2025年4月の倒産は826件、前年比超え36カ月で戦後最長に TDB調査

株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、2025年4月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し、分析を行った。倒産件数は826件(前年同月760件、8.7%増)となり、4月としては11年ぶりに800件を上回ったという。
調査概要
集計期間:2025年4月1日~2025年4月30日
発表日: 2025年5月12日
集計対象:負債1000万円以上、法的整理による倒産
出典元:倒産集計 2025年 4月報(株式会社帝国データバンク)
戦後最長をさらに更新し36カ月連続で増加

TDBの発表によると、2025年4月の企業倒産は826件となり、前年の760件を66件(8.7%増)上回っている。ロシアによるウクライナ侵攻後の2022年5月から36カ月連続で前年を上回り、戦後最長の連続増加記録を更新したことになる。
業種別では7業種中5業種で前年を上回ったことが判明。最も多いのは『サービス業(前年同月208件→215件、3.4%増)』で、4カ月連続で前年を上回っている。次いで『小売業(同143件→195件、36.4%増)』が続き、4月としては『サービス業』『小売業』は2000年以降で最多を記録した。
地域別では9地域中7地域で前年を上回り『関東(前年同月290件→292件、0.7%増)』が2カ月ぶりに増加し最多となった。『近畿(同181件→218件、20.4%増)』は31カ月連続で前年を上回ったほか『四国(同11件→20件、81.8%増)』が最も高い増加率を記録している。
また、2025年1-4月の倒産件数は3299件となり、前年同期(3064件)を235件(7.7%増)上回ったことも判明。前年比2ケタ台の増加率が続いた2024年半ばまでの状況と比べると、増加ペースは緩やかだ。しかし、物価高、人手不足、価格転嫁難の状況は改善せず、高水準が続く。TDBは今後はトランプ関税の影響も加わることから、中小企業を取り巻く経営環境はさらに厳しさを増す可能性があると指摘する。
「コロナ借換保証」 返済本格化の動きや「トランプ関税倒産」の多発に注視
TDBは今後注視すべき動向として、まずひとつ目に「コロナ借換保証」の返済本格化を挙げる。同制度を利用して借り換えた事業者は2025年2月末時点で約30万件、約7兆円にのぼり、このうち約8割が2年以内の元本据置期間とされている。制度開始からはすでに2年が経過しており、これから2026年にかけて返済開始のピークを迎える企業が多い。債務履行できないケースもあるとTDBは予測しているようだ。
ふたつ目として挙げられたのが「トランプ関税倒産」の多発だ。現在は一時停止状態にある相互関税24%の適用が、日米両政府による交渉を経てどのような税率となるのか。その数字次第で、日本経済全体に悪影響を及ぼしかねないとTDBは指摘する。そうした懸念の中、TDBは2024年度に1万70件だった企業倒産が、2025年度は相互関税交渉の各種シナリオにより1万489件~1万687件に増加するとの試算結果を示した。
まとめ
人手不足、原材料や人件費の高騰など、企業を取り巻く環境は依然として厳しく、倒産件数が減少に転じる要素は乏しい状況だ。TDBが注視している「コロナ借換保証」 返済本格化の動きや「トランプ関税」の直接的・間接的な影響もあり、今後はさらに厳しい経営環境となる可能性も高い。事業存続をかけた正念場となる企業も少なくないだろう。
36カ月連続での前年比超えで戦後最長を更新し続けている企業倒産件数。その更新は緩やかながらもまだ続いていくとみられている。複雑化する経営課題の解決に向け、より一層の企業努力が求められていると言えるだろう。