょうか?
心理的安全性の高めるコツの前に“よくある落とし穴”を紹介いたします。まずは図1をご覧ください。

(図1|心理的安全性×目標に対する責任感)
参考:エイミー・C・エドモンドソン「The Competitive Imperative of Learning」より一部抜粋・日本語訳
https://hbr.org/2008/07/the-competitive-imperative-of-learning
組織やチームの存在意義はその目的を達成する事なので、メンバーがただ快適に働きやすいだけでは不十分です。図1においても「心理的安全性」と「目標達成に対する責任感」を組み合わせて組織の状態が定義されています。メンバーが自身の気持ちや考えを安心して発言した上で、それが目的達成や高いパフォーマンスの発揮に繋がることが組織にとって重要です。
つまり「心理的安全性」でよくある落とし穴のひとつは、メンバーにとって「快適」なだけの環境を作ってしまい、時として必要な厳しいフィードバックがなされなくなってしまうことです。
組織行動学のエイミー・C・エドモンドソン氏は、「心理的安全性」が高い環境にみられるサインとして以下の3つを挙げています。
1. 組織やチームの中でポジティブな発言が多い
2. ミスや失敗に対しても話し合えている
3. 笑いとユーモアがあふれていること
1つ目と3つ目はもちろん大切ですが先ほどの“よくある落とし穴”から考えると、2つ目の「ミスや失敗に対しても話し合えている」ことが、心理的安全性が担保され、かつ成果を上げる組織か否かを左右すると言えます。
心理的安全性を高めるコツ①:チーム内でのマネージャーからの 自己開示
ポジティブ/ネガティブ両方の面でお互いにフィードバックできるチームを作り上げることは、心理的安全性を高める上で非常に重要です。
一方で失敗や問題に関する話題を前向きに扱うのは難しい(恥ずかしいと思う)傾向にあるため、上司やマネージャーの方から率先して自身の失敗やミスを開示することがポイントです。
たとえば「○○について分からないから、Aさんの考えについて教えてくれないかな?」や「Bさんの話を聞いて、△△の観点が足りていなかったことに気づいたよ。ありがとう!」といった些細な会話も効果的です。
こうしたコミュニケーションを通じて“分からないこと(自分の無知)” や ”できていないこと(自分の無能)“を明かす事が決して悪い事ではない(むしろ良い事)、という考えがチーム内で徐々に浸透していきます。
心理的安全性を高めるコツ②:承認 ≠ 称賛
心理的安全性を高める上で重要なキーワードとして「承認」があります。
皆さんは「承認」からどのような事を連想されるでしょうか?多くの場合「称賛(良いことを褒めること)」と考えるのではないでしょうか?
しかし心理的安全性を考える上での「承認」の在り方は、「相手を尊重すること」にあります。
具体的には ①具体的な事実を伝える ②評価を加えない ③相手の反応を待つ の3つがポイントになります。
たとえば、以下のような二人の上司からのコメントを想像してみてください。
A 『最近とてもプロジェクトの動きが良さそうだね!今後もこの調子で頑張ってくださいね』
B 『この前は○○社との打合せでは、△△の観点で厳しいご意見を頂いたね。これについてCさんはどう考えている?』
Aさんは一見すると良い上司にも思えますが、以下のような特徴があります。
- 具体性に欠けて本当に見てくれているのが伝わりにくい(①)
- プロジェクトが上手くいかなくなる事にプレッシャーを感じる人もいる(②)
- 相談したいことがあっても言うタイミングがつかみにくい(③)
一方Bさんは扱う話題こそネガティブではありますが、相手を尊重した関わり方となっています。
つまり内容がポジティブ/ネガティブに関わらずオープンに相談し合い、それがメンバーの成長とチームの目標達成につなげられる事が、心理的安全性を高め、そしてぬるま湯にしないためのポイントです。
日々のコミュニケーションの中で心理的安全性を高める
日頃からチーム内での十分なコミュニケーションが取れていればよいですが、リモートワークや在宅勤務の増加などの働き方の変化によって難しくなりつつあります。
そうした背景もあり近年では、メンバーとの定期的なコミュニケーションの場として 1on1ミーティングへの注目が高まっています。
普段行っている1on1ミーティングの中で、まずマネージャーからの「自己開示」や「承認」を意識して行ってみてもよいかもしれません。
▶ 1 on 1ミーティングとは
上司と部下が1対1で行うコミュニケーションの場。従来の人事面談・考課面談とは異なり「部下の成長」を目的として短い間隔で定期的に行うことがポイント
まとめ
・「心理的安全性」とは、組織やチームの中で、自身の気持ちや考えを気兼ねなく安心して発言できる状態のこと
・“よくある落とし穴”として快適なだけの環境にならないよう注意!ミスや失敗に対しても話し合えることが重要
・心理的安全性を高めるコツ
① チーム内でのマネージャーからの自己開示
② 称賛ではなく、承認を行うこと
・日々のコミュニケーションの中で心理的安全性を高められる!