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コンプライアンスの本当の意味や違反事例などからみる防止法

2020.06.09

 新聞やテレビなどで「コンプライアンス」という言葉を耳にする機会が増えてきているが、この背景にはリスク管理の一つにコンプライアンスを含める企業が増加しているという事実がある。一方で、コンプライアンスに違反による問題がニュースをにぎわせるケースも後を絶たないため、健全な経営を維持するためによりコンプライアンスへの理解を深める必要があるのである。

コンプライアンスとは

 一般的に「コンプライアンス」という言葉は、日本語で「法令順守」と訳されるケースが多いが、これは厳密には正しくない。英語のcomplianceという単語は、complyという動詞の名詞形であり、その意味するところは何かを「順守する」ということである。決してその対象が法令に限定されているわけではないのだ。

 そのため、コンプライアンスとは、単に経営において法律や規則を守るだけでなく、明文化されている法律や規則に加えて、社会的なルールとして一般的に広く認識されているようなルール全般を守って企業活動を行うという意味を有する。法令に加えて、社会のルールを守ることによって、企業に求められる社会的な責任を果たし、それによって社会における信頼を高めるとともに、知名度も向上させられるというわけである。

コンプライアンスが注目されるようになった背景とは

 コンプライアンスという言葉そのものは1990年代以前から世の中に存在していたが、特に企業経営において重要視されるようになってきたのは、2000年代になってからである。その要因としては、主に次の3点が挙げられる。

 まず一つ目は、経済のグローバル化などに伴って規制緩和が進んだ結果、企業が経済活動を自由に行えるようになる一方で、社会的な責任を求められるようになったという点である。自由だから何をしてよいというわけではなく、自由な行動によって生じた様々な問題については企業として責任を負わなければならないというわけである。

 二つ目は、2000年の前後に企業が多くの不祥事を起こしたという点である。ニュースなどでもたびたび取り上げられたので、記憶している方も多いかもしれないが、例えば顧客情報を流出してしまったり、マンションの耐震基準を偽装したりといった事例が相次いだのだ。

 それ以外にも、食品の産地偽装問題などが起きたのもこの時期である。さらに三つ目は、国の行政方針が見直され、それに伴って様々な法律が改正されたという点である。2000年に行政改革大綱が閣議されたことを受けて、それまで存在した厳格の規制の多くが緩和され、企業がより自由にビジネスを行えるようになったのである。

コンプライアンスの重要性

 企業の経営においてコンプライアンスが重要視されるのは、それによって不祥事防止につながるとともに、企業価値を向上させられるからである。ルール順守の大切さを一人ひとりの社員が心に刻んで行動するようになれば、必然的に不祥事を起こす可能性は低くなるはずである。

 また、ルールを守って真面目にビジネスを行っている企業は社会的にも信頼され、その企業の商品やサービスを利用したいと考える顧客も自然と増えていくだろう。そのため、直接的な目的ではないものの、コンプライアンスの徹底によって、企業価値の向上につながるというわけである。

 コンプライアンスの重要性は、それを無視して法を犯した場合にどのような結果が生じるかを見ることでもよく分かる。ルール違反をすれば、その企業は社会的な信用をなくすだろうし、その結果、収益が大きく落ち込むというのは不可避である。信用が回復できないような最悪の場合には、倒産に至るケースもあり得るのだ。コンプライアンスを重視すれば、そのようなリスクを抑えられるとともに、社会的な信頼も得られるので一石二鳥である。加えて、法令順守の精神や社会の良識を理解したうえで守っているという企業自身のアピールにもなるだろう。

会社として整備すべきこと

 コンプライアンスを企業経営に取り入れるためには、単に社員に対してルールを守れというだけでは十分ではない。まず行うべきは、企業としてどのような行動をとるべきかという規範を策定することである。行動規範が明確であれば、社員がどのように行動すればよいか迷ったときの道標となるのだ。

 また、コンプライアンスを推進するために必要となる様々な社内規定を整備したり、コンプライアンス担当の専門部署を設けるといった施策も必要である。それに加えて、社員の意識づけのために、研修などを通じて教育や啓蒙活動を行うようにするとよいだろう。それらの取り組みが実を結んでいるかをチェックするために、継続的にモニタリングするのも必要となる。モニタリングで見つかった不十分な点を随時改善していくことで、より頑健なコンプライアンス体制が構築できるのである。

コンプライアンス違反の事例

 これまでに発生したコンプライアンス違反の事例は多岐にわたるが、それらの多くはいくつかのタイプに分類できる。

 まず、一つ目のタイプは、不正会計である。不正会計が起こる背景には、経済不況などの影響を受けて業績が悪化したために、このままでは企業価値が毀損してしまうと考えて、損失を隠すために会計上の数字を操作してしまうという経営者の心理がある。そのため、景気が悪くなればなるほど、このタイプの不祥事は増える傾向にあるのだ。

 二つ目のタイプは、労働問題である。一言で労働問題といっても、労働基準法に違反した長時間労働や、セクハラやパワハラ等のハラスメント、不当解雇などその内容は実に様々である。これらの問題が起きると、就活中の学生から敬遠されるほか、企業に対する社会からの評価も下がってしまうので注意が必要である。
 三つ目のタイプは、個人情報の漏洩である。顧客などの個人情報は、企業の重要な情報資産の一つであるため、万が一流出してしまうと、企業への信頼が大きく毀損されかねない。インターネットの普及によって、容易に情報漏洩が発生するようになっているため、このタイプの不祥事は近年特に注目されているのである。

 最後の四つ目のタイプは、食品問題である。このタイプには大きく分けて、産地や賞味期限等の表示を偽装するというパターンと、食品の衛生管理を怠るパターンの2つがある。前者の典型例は、賞味期限が迫ってきた商品の表示を書き換えて期限後も販売するというものである。期限切れになると廃棄しなければならないため、そのような偽装工作を行ってしまうのである。また、後者の典型例は、飲食店などで食品の加熱が不十分で食中毒を引き起こしてしまうというものである。収益重視でコンプライアンスを軽視すると、そういった不祥事が起きやすくなるのだ。

違反事例から考える予防対策

 前述したような不祥事を起こさないためには、対策を徹底することが重要である。企業ごとに採るべき対策方法は異なるが、共通して行うべきなのは、自社のリスクの洗い出しである。それと並行して、企業として順守すべき法律について把握するのも大切だ。法律の内容は非常に専門的なので、社内の人間だけでは把握しきれないのであれば、法律のプロである弁護士に相談するとよいだろう。

 例えば、食品会社であれば食品衛生法の知識は知っておくべきであるし、製薬会社であれば薬事法の知識は不可欠なのである。それ以外にも、世の中には聞いたことがないような専門的な法律も少なくないため、自分たちだけですべての法律を理解していると安易に考えないようにしよう。

 また、経営陣だけが危機感を抱いていても不祥事は防げないので、研修等を通じてそういった危機感を社員に伝えるようにすべきである。

正しい行動で会社を守ろう

 以上で見てきたように、コンプライアンスを守るには、社内規範や体制を整えるとともに、定期的な社員研修を実施することがポイントとなる。コンプライアンスを軽視した結果、重大な違反を犯して廃業せざるを得なくなってしまった企業も少なくないので、そのようなリスクを避けるためにも企業として徹底的に体制を構築するようにすべきである。

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