女性活躍推進の7つの課題と解決アプローチ【女性の管理職志向を高めるには? Vol.2】
2026年4月から、常時雇用する労働者が101人以上の事業主に対して、女性管理職比率の公表と、男女の賃金差異の公表が義務化されます。女性活躍のさらなる推進が掲げられるなか、女性管理職比率の向上を喫緊の課題と捉える企業も少なくありませんが、単なる義務と捉えては少々もったいないかもしれません。投資家は企業のESGを重視し、求職者はダイバーシティを尊重する企業を選ぶ時代。女性活躍推進の取り組みは、もはや企業価値と採用競争力に直結する経営戦略なのです。
前回の記事では、女性活躍を阻む要因の一つでもある女性本人の管理職志向に関する実態をご紹介いたしました。本記事では、私たちが多くの企業の現場でのお困りごとと向き合ってきた知見から得た、女性活躍が進みにくい企業に共通する7つの構造的な課題をご紹介します。多様な社員が活躍する組織づくりを体系的に解決するきっかけとして、「7つの課題」から全体を見渡す考え方をお役立ていただけますと幸いです。
【過去のコラムはこちら!第1回】
女性活躍が進まない7つの構造的課題
女性活躍の重要性が叫ばれて久しく、多くの企業が女性活躍推進の取り組みを進めています。しかし、なぜ思うような成果が出ないのでしょうか。本コラムでは、共通する課題を1つずつご紹介します。
1. 目指す姿(ビジョン)の明確化
1つ目の課題は、そもそも「何を目指すのか」が見えていないということです。よくある例として、「2030年までに女性管理職比率を30%に引き上げる」といった数値目標だけが独り歩きし、「とりあえず女性を多く登用してその比率を上げよう」と手段が目的化してしまうケースが挙げられます。
重要なのは、女性活躍推進の先に「どのような組織を実現したいのか」というビジョンや意義を明文化し、全社で共有することです。
2. トップ(経営)のコミットメント
2つ目の課題は、経営トップが本気かどうか、またはその本気度が伝わっているかどうかです。制度や仕組みが整っていても、トップからの発信が弱いと現場は動きません。むしろ「やらされ感」が蔓延することもあります。また、トップが発信していても、実際のリソース配分(予算・人員)や評価への反映、公平性が不十分な場合、現場が「本気ではない」と受け取ってしまう可能性が高まります。
重要なのは、トップが表層的なメッセージだけではなく、制度改定など目に見える形で行動として示すことです。施策に対する現場の受け止め方は大きく変わります。
3. 上司の意識・マネジメント
3つ目の課題は、現場で最も大きな影響力を持つ直属の上司の意識や関わりの不足です。上司の理解や協力が無ければ、いくら制度が整っていたとしても実行力が伴いません。近年は特に、ハラスメントへの懸念から女性部下の育成に自信を持てず、遠慮や固定観念によって適切な期待や成長機会を提供できていないケースがあります。
女性社員の「やってみたい」を引き出すには、本人が目指すキャリアや自己実現の文脈で、管理職経験をどう生かせるかを共に考え、意図的に成長機会を付与していくことが重要です。このようなキャリアの効力感を高める関わりを日常的に実践できる上司を育成していくことが求められます。
4. 女性本人への意識醸成
4つ目の課題は、前回の記事でもご紹介した通り、当事者である女性が、管理職を現実的かつ魅力的な選択肢として捉えられていない点にあります。リクルートマネジメントソリューションズが2025年に実施した「若手・中堅社員の現状把握調査」では、女性は入社後一貫して管理職志向が低下しており、責任への心理的負担や自己効力感の不足、経営参画への関心が低い、という傾向があることが示されました。加えて、ロールモデルがあまり多くないことやライフイベントとの重なりにより「自分には向かない」「負荷が高い」という限定的イメージが固定化されやすいとも言えます。
一方で、実際に昇格してからは管理職への認識がポジティブに転じる例も多く、課題は能力や意欲の欠如ではなく、経験や情報不足に起因する認知のギャップにあると考えられます。本人が自らの強みや成長可能性を描けるよう、対話と段階的な経験を通じた意識形成が求められます。
5. 社内外への広報活動による風土醸成
5つ目の課題は、社員がいかに自分事として女性活躍推進を捉えられるか、つまり風土醸成のための発信力です。良い取り組みも、伝わっていなければ存在していないのと同じです。特に現場では「うちの部署には関係ない」「よその話だ」と他人事として捉えられがちです。だからこそ、1で述べたビジョンと連動させ、社内の成功事例や挑戦を、対話やメディアを通じて社内外に発信し続けることが必要です。ポイントは「リアルな現場のストーリー」と「挑戦の姿が見える場づくり」です。
例えば、社内イントラでのロールモデルへのインタビュー連載記事を配信する、社内交流の施策とリンクさせて経営層との対話セッション・部門別の取り組み共有会を行う、いち事例企業として外部メディアへ発信する、採用サイトでストーリーを紹介するなどのような取り組みが有効です。
6. 制度・仕組み化
6つ目の課題は、企業側の制度、仕組みについてです。ここでは3つの観点に分けて考えます。
① 人事制度上の課題
評価、配置、労働時間などの制度が、女性を含む一人ひとりの社員の活躍の観点で十分に整備されていない場合、制度設計の見直しが求められます。実際に改定に着手する際は、女性管理職や管理職候補者、その上司に制度上の課題をヒアリングすることが重要です。当事者の意見を取り入れることで、社員が実際に活用しやすい制度構築、運用につながります。
② 育成上の課題
若手段階から計画的に育成を行わなければ、数値目標達成のために焦ることになります。計画的にキャリア形成や能力開発の機会を提供していくことが重要です。特に課長昇格においては、経験が不足しているのか、能力が不足しているのか、本人側の意欲や自信が不足しているのか、課題を見極め、適切な学習テーマを選定することが求められます。
③ 施策運用の課題
よくあるのが、施策を実施したものの効果検証がされずに「やりっぱなし」になっているケースです。組織診断などで施策の効果を測定し、次の打ち手に繋げるといったPDCAサイクルを回すことが欠かせません。
これら3つが単発ではなく連動した「仕組み」になっていることが重要です。
7. 共通の価値観理解
7つ目の課題は、組織の土壌となる価値観に関するものです。「ダイバーシティ=女性活躍」と女性だけの問題として捉えられがちですが、本質は「一人ひとりの社員を生かす」という価値観を全社員で共有できているかどうかです。女性だけでなく、若手・シニア・外国籍・障がいのある方など、すべての多様性を力に変えるには、相互理解とリスペクトの文化づくりが必要です。
以上の7つの課題は個別に存在しているわけではなく、互いに影響し合い連動しながら組織に作用しています。研修だけ、制度だけ、あるいは女性社員本人だけへのアプローチといった部分最適な施策では、相乗効果が生まれにくい状態に陥りがちです。また、意識改革には時間を要するにもかかわらず、短期で取り組みが終わり継続的なフォローが欠如すると、「やっても変わらない」という諦めムードが広まってしまいます。
このように近視眼的にならないためにも女性活躍推進を取り巻く課題全体を構造的に理解し、包括的にアプローチしていくことが重要です。
成果を出す企業が実践している3つの共通項とは
ここまで7つの構造的課題を見てきました。「多くの課題があてはまってしまい、何から手をつければいいのか...」そう感じられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらの課題を考えすぎて立ち止まってしまうのは、もったいないです。
大事なのは、すべての課題を一度に解決しようとせず、取り組みやすいところから着実に始めることです。例えば「研修」は、比較的取り組みやすい施策として、多くの企業で取り入れられています。そこで、研修を起点として女性活躍を推進している企業の共通項をご紹介します。
ポイント① 施策が段階的、継続的な設計になっていること
本人の意欲醸成や上司側のキャリア支援スキル取得などは、単発の教育で成果が出るというものではなく、成果が出るまでに時間を要します。例えば、1年目に「意識醸成」、2年目に「影響力強化」、3年目に「マネジメントスキル」のように最低でも3年かけて、段階的に取り組みを深化させる工夫などができます。
また、対象者も選抜制から手上げ制へと段階的に拡大することで、社内の口コミも相まって、女性社員本人・上司双方に明確な変化が現れるケースがあります。
ポイント② マインドとスキルの両面支援をしていること
顕著な成果を上げた企業では、マインドとスキルの両方を支援しているケースがあります。例えばマインド面として、まずはMUST(自分の現状、周囲からの期待を理解する)、次にスキルとしてCAN(マネジメントに必要な知識や課題解決スキルなど実践的なスキルを学ぶ)、そのうえでWILL(キャリアを考える)、として順にアプローチしながら、その3つを統合することで、「ここで学んだことを実践できれば管理職になれそうだ」という自信と納得感をもってキャリアを歩めるよう支援します。
ポイント③ 女性本人と上司の同時支援をしていること
先程の7つの課題でご紹介したように、女性本人の意識醸成をしても、影響力の大きい上司が変わらなければ女性活躍は進みません。女性を支援しつつ、上司側も部下一人ひとりに合わせた関わりができるようになる必要があります。
実際に、日々研修に同席させていただくなかで、研修を受講された上司の方から
「日々の会話の積みかさねや個々にあった方法で成長を支援したい」
「一方的に期待を伝えるのではなく、お互いに納得できるキャリアをつくっていきたい」
といった声をいただくことがあります。
上司が協力者になるよう関係をつくることが、両者の成長とその先の女性活躍の推進につながるのです。
「やらされ感」から「やりがい」の醸成へ 全員が活躍できる組織を目指して
女性活躍推進は、女性だけの問題として片づけられるものではありません。すべての社員が性別や属性に関わらず、その能力を最大限発揮できる組織をつくることが本質的な目的です。
本記事でご紹介した体系的なアプローチは、一朝一夕には実現できないものが多いかもしれませんが、段階的に施策を積み重ね、モニタリングや当事者の声を聴きながら、PDCAサイクルを回し続けることで、3年後・5年後の変化につながります。これは容易なことではありませんが、その先には数値目標の達成だけでなく、社員が仕事を通じて活躍できる、強くてやさしい組織の実現が待っています。
まずは自社の現状、女性本人側が抱える課題の実態を把握することから始めていただけると、そこから生まれる小さな一歩が、組織の未来を変えるヒントにつながるはずです。今回ご紹介した内容がお役に立てば幸いです。







