バックオフィスのDXを効果的に進めるためには?得られるメリットや施策のポイント
「デジタル変革」を意味する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。バックオフィス業務は企業を支える土台でありながら内容が多岐に渡るため、担当者としては「DX化することで業務効率を高めたい」と考えることもあるのではないだろうか。
今回はバックオフィスにDXが必要をされる理由や導入することで得られるメリット、具体的な施策や円滑に進めるポイントを紹介する。基本的な知識をおさえ、自社の体制構築に役立ててほしい。
目次
●バックオフィスにDXが必要とされる理由
●バックオフィスのDX化で得られるメリット
●バックオフィスのDXに向けて行いたい施策
●バックオフィスのDXを円滑に進めるポイント
●まとめ
バックオフィスにDXが必要とされる理由
バックオフィスのDXとは、煩雑で手間のかかる作業の多いバックオフィス業務に最新のデジタル技術を活用することで、既存の価値観や枠組みをアップデートし、働き方を変革させていくこと。まずは、バックオフィスにおいてDXが必要とされる背景をおさえよう。
企業の核となる業務であるから
バックオフィスとは、顧客との直接的なコミュニケーションが発生しない、「労務」「経理」「人事」「総務」「法務」などの社内業務全般を指す。いずれも企業の機能を維持するために必要不可欠な業務である一方で、多くの作業が発生するため、ヒューマンエラーも起こりやすいという課題がある。
特に経理の入力ミスは取引先への支払いや従業員の給与振込などにも影響するため、小さなミスが大きなトラブルに発展する可能性がある。社内外の信用・信頼を守るためにも、DXによって迅速かつ安定した業務を行おうとする動きが高まっている。
労働人口の減少で人手が不足しているから
少子高齢化に伴う労働人口の減少や近年の売り手市場により、慢性的な人手不足に悩まされている企業も多い。また、バックオフィスは専門的な知識を要する業務もあることから、属人化しやすいといった課題もあるだろう。バックオフィス業務をDX化することで、「生産性の向上」「社内体制の改善」といった効果が期待されている。
バックオフィスのDX化で得られるメリット
バックオフィスのDX化を進めることにより、企業にはどのような効果があるのだろうか。ここでは、DX化で得られるメリットを紹介する。
業務効率が上がる
バックオフィスのDX化による最大のメリットは、業務効率が向上することだ。バックオフィス業務は多岐に渡るうえに作業量も多いため、デジタル技術を導入し作業や管理を自動化することで、従業員の負担が減る、ヒューマンエラーを防止できるといった効果が望めるだろう。
各部署において効率化が期待される業務の例を、以下に挙げる。
●労務:勤怠時間の管理、残業時間の計算、稟議書の回覧
●経理:経費精算、領収書のデータ入力、帳簿作成
●人事:社員情報の管理、面接記録の管理
業務効率が上がることで、これまで作業に費やしていた時間を原因分析や課題解決に割くことも可能になるだろう。
コストを削減できる
DXの推進で業務の自動化・省力化が実現できれば、コストの削減にもつながる。例として「2人がかりで行っていた業務を1人で対応する」「入力作業を行うアルバイトの人数を減らす」など、人的コストを抑えることが可能となる。
また、書類のデジタル化が進めば、用紙代や印刷代、郵送費の他、書類を管理する什器代なども節約できるだろう。これらは地球環境に配慮したSDGsの活動にもつながり、環境マネジメントシステムに関する国際規格が取得しやすくなる、企業のイメージアップにつながるといったことも期待される。
属人化を解消できる
バックオフィスのDXにより、属人化を解消できるという点もメリットだ。業務が属人化すると、自身の不慮の事故や疾病、家族の看病・介護などで担当者が出勤できない状況になった場合に、業務が止まってしまうという恐れがある。DXによってデータの自動取り込みや数値計算が行われ、デジタル化された情報を必要なときにすぐに確認できる状況になれば、そのようなリスクも低くなるだろう。業務フローなどのマニュアルをデータ化しておけば、休職者や退職者が出た場合にもスムーズな引き継ぎが可能だ。
バックオフィスのDXに向けて行いたい施策
バックオフィスのDXを進めるには、どのような施策を行うとよいのだろうか。具体的な内容を見ていこう。
バックオフィス業務のペーパーレス化
1つ目の施策は、ペーパーレスの実現だ。契約書や請求書、領収書など、あらゆる書類を紙ベースからデジタルデータにシフトすることで、以下の効果があると考えられる。
●サインや押印のために出社する必要がなくなる
●複数人が同時に書類を閲覧できる
●書類を物理的に移動する必要がなくなる(稟議書など)
●印刷費、郵送費、移動費などのコストを削減できる
●申請先(年金事務所、税務署など)までの移動にかかる時間を削減できる
●紙ベースの資料を保管するスペースが不要になる
●情報の検索時間が削減できる
●書類紛失のリスクを下げられる
2022年1年には、ペーパーレス化の促進を目的とした「改正電子帳簿保存法」が施行されることもあり、今後は紙ベースの書類を電子データ化して一元管理することが必要となっていくだろう。
参考/関連記事:『2022年1月に改正される電子帳簿保存法とは?概要と改正内容のポイント』
クラウドサービスの活用
バックオフィスのDXの推進には、クラウドサービスの活用もポイントだ。インターネットが利用できる環境下であれば時間や場所を問わず情報の閲覧・入力・共有などができるため、「最新の情報を得られる」「他部署との連携が容易になる」「リアルタイムで経営状況を把握できる」などのメリットが生まれる。
また、紙媒体で確認したりオフィスに出社したりする必要がないことから、テレワーク勤務も可能となる。在宅勤務を希望する求職者の採用や離職者の防止にもつながり、多様な働き方を実現できるだろう。
RPAの導入
より高度なDXを実現するためには、RPAの導入も欠かせない。RPAとは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で、ロボットが人の作業を代行・代替すること。AIや機械学習などの認知技術を含み、数値入力やメール送信、翻訳、売上分析などの自動化が可能となるため、少人数で複数の部署を兼務するスタートアップ企業やベンチャー企業にも有効だ。
また、企業経営では労働基準法や特定商取引法など、遵守すべき法律が数多くある。RPAを導入し法律の内容を自動で反映すれば「残業代の未払い」などのリスクが軽減でき、従業員がより安心して働ける環境を整えられるだろう。
バックオフィスのDXを円滑に進めるポイント
最後に、バックオフィスにおけるDXを円滑に進めるためのポイントを紹介する。
業務の課題を整理する
まずは、社内のバックオフィスにおける業務課題を整理することが大切だ。DXのメリットを理解していても、課題に対して適切な施策を講じることができなければ、余分なコストがかかるうえに効果も半減してしまうだろう。課題によって従業員にどれだけの負担が発生しているのかや、実際にかかる工数、発生頻度、コストなどを可視化し、取り組むべきDXの方向性を明確にしよう。
効率化するポイントを固める
「従業員の負担が大きく、アウトソーシングも難しい業務に導入する」など、DXを行う範囲を絞ることも重要だ。広範囲で一斉にDX化を進めると、「マニュアルを作成する」「操作方法を覚える」「取引先の理解を得る」といった作業が同時に発生し、導入から定着までにより多くの時間がかかったりパフォーマンスが低下したりする恐れがある。「工数の多い業務でツールを導入したが、発生頻度が少ないためにツールの導入が不要だった」というケースも起こり得るだろう。このような理由から、DXを導入すべき業務に優先順位をつけ、効果を検証したうえで段階的に推進することが理想的だ。
まとめ
バックオフィスにおけるDXの推進は、業務効率の向上やコストの削減、属人化の解消といったメリットが期待される。デジタル技術活用の動きは今後さらに加速していくと予想され、DXを計画的に推進していくことで、スマートな企業経営や従業員の満足度向上、多様な働き方が実現できるだろう。導入の際には自社の課題にあわせた施策やツール選択が必要となるため、一度、自社のバックオフィス業務の課題を可視化し、体制を見直してみてはいかがだろうか。
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