降格人事とは?降格人事の概要や、行う際の注意点を解説
従業員の従来の地位・役職を下回る配置を行う「降格人事」。降格人事はインパクトが大きく、実施することにネガティブな印象を持つ人も多いだろう。しかし、やむを得ない理由で降格人事が必要となることもある。
本記事では、降格人事の概要や処分内容、降格人事を行う際の注意点などを解説する。自社において適切な降格人事を行うための参考にしてほしい。
目次
●降格人事とは
●降格の種類
●降格人事の処分内容
●降格人事を行うステップ
●降格人事を行う場合の注意点
●まとめ
降格人事とは
降格とは、「従業員の地位・役職を引き下げる」こと。まずは、降格人事の概要と降格人事が必要となるケースを紹介する。
降格人事の概要
降格人事とは、労働契約に基づき従業員の役職・職位を上位から下位に引き下げる人事措置のことを意味する。降格人事は従業員にとって不利益となるため、判断基準を明確にするなど透明性の確保が求められる。
降格人事を検討する主なケース
企業において降格人事が行われることの多いケースは次の通り。
・能力・経験・スキル等の不足が認められるケース
1つ目は、該当従業員の能力や経験、スキル不足が認められるケースだ。業務を遂行するにあたって能力等が足りないと判断された場合は、降格人事の対象となるだろう。たとえば、管理職であるにもかかわらずマネジメントスキルが不足している場合などが該当する。
・ハラスメントなどの規律違反が認められるケース
2つ目は、パワハラやセクハラなどのコンプライアンス違反が認められるケースだ。ハラスメントだけではなく、会社が所有する金品の横領や盗難を行うなど、規律違反を行った場合も降格人事が行われることがある。
・勤務態度の怠慢が認められるケース
3つ目は、遅刻や無断欠勤など従業員の勤務態度の怠慢が認められた場合が挙げられる。社内の秩序を保つためにも降格人事を検討することとなるが、このようなケースでは、事前に会社側が当該従業員に対し適切な指導を行う必要がある。それにもかかわらず改善が見られない場合は、降格人事の対象となるだろう。
・業務成績が悪化したケース
4つ目は営業成績の低下などが見られた場合だ。会社側が設定した目標に対し、著しく結果が下回った場合や、成績の改善が認められない場合には、業務成績の悪化を理由に降格人事を検討することもある。
降格の種類
降格人事の処分の種類は「人事異動としての降格」「懲戒処分としての降格」の2種類に分けられる。それぞれの特徴と特徴を見ていこう。
人事異動としての降格
従業員の能力などが不足していることが理由で役職に不適任と判断した場合、会社が人事上の措置として役職から外す場合がある。このような降格は人事異動としての降格であり、法律上「降職」「降級」の2種類に区別されている。
【降職】
降職とは、職位を引き下げること。従業員の役職・ポストを解任し、下位の職位への降格を行う措置を指す。下位の役職への引き下げに伴い、役職手当が減額になることも多い。
【降級】
降級とは、従業員の給与等級の引き下げや、職能資格を引き下げる措置のことだ。職能資格に合わせて手当が支給されている場合は、職能資格の引き下げとあわせて減給とするケースもある。
降格及び降級は、どちらも社員の適性や能力、実績などを総合的に考慮した上で行う処分であり、会社にある程度の裁量が認められている。
懲戒処分としての降格
従業員の問題行為や規律違反に対して行われる「制裁措置」として降格を命じる場合は、懲戒処分としての降格となる。就業規則上の懲戒事由に該当していること以外にも、合理性があり、社会通念上相当であると認められた場合に限り認められる点が「人事異動としての降格」と大きく異なる。厳格なルールが適用され、違反した場合は無効となることも知っておきたい。
降格人事の処分内容
降格人事を行う際には、同時に処分を下すことも多い。どのような処分方法があるのか、具体例を見ていこう。
減給
一定期間において、一定の割合で賃金を減額することを「減給」処分という。減給は、降格人事と合わせて行われることが多い代表的な処分だ。先述した人事異動による降格のうち「降職」や「降級」を実施する場合は、基本給ではなく、役職手当や職能資格手当を減額するケースが多い。
役職の変更
会社における役割や任務、ポジションを表した呼び名を「役職」という。 その役職が消滅したり、下位の役職に引き下げる処分を実施する場合もある。役職の変更は会社都合の降格である事も多く、その場合は減給は伴わないのが一般的だ。
異動・出向
降格人事として、職種や勤務地の変更を伴う「転勤」のほかに、会社に在籍したまま他企業で働く「出向」を命じるケースも考えられるだろう。従業員の業務内容が大きく変わる可能性が高いため、慎重な対応が必要だ。出向に関しては、事前に該当従業員の承諾が必要であることも把握しておきたい。
降格人事を行うステップ
実際に降格人事を行うことになった場合は適切な対応が求められる。ここでは、降格人事を行う際の流れを紹介する。
<ステップ1>現状把握
まずは降格人事を行うために具体的なデータや証拠を揃えよう。規律違反や著しい業績の低下などが報告された場合、原因を把握するとともに、事実確認をしっかりと行うことが大切だ。
<ステップ2>降格人事の検討
次に、降格人事が必要かどうか検討を行う。降格の必要性が認められれば「降職」「降級」「懲戒」など、具体的な処分内容もあわせて検討しよう。
<ステップ3>降格可否の判断
つづいて、該当従業員に弁明などの機会を設けて改めて事実確認を行い、降格可否の判断を行う。ここで、降格理由となる事柄に改善の見込みがあると判断できる場合は、一定期間様子を見てから最終判断を下すことが望ましい。それでも改善が認められない場合は、降格人事の実施の判断をしよう。
<ステップ4>通知
降格人事が決定したら該当従業員に対して「文書」で通知する。この場合、文書を作成する際はビジネス文書の形式に従い、誰から誰に向けて通知するのかを明記する必要がある。
降格人事を行う場合の注意点
降格人事を実施する場合は、従業員とのトラブルを避けるためにも慎重な対応が求められる。把握しておきたい注意点を見ておこう。
就業規則に降格の条件を明記する
降格人事を行う際に最も重要なことは、就業規則に降格に該当する条件を明記することだ。企業の降格人事に対する考え方について、明確かつ客観的な判断基準を提示しておく必要がある。就業規則に記載がない場合は、違法な降格人事として大きな問題に発展するリスクがあるため注意が必要だ。
コンプライアンス違反に注意する
降格人事を行う際には、「コンプライアンス上の問題がないか」という点にも注目しよう。故意による不当な人事など違法性が認められる降格人事は「人事権の乱用」として無効となるほか、処罰を下した側のコンプライアンス違反も問われてしまうことを理解しておきたい。
従業員のモチベーションに配慮する
降格人事はインパクトが大きく、会社全体のモチベーションに大きな影響を及ぼすものだ。降格人事を実施する場合は、会社の秩序を保てるよう、従業員のモチベーション維持にも配慮して対応することが望ましい。
まとめ
降格人事とは、従業員の地位・役職を下げる人事措置のことを言う。従業員のモチベーションや意欲に大きな影響を及ぼす大きな決断であり、明確な根拠となる証拠やデータを用意して公平性や透明性を確保することが重要だ。降格人事を行う際には社内の規律を守り正しい判断ができるよう、慎重を期して検討しよう。
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