上場ビジネス・シティホテルの8割が稼働率80%超となり客室単価も上昇
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、国内の上場ホテル運営会社13社の客室単価と稼働率を集計し、分析。インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、コロナ禍前を上回る客室単価と稼働率になっていることを明らかにした。
※本調査は、国内の上場ホテル運営会社13社の客室単価と稼働率を集計。調査は2024年1月に次いで3回目で、稼働率・客室単価は開示資料をもとに集計している。
好調なホテル経営 さらに上昇が見込まれる客室単価
TSRが実施した調査(※1)からは、コロナ禍の移動制限の解消と入国審査の緩和の影響を受け、ホテル需要が急回復している様子がうかがえる。TSRによれば、ホテル運営の上場13社(15ブランド)の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心にコロナ禍前を上回っており、最高を更新したホテルも相次いでいるという。
日本政府観光局によると、2024年3月の訪日外国人数は2019年同月比11.6%増の308万1600人(※2)で、単月の過去最高記録を更新した。国内客の延べ宿泊者数も堅調に推移しており、客室単価はさらに上昇が見込まれるという。
※1 出典元:インバウンド需要で「ホテル経営」が好調 8割のホテルが稼働率80%超、客室単価の最高が続出(株式会社東京商工リサーチ)
※2 出典元:訪日外客統計(日本政府観光局)
コロナ禍超えが顕著な客室単価 平均は69.2%上昇
TSRによれば、2023年10-12月期の客室単価は、コロナ禍前と比較可能な12ブランド(11社)で平均1万3819円に上昇。コロナ禍で最安値だった2021年の平均8163円から69.2%上昇したことになる。また、12ブランドのうち11ブランドは、コロナ禍前の2019年の客室単価を上回っており、さらに上昇が見込まれることが明らかになった。
前年同期との比較では、2期比較が可能な13社(15ブランド)は、すべて客室単価が前年同期より上昇している。上昇率の最多レンジは、20%以上50%未満で9ブランド。以下、50%以上70%未満と20%未満が各3ブランド、70%以上のブランドはなかった。
ビジネスホテルとシティホテル それぞれの実態
TSRはビジネスホテル8ブランド、シティホテル4ブランドについて、それぞれコロナ禍前の2019年(10-12月期)から2023年同期までの稼働率、客室単価を比較。
ビジネスホテルで、コロナ禍前と比較可能な8ブランドの稼働率は、最低は2020年(10-12月)の58.0%だった。一方、客室単価の最低は2021年の6794円が最安値に。2023年は5月の新型コロナ5類移行で、旅行や出張等の国内需要が回復した。これに伴い2023年10-12月の客室単価は1万2339円とコロナ禍前の2019年の9587円を2,752円(28.7%)も上回った。
ファミリー層や観光利用が多いシティホテルは、2020年10-12月期の稼働率は26.1%と20%台まで低下。コロナ罹患者の療養先として施設を提供したビジネスホテルに比べ、稼働率が大幅に落ち込んだ。一方、2023年は2020年比で53.9ポイント改善し、稼働率は80.0%まで大幅に回復。客室単価は2021年10-12月に1万904円まで低下し、2019年同期(1万5375円)比で29.0%下落したが、2023年は1万6843円に。コロナ禍前の2019年の1万5375円を1468円(9.5%)上回ったことがわかっている。
まとめ
本調査からは、ホテル経営がインバウンド需要などの影響を受けて好調となっている様子がうかがえる。一方で、TSRが実施した人手不足に関するアンケート調査(※3)では、宿泊業の9割以上が人材不足であることが明らかに。今後も増加が見込まれるインバウンド需要に対して、人材不足の宿泊業界では、今以上に採用力の強化が求められることだろう。
※3 出典元:「人手不足」企業、69.3%で前年よりも悪化 建設業は8割超が「正社員不足」で対策急務(株式会社東京商工リサーチ)