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フィジカルAIで日本の現場を再起動~AWSジャパン 2026年新年記者発表会~

2026.02.03
奥山晶子
(左から)アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 常務執行役員 技術統括本部長 巨勢泰宏氏、同社代表執行役員社長 白幡晶彦氏、同社常務執行役員 パブリックセクター統括本部長 宇佐見潮氏

2026年1月27日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下AWSジャパン)は「AWSジャパン 新年記者説明会」を開催し、2026年の重点方針を発表した。クラウド提供20年、日本リージョン開設15年の節目を迎える今年、同社は「その先へ」を掲げ、AIインフラ投資の強化、フィジカルAI支援の本格化、そして人材・社会への取り組みを一体で進める姿勢を示した。

デジタル変革に伴走し、AI技術への投資を続ける

デジタル変革に伴走し、AI技術への投資を続ける

発表会ではまず、代表執行役員社長の白幡晶彦氏が登壇。今年はAWSにとってクラウドサービス開始から20年、日本でのリージョン提供開始から15年という節目の年にあたる。白幡社長は、これまで掲げてきた「日本のために、社会のために」というメッセージに加え、新たに「その先へ」という言葉を示し、短期的な効率化にとどまらず、長期視点で日本のデジタル変革に伴走する姿勢を強調した。

取り組みの一つとなるのが技術投資だ。AWSジャパンは2027年までに、国内のAI・クラウドインフラへ約150億ドルを投じる計画を掲げている。白幡社長は、AWSジャパンがこの15年で行った国内インフラへの投資は、幅広い業界のイノベーションを支える基盤になっていると説明した。2025年にはホンダや三菱電機といった大企業でもAI活用が本格化し、デジタル変革のスピードが一段と増している。

また白幡社長は「AI技術の投資において最も重要なキーワードは『選択肢の提供』です」として、Amazonの基盤モデル「Amazon Nova」に加え、Anthropic、Meta、Mistralなどオープンモデルも利用できるようにし、企業が目的に応じて最適なモデルを選べる環境を整えていると強調。中でもAIエージェントにおける「フロンティアエージェント」を、自然言語の指示で自律的に目標を達成する自律システムとして紹介した。

フィジカルAI開発支援プログラムを開始

白幡社長は、さらに次なる目玉施策として「フィジカルAI開発支援プログラム」を発表した。フィジカルAIとは、ロボットが「見る」「理解する」「動く」を統合的に行う身体性AIのことで、「ロボティクス」とAIを融合した領域だ。VLA(Vision-Language-Action)モデルの開発を中心に、総額600万ドルのAWSクレジットや技術支援、コミュニティ形成、Go-To-Market支援を提供する。

背景には、Amazonが世界300以上の施設で100万台のロボットを運用してきた実績がある。ロボットフリートを最適化する生成AIモデル「DeepFleet」では、移動時間を10%短縮する成果も出ており、こうした知見を日本企業に開放することで、ロボット産業の高度化を後押しする狙いがある。

信頼性への投資とAIエージェント

信頼性への投資とAIエージェント

続いて常務執行役員の巨勢泰宏氏が登壇し、AWSの信頼性を支える技術を紹介した。2024年に発表された中空構造の光ファイバー「ホローコアファイバー」は、すでに数千キロの敷設が進んでおり、光が空気中を通ることで遅延が30%改善するという。これによりデータセンターの配置自由度が高まり、基盤展開における重要なイノベーションとなった。

セキュリティ面では、毎日1億以上のインタラクションを分析し、120万の悪意あるドメインを検出・遮断していることが紹介された。70億件の不正スキャンを最速1秒でブロックする仕組みも整備されており、「私たちの目標は、AWSを攻撃者にとって最も手間がかかり、割に合わないターゲットにすることです」と、セキュリティに対する熱意が示された。

また、AI時代の開発環境として発表された「KIRO」では、従来18カ月・30人で行っていた開発を、6人・76日で完了した事例も紹介され、生産性向上のインパクトが強調された。

AWSジャパンにおける人と社会への投資

AWSジャパンにおける人と社会への投資

最後に登壇した常務執行役員の宇佐見潮氏は、人材育成と社会実装の取り組みを紹介した。AWSジャパンは2017年からの9年間で80万人にクラウドスキル研修を提供しており、高専との連携や医療現場への「エンジニア道場」展開などの地域に根ざした取り組みも進めている。神戸大学医学部との連携では、教育・研究・医療の幅広い領域で生成AIを活用したソリューション構築を支援している。

自治体のガバメントクラウド移行に向けては、36都道府県で説明会を開催し、4万人が参加した職員向けトレーニングを実施した。2026年夏には、これまで全国7都市で開催した「デジタル社会実現ツアー」を実施予定だ。宇佐見氏は「日本全体の活性化にお役に立てるよう進めてまいりたいと考えております」とし、発表を締めくくった。

日本はフィジカルAIで再起動できるか

質疑応答では、日本のフィジカルAI開発における課題について質問が上がった。白幡社長は、日本の強みと課題を次のように整理した。

「プレゼンでもお話しした通り、日本には機会(オポチュニティ)が溢れています。言うまでもなく、日本は機電、メカトロニクス分野において世界をリードしてきた実績があり、多くの優れた企業がいらっしゃいます。一方で、日本が抱えている労働人口不足という社会問題に対応していく中で、フィジカルAIが果たすべき役割は非常に大きいと考えています。

世界はものすごいスピードで動いており、各国がしのぎを削る中で、AWSのグローバル規模での知見・経験、そしてAmazonグループが持っているロボティクスの実績を組み合わせることで、日本の社会課題を解決する大きなソリューションになり得ると考えています。このプロジェクトを通じて、お客様と伴走しながらスピード感を持ってイノベーションを起こしていきたいと考えています」

フィジカルAIをはじめとする取り組みが、企業の変革をどこまで後押しできるのか。日本の現場が直面する課題に対し、技術と伴走支援の両面で向き合う姿勢を示した発表会となった。