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漫才研修にヒッチハイク研修も!? ユニークな新人研修5選

2019.04.18

 4月に入り、フレッシュな新入社員が入社し、そろそろ新人研修が始まる頃です。座学でパソコンスキルや業界知識を身につけたり、実践でビジネスマナーを習得したりするのが、新人研修の定番だ。しかし、どうせ研修を行うなら、新入社員には楽しみながら社会人としての力を身につけてもらいたい。

 そこで、実際に企業で取り入れられている、ユニークな新人研修を紹介する。新人研修の内容に悩んでいる総務・人事担当者の方は、ぜひ参考にしていただきたい。

「漫才研修」株式会社アップガレージ

 中古車や中古バイク用品の買取・販売を行う株式会社アップガレージでは、新人研修として「漫才」を導入している。新入社員同士でコンビを組み、ネタを作り、発表し……という流れだが、驚くのはその本格さ。芸能事務所が運営する養成所の講師を招き、指導を受けてから取り組んでいるのだ。社内だけにとどまらず、お笑いライブに出演する社員も出ている。

 社内で発表して勝ち残ったコンビは、翌年の入社式で開催される「UP-1グランプリ」への参加権が得られる。そこで優勝すると賞金を獲得できるため、新入社員が研修に取り組む意欲も高い。

 そんな漫才研修、導入のきっかけになったのは、同社の会長である石田誠氏。もともとお笑い好きな会長は、漫才にはコミュニケーション力や度胸を養う働きがあると考えた。商品を販売するうえで、お客様とのコミュニケーションは必要不可欠なため、同社の新入社員は漫才で会話スキルを高めている。

「幼稚園研修」株式会社栃木ダイハツ販売会社・株式会社青森ダイハツモータース

 株式会社栃木ダイハツ販売会社や株式会社青森ダイハツモータースで取り入れられているのは「幼稚園研修」。新入社員が県内の幼稚園を5日間訪問し、子どもたちとの時間を過ごしている。絵本を読んだり工作をしたりといったレクリエーションだけでなく、給食や生活のサポートなどを通し、密度濃い時間を過ごす。

 同社が幼稚園研修を導入している理由は、社員の子どもに対応する力を向上させるため。カーディーラーの為、現場のショールームには子連れで来店する親も多い。その場合、親に車などの商品説明を行いつつ、子どもが飽きないよう対応することが求められているのだ。幼稚園研修の導入以前は、子どもとのコミュニケーションに多くの時間をかけ、親へ商品説明が十分にできないことも多かった。

 現在は、幼稚園研修を通し、子どもも楽しめるような現場作りを重視している。子どもと一緒に来店したとき、販売店のスタッフが子どもを楽しませていたら、親としては安心して商品説明に集中できるだろう。

「ヒッチハイク研修」株式会社イカイ

「ヒッチハイク研修」株式会社イカイ

 人材アウトソーシング事業や製造請負事業を展開する株式会社イカイでは、新人研修として「ヒッチハイク研修」を実施。新入社員は、本社から約100km離れた場所に車で連れられて、スマートフォンと財布を取り上げられる。そして、車から降ろされてから、研修スタートだ。

 連絡手段も現金もないため、本社へ帰るためには、ヒッチハイクをするしかない。そんな半強制的に動かざるをえない研修を通して、コミュニケーション力を磨いていく。知らない土地でピンチを切り抜けていくため、精神力や体力の向上も期待できるだろう。「100km離れた本社に戻らないといけなくて、少しでも目的地に近づくなら乗せてもらえませんか?」といった交渉力も重要だ。

 同社のヒッチハイク研修、学生時代にヒッチハイクを経験してきた新入社員なら、問題なくこなせるかもしれない。しかし、そんな経験豊富な新入社員は、なかなかいないのが現実だろう。

 勇気を出して声をかけ、交渉し、コミュニケーション力で一般人に協力してもらう。この研修を終える頃には、社会人としてだけでなく、人としてもひと回り成長しているはずだ。

「ハイテク研修」株式会社カネカ

 化成品などの研究開発を事業として展開する、株式会社カネカ。「カガクでネガイをカナエル会社」というCMで知名度が高いため、名前を聞いてピンとくる方も多いだろう。そんな同社では、新人研修として「ハイテク研修」を導入している。

 「ハイテク研修」と聞くと、ハイテクノロジー(先端技術)がまず思い浮かぶが、同社の研修は違う。「“はい”つくばって“テク”テク歩く」研修だ。

 舞台は、淡路島。新入社員は、いくつかのチームに割り振られる。チームに与えられるのは「定規・タコ糸・地図」という3つの道具で、これらを使い、事前に決められたチェックポイントを通らなければならない。そして、3時間ほどで約15kmのコースを制覇しなければならないのだ。

 コースは決して平坦な道ではなく、海沿いや山道も含まれる。この研修を攻略するのは、容易ではない。前日に相談する時間が設けられるため、チーム内で与えられた道具を使いつつ、どのような作戦を立てるかが攻略のポイントとなる。

 攻略できたできないに関わらず、淡路島のコースをゴールしたら、反省会を行う。作戦の何が良かったか・ダメだったか、本番では全員が協力できていたか、といった反省をチームでとことんする。

 この研修を通して、事前にプランを組む能力、チームでコミュニケーションを取る能力、現場で実践する能力、反省することで経験を次に活かせる能力が身につく。企業側は時間も費用もかかり、新入社員側は頭脳も体力も使う研修だが、その分得られるメリットも大きいだろう。

「kmウォーキング」国際自動車株式会社

 国際自動車株式会社が新人研修として取り入れているのは「kmウォーキング」。同社はタクシー会社であるため、タクシーで東京を回って地理を覚える研修が一般的のように思える。しかし、夜中の東京をチームで歩く、ウォーキング形式の研修が実施されているのだ。

 具体的な研修内容は、5〜6名でひとつのチームを作り、真夜中に歩きながら東京観光を行うというもの。観光といっても、東京都内にある観光スポットを回り、12時間ほどで35km歩かないとならない。チームで協力して回ることで、団結力やコミュニケーション力の向上が期待できる。

 同社がタクシーではなくわざわざ徒歩で研修を実施する大きな理由は、車では得られない発見ができるから。「人通りが少なく車が通りやすい穴場の道路がある」「抜け道があるから、目的地までの最速ルートが組める」など、タクシーの運転手として有用な経験を積めるのだ。

 また、車の窓ガラスを通さず、自らの瞳で観光スポットを観ることで、タクシーに乗車したお客様との会話のきっかけにもなるだろう。「浅草の雷門近くにある商店街のシャッターが撮影スポットですよ」など、自らの経験でおすすめできるのもポイントだ。

ユニークな新人研修を取り入れるうえで重要なのは「目的意識を持つこと」

 ユニークな新人研修は、楽しみながら能力を身につけられるメリットがある。

 しかし、忘れてはならないのは、それぞれの会社に求められている人材を育てるために、目的意識を持って実施されていることだ。

 例えば、株式会社栃木ダイハツ販売会社・株式会社青森ダイハツモータースが「幼稚園研修」を行うのは、店舗に来た子どもに対応する力が必要だから。普段子どもと接する機会のない企業で「幼稚園研修」を行っても、大きな効果は得られないだろう。

 「自分たちの組織は、どんな人材が必要なのか」を今一度しっかりと考え、理想像に見合う研修を取り入れてはいかがだろうか? 研修の方向性が固まったら、今回ピックアップしたユニークな新人研修の例を参考にしていただけると幸いだ。