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【取材記事】日本の働き方の強みを維持する 「日本型テレワーク」

2021.08.31

ポストコロナの働き方とはどうあるべきか、課題はどこにあるのか――。8月、外部有識者で構成する検討会(タスクフォース)は、総務省に向けた提言をまとめた。総務省はこれを受けて必要な施策の検討を始める。提言が出された背景や提言のポイントについて、情報流通振興課 課長補佐の隅田昂平氏に解説していただいた。

テレワークは個人・企業・ 社会それぞれにメリット

まず総務省がテレワークを推進しているのはなぜかというと、個人・企業・社会にとってそれぞれメリットがあると考えるからです。個人にとっては、後述するように「ウェルビーイング(身体的・精神的に良好な状態)」向上につながります。それによって、企業の業績も上がることが考えられます。
社会にとっては、日本の労働人口の減少が続く中で、子育てや介護をしている人など、さまざまな人が働きやすくなるメリットがあるほか、サテライトオフィスやワーケーションを通じて地方への人の流れをつくり、地域活性化につなげられると考えています。

「なし崩し的出社」が 増えるのでは…

今回の提言を出していただいた背景についてお話します。 新型インフルエンザの流行時や東日本大震災などの非常時、また「働き方改革」の議論などでテレワークはたびたび注目されましたが、浸透しませんでした。そんな中で発生した新型コロナウイルス感染症の影響により、大規模・一律にテレワークを求められたのが現在の状況です。
ただ、企業としては強制されて仕方なく実施している部分もあるのだろうと思っています。テレワーク実施率は、緊急事態宣言が発出されたときには上がりますが、解除されると下がります。企業にとってテレワークは「やりたくないこと」と捉えられていると感じています。
このままではワクチン接種が増えるにつれて、企業のしっかりとした意思決定がないまま、なし崩し的に出社が増え、これまで同様テレワークが定着しない可能性が高いと考えられました。
そこで総務省として、自発的で質の高いテレワークの定着に向けた施策を検討するため、外部有識者に提言を頂きました。

「ウェルビーイング」で パフォーマンスを上げる

提言では、日本ならではのテレワークの在り方「日本型テレワーク」を目指すべきだとして、次の五つが要素に掲げられています。

①日本のさまざまな社会課題の解決に寄与
②テレワークを契機としたICTツールの積極的な活用、BPR、DXの推進
③ソーシャリゼーションへの配慮
④世代間ギャップを埋めるための工夫
⑤ウェルビーイングの向上


検討会では特に「⑤ウェルビーイングの向上」がポイントとして取り上げられました。
テレワークは、子育てや介護のために時間を捻出するための手段という面ではなく、ストレスを減らす「ウェルビーイング」向上につながる点に着目するべきだというものです。
例えば、ストレスフルな通勤時間や取引先への移動時間をなくすことで個人のパフォーマンスが上がり、それによって組織や企業のパフォーマンス向上にもつなげることができます。

ICTツールの 積極的な活用を

「テレワークは日本の働き方になじまないからできない」とよくいわれてきました。
例えば、企業だけではなく私たち役所もそうですが、インフォーマルなコミュニケーションを重要視することが理由としてよく挙げられます。

テレワークを実施していないまたは取りやめた理由(該当企業の回答)

これを乗り越えるために重要なのはICTツールの積極的な活用です。
かつてはテレワークに対応できる仕事は限定的でしたが、現在は新たなツールが次々と登場しており、物理的にオフィスを共有していなくても、デスクトップ上で仮想的な職場を再現できるようにもなりました。
例えばバーチャルオフィスは、インフォーマルなコミュニケーションを重要視したICTツールといえます。ワクチン接種が進み、出勤者とテレワーカーが入り混じる「まだら状態」になった際には、このようなツールを活用して社員同士の一体感を醸成したり、孤独感を払拭したりすることも一つの手です。
また提言では、「テレワークを行うにあたって最初からさまざまなICTツールをまとめて導入する必要は必ずしもなく(中略)個々の企業の状況に応じて導入を図ることが適当」とも書かれています。
コロナ前後でさまざまなサービスが登場している中で、たとえば営業・経理・人事などにピカピカなツールをいっぺんに入れても、従業員が実際に使いこなせなければ意味がありません。
特に日本では、テレワークの普及に向けて試行錯誤した歴史がまだ浅いため、うまくいかない面があるのは当然で、トライアンドエラーが求められます。それぞれの企業の課題に応じて、実際に使う人が使いやすいツールの導入を目指していただきたいです。

テレワークの多くの メリットを知ってもらいたい

企業の経営者や管理者には、テレワークに多くのメリットがあることを知っていただく必要があるとも考えています。
柔軟で効率的なワークライフバランスを実現することで離職率が低下すれば、優秀な人材の継続的な確保につながる可能性もあります。ICT利活用はBPRやDXの推進にもつながるでしょう。
こうした企業の価値向上につながるような何らかの評価ができないかといった課題は、総務省でもさらに検討を深めていく必要があります。
他方で「テレワークは絶対に正義」ではないことから、必ずしも「テレワーク実施率0%=ダメな企業」ではありません。それぞれの企業や従業員に合った働き方を実現することが重要だと考えています。

総務省は「ユーザー目線」で 情報を整理する必要

総務省は2015年ごろより、「情報通信の利活用」という観点からテレワークの推進に力を入れてきましたが、実は関係省庁の中でも部署レベルでいろいろな施策を展開しているのが現状です。
例えばインターネットで「テレワークにはどういう支援策があるのだろう」と調べてみると、国の施策や都道府県の施策などがヒットするため、何が自社に合った支援策なのかが分かりにくくなってしまいます。「ユーザー利便性の向上」という観点から見直していきたいです。そのためには、既存施策を必要に応じて整理するとともに、他の省庁などにも呼びかけて、ユーザーにとってアクセスしやすい形となるよう一言的な情報発信を行っていく必要があると考えています。

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