敬語の使い方、間違っていない!? 部下にも伝えたい基本をおさらい【中間管理職のビジネスマナー10の基本 Vol.4】
こんにちは。株式会社トークナビ代表取締役・アナウンサーの樋田かおり(といだ・かおり)です。今回のテーマは「敬語の使い方、間違っていない!? 部下にも伝えたい基本をおさらい」です。
「社長のおっしゃられた通りです」!?
敬語はいくつになっても、難しいものです。アナウンサーとして厳しく訓練を受けた私も、時々、間違えてしまうことがあります。中間管理職世代の方は、普段のやりとりでは問題なく敬語を使えるのに、「上司と顧客が同席する場」「緊張する相手との会話」などの特別な状況では敬語の使い方がわからなくなることがあるのではないでしょうか。
先日、お会いしたある管理職の男性がそうでした。
男性の上司である社長が同席された打ち合わせでは、明らかに社長に対して萎縮されていました。そして、社長が男性に対して何か指摘するたびに、「はい。社長の申される通りです」「承知させていただきます」と敬語がおかしくなっていきます。
最後は私に対して「では(上司である)社長のおっしゃられた通りでお願いします」と言ってしまいました。社外の人に対しては身内に尊敬語を使いませんので、本来は「〇〇(社長の名前)が申し上げた通り」と、言うべきところです。
このように、特別な状況で慌ててしまわないよう、敬語のよくある間違いについておさらいしておきましょう。
敬語のあるある間違い①二重敬語
ビジネスでよく見かけるあるある間違いの1つめは二重敬語です。例えば、次のようなものがあります。
「おっしゃられる」
「お読みになられる」
「ご覧になられる」
聞いただけでは間違いと気づかないかもしれませんが、「おっしゃる」は尊敬語ですので、さらに尊敬語の「られる」を付けると二重敬語になってしまいます。
それぞれ、正しくは
「おっしゃる」
「お読みになる」
「ご覧になる」
です。
相手に失礼にならないようにと意識するあまり「られる」を付けてしまうと、二重敬語になりやすいです。
また、謙譲語を重ねることも、二重敬語になります。
例えば、
「お伺いさせていただく」
「拝見させていただく」
などです。
これも時々ビジネスの場面で、耳にしませんか?
「伺う」も「~させていただく」も謙譲語ですので、二重敬語になります。
二重敬語の中には文化庁も「習慣として定着している」と認めているものもあります。しかし、二重敬語が回りくどい、失礼だと感じる相手もいますので、ビジネスの場面では簡潔に「伺います」と言うのが良いでしょう。
また、敬称の使い方にも要注意です。
メールの文面などで「社長様」と書かれていることがあります。日常で定着してしまった表現の1つですが、実はこれも二重敬語です。
「社長」という呼称自体が敬意を示す表現であり、さらに「様」を付けると二重敬語になってしまうからです。本来、役職の後に「様」を付ける必要はありません。
敬語のあるある間違い②相手に謙譲語を使う
続いてよくある間違いは、相手に謙譲語を使ってしまうことです。
例えば、こんなシーンを想像してみてください。
1.来社された取引先の方に「〇〇部長に資料をお届けに参りました」と言われ、思わず部長に「〇〇様が参りました」と取り次いでしまった。
2.電話でお客様から担当外の質問を受け、「その件は担当の〇〇に伺ってください」と言ってしまった。
とっさに敬語を使わなくてはと焦って、間違えてしまうケースだと思います。
1の場合、「参る」は謙譲語ですので、正しくは「〇〇様がお見えになりました」「〇〇様がいらっしゃいました」と尊敬語を使います。
2の「伺う」も謙譲語ですので、相手の動作に使う言葉ではありません。「担当の〇〇にお尋ねください」「お聞きください」と尊敬語を使います。
このほか、
「先ほど、〇〇様が申されたように」
「ご遠慮なくいただいてください」
「書類を拝見されましたか?」
なども、相手に謙譲語を使ってしまっている例です。
「先ほど、〇〇様がおっしゃったように」
「ご遠慮なく召し上がってください」
「書類をご覧になりましたか?」
と尊敬語を使いましょう。
敬語のあるある間違い③身内に尊敬語を使う
3つめのよくある間違いは、身内に尊敬語を使ってしまうことです。
冒頭の「ある管理職の男性」の例がこれに当たります。
男性は社外の人間である私に対し、「では(上司である)社長のおっしゃられた通りでお願いします」と言ってしまいました。
男性にとって社長は身内に当たりますので、正しくは呼び捨てにした上で、「〇〇が申し上げた通り」と謙譲語を使います。ちなみに、「おっしゃられる」は二重敬語でもありますね。
身内は呼び捨てにする、というルールは、新社会人の電話対応研修でよく言われることです。わかっている、知っているという方は多いと思います。必要な場面で迷わず使えるように、おさらいしておきましょう。
ビジネスシーンで飛び交う「させていただく」
最後に、私が気になることの多い敬語「させていただく」を取り上げます。
総務部などバックオフィス担当の方であれば、社内会議の進行役を務めることも多いと思います。会議冒頭の挨拶で、こんなふうに「させていただく」を多用していませんか?
「本件担当させていただいている〇〇と申します。本日は私が進行役を務めさせていただきます。それでは、議題の1番目についてご説明させていただきます」
ビジネスシーンでよく聞く「させていただく」は丁寧でへりくだっている印象を相手に与えますが、使いすぎると相手に「回りくどい」「過剰で逆に失礼だ」と感じさせてしまいます。必要以上に使いすぎないよう、注意が必要です。
「させていただく」は文化庁の「敬語の指針」によると、
自分が行うことを、
①相手側または第三者の許可を受けて行い
②そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
に使われます。
そのため、①②の条件をどの程度満たすかによって 「させていただく」を用いた表現には適切な場合と、あまり適切とは言えない場合があります。
例えば、
A)相手が持っている書類のコピーを取るため
「コピーを取らせていただけますか 」
これは①②の条件を満たしていると考えられるため、適切と言えます。
B)プレゼンの場で
「それでは、発表させていただきます 」
この場合、発表することがすでに決まっており、誰かの許可を受けて行う状況でない場合には、シンプルに「それでは、発表いたします」という方が良いでしょう。
C)自己紹介で
「今の会社には3年ほど勤めさせていただいており… 」
これもたまに聞く表現ですが、会社で働くことは許可を得て行う行為とはいえないため、不適切と考えられます。
このように、「させていただく」を使う場合は、一度、①②の条件を満たしているか確認してみてください。
次回は「オンライン会議での効果的な魅せ方、聴き方のコツ」
本コラムでは、社会人経験10数年以上、役職もつき、部下もいる。そんな中間管理職のあなただからこそ再確認しておきたい「ビジネスマナーの基本」を、アナウンサー社長の樋田かおりがお教えします。
次回は、「オンライン会議での効果的な魅せ方、聴き方のコツ」のテーマでお届けします。堅苦しくなりすぎず、すぐ実践できることをお伝えしていきますので、ぜひご愛読ください。