プロが教える新社会人のための印象力アップ講座 第3回: 報連相に悩む新入社員への「魔法の合言葉」
本連載では、 “ディレクションもできるアナウンサー”として活躍しているフリーアナウンサーの井上智惠(いのうえ さとえ)氏が、新社会人が知っておくべきマナーの基本を5回にわたって指南します。3回目は、「報連相」に悩む新入社員へのアドバイス。ニュースの現場で鍛えられた“短く・正確に伝える技術”をマスターすれば、「時系列で話してしまう」「つい言い訳から入ってしまう」といった新人がつまずきやすい伝え方のクセが一挙に解決します。
「相手が今、一番知りたいこと」から伝える習慣を
新社会人によくあるのが、「何度も電話したのですが、全然〇〇さんとつながらなくて……」と、自分の努力や事情から話し始めてしまうケースです。このように物事を時系列で、言い訳も含めて順に話すのは話し手にとっては楽ですが、聞き手は、一番聞きたいことを結末まで待たされることになってしまいます。
本来、最初に伝えるべきなのは「連絡がつきませんでした」という事実であり結論です。その後で「何度か電話しましたが不通でした」と補足すれば十分です。「一生懸命頑張りました」「こういう経緯がありました」といった説明は多くの場合、結論を理解するうえで必須ではない雑情報にすぎません。
「結論から話す」というのは、多くの新人にとって高いハードルですが、
・相手が知りたいことは何か
・まず結論を伝えているか
この2点を意識するだけで、報告や連絡は格段にわかりやすくなります。
新人のころは私も、話し始めると「それで?」「結末は?」「結論は?」「結局何が言いたいの?」と何度も言われました。プロデューサーや先輩アナウンサーから厳しく詰められ、関西文化の影響が強い職場ではオチまで求められました(私の最初の赴任地は徳島でしたが、関西の番組が多く、自然とオチまで要求される環境だったのです)。
今思えば、上司も同じように鍛えられてきたからこそ指導してくれていたのだと思いますが、新人時代はただでさえ緊張しているのに急かされて、話すこと自体が怖くなることもありました。そこで私は後輩には、上司への報告であっても「ニュースならどう伝える?」と考えてみようと伝えています。
上司への報告は、ニュースのリード文をイメージする
ニュースにはリード文があり、最初の一文で「どこで何が起きたのか」「何を伝えたいのか」が分かるようになっています。忙しい上司に負担をかけないように、効率的に報告をするには、その形を真似るとよいでしょう。いきなり細かい説明に入るのではなく、「何の話で」「どれくらい時間が必要か」を最初に示すのです。
例えば「○○の件で、30秒ほどご報告よろしいですか」「○○について1分ほどお時間いただけますか」といった具合に、内容と時間をセットで伝えるのです。ただし、言い方が硬すぎると相手を驚かせてしまうので、「すみません、少しお時間よろしいでしょうか。○○の件で30秒ほどご報告したいのですが」と、トーンはやわらかくするのがポイントです。特に忙しい上司の場合、「1分なら聞けるよ」と判断しやすくなるため、何の話か分からないまま「時間ください」と言うよりも親切です。このように最初に看板を出すと、話す側も「短い時間で結論から伝えよう」「余計な説明は省こう」と意識するようになり、自然と話し方の改善にもつながります。
話の順番は、結論→理由→具体例→結論
ビジネスでのプレゼンや文書作成では、PREP法を用いるとよいとされています。これは、結論(Point)、理由(Reason)、具体例(Example)、結論(Point)の順で伝える話し方ですが、この構成はニュース原稿とよく似ています。これはジャーナリズムの世界で逆「ピラミッド方式」と呼ばれる、重要な情報から順に積み上げる構成法です。ビジネスでもニュースでもまず「何が起きたのか」という結論を最初に示し、次に「なぜそうなったのか」という理由を伝え、さらに「どのくらい影響があったのか」「具体的にどうなったのか」という事実や数字を示し、最後に今後の見通しやまとめを加えます。
たとえば株価のニュースなら、「日経株価が高騰しています」と結論を述べ、「〇〇の影響を受けて」と理由を示し、「最高〇〇円になりました」と具体例を出し、「今後は〇〇に注目が必要です」と締めくくります。この流れはそのままビジネスにも応用でき、忙しい上司に余計な時間を使わせず、重要な点を先に伝えるという思いやりにつながります。
上司は最初の一言、つまりリード部分しか記憶に残らないことも多いため、本当に大切な結論を最初に伝え、その後に理由や具体例を補足する構成が鉄則となるのです。
事実を述べてから、自分の考えを述べる癖を
新社会人が上司への報告でしてしまいがちなのが、事実と自分の所感を混ぜて話してしまうこと。頭の中でまず「事実」と「意見」を分ける習慣をつけるよう伝えるとよいでしょう。最初に自分の考えは脇に置き、起きた事実だけを先に伝え、「ここまでが事実です」と区切ります。そのうえで、「ここからは私の考えですが」と前置きして意見を述べるようにすると、事実と所感の境界線がはっきりします。
この話し方が身につくと、個人的な感想を仕事の情報に混ぜない人だという印象を与え、信頼性も高まります。例えば「取引先と連絡がつかない」という報告では、「取引先に電話していますが、現在つながっていません。ここからは私の考えですが、電話では難しそうなので、直接伺うのが最善かと考えます。いかがでしょうか?」と分けて伝えるのが一例です。
悪いニュースを伝える時は、解決策とセットで
ミスやトラブルなどの「悪いニュース」を上司に伝えるときは、感情を乗せすぎず、淡々と正確に伝えることが大切です。声のトーンを落ち着かせ、語尾をはっきりさせることで、事実が冷静に伝わります。その上で重要なのは、「悪い結果の報告」と「現在の対応状況」「今後の改善策」をセットで伝えることです。上司が本当に知りたいのは、何が起きたかだけでなく、それをどうカバーするのかという点だからです。
例えば取引先に迷惑をかけた場合、「本日先方に伺い、手土産を持参してお詫びします」といった具体的な対応を添えることで、印象も和らぎます。通常のミスであれば、事実とあわせて今後の取り組みを伝えることが、上司の感情を逆なでせず、素早く理解してもらうためのポイントになります(ただし、会社全体に影響するような重大なトラブルの場合は、個人で原因や対策を無理にまとめようとせず、まずは事実だけを迅速に報告することが優先です)。
相談をする時は、丸投げでなく選択肢を示す
仕事の相談では、友人同士の恋愛相談のように「どうすればいい?」答えを全面的に委ねるのではなく、自分なりのプランを持っていく姿勢が重要です。例えば「こういう依頼が来ました。私はA案とB案を考えていますが、その中ではA案がよいと思っています。いかがでしょうか」という形で伝えると、相手はゼロから考える必要がなく、YESかNOかを選ぶだけで済みます。これは相手の負担を減らし、質の高い相談になります。ミスをしてしまった場合でも、「電話でお詫びしたほうがよいでしょうか。それとも直接伺ったほうがよいでしょうか」と選択肢を提示すれば、上司は判断しやすくなります。
エレベーターに乗っている時間で伝えたいことをまとめるトレーニングを
話をコンパクトにまとめる癖をつけるには、日常の中で「文字数」や「時間」をあらかじめ決めて要約する練習をするのが効果的です。例えば140文字の文字制限があるSNSの「X」に投稿するイメージで、見た映画やドラマを140文字程度で友達に紹介してみるだけでも、立派なトレーニングになります。
また、「エレベーターピッチ」という考え方も参考になります。これはエレベーターに乗っている短時間(約15〜30秒、長くても1分程度)で簡潔にアピールするプレゼンテーション手法です。会社にエレベーターがあるなら、それに乗っている時間を使って、特定のテーマを頭の中でまとめてみるだけでも効果があります。こうした練習を重ねると、雑談でもダラダラ話している印象を持たれにくくなり、本当に必要な言葉だけを選ぶ力が自然と身についていきます。
結論から先に簡潔に伝えるのは、相手への優しさ
もしかしたらこのように、結論から先に簡潔に伝えると冷たい印象を持たれるのでは、と不安に思う方もいるかもしれません。でも、結論から話すこと自体は、決して冷たいわけではありません。むしろ結論を先に伝えるのは、相手の時間を無駄に奪わず、何の話かをすぐ理解してもらえるという点で「優しさ」だといえます。最初に結論が分かると、相手は安心してその後の話を聞くことができるからです。
もし冷たく聞こえるのが不安なら、語尾を丁寧にしたり、少しゆっくり話したり、「恐れ入りますが」「大変言いにくいのですが」といったクッション言葉を添えれば印象は大きく変わります。結論から話すことは突き放す行為ではなく、相手への思いやりを形にした伝え方であり、言い方を工夫すれば、むしろ「わかりやすくて親切な人」という評価につながるのです。
話す前に、頭の中でテロップの見出しをつける
報連相に悩む新入社員への「魔法の合言葉」は、「頭の中でテロップをつけてから話す」です。テレビの字幕のように、「今から何を伝えるのか」を一言の見出しにしてから話し始めると、自然と余計な情報が削ぎ落とされます。「この話題のタイトルは何か」「字幕にするなら何をピックアップするか」と一瞬考えるだけで、話の軸が定まり、相手の時間を奪わない伝え方になります。「多忙な相手の貴重な時間を無駄に奪わない」ということを常に心においてコミュニケーションをとることが、社会人としての基本なのです。
プロフィール
井上 智惠(いのうえ さとえ)
大学卒業後、NHK徳島にてニュース番組、情報番組のキャスター他、ラジオニュース、中継など幅広く担当。2012年からはNHK水戸に移り、観覧者を巻き込んだ公開生放送番組のメインキャスターを5年間務める。その他「おはよう日本」ローカルパートのキャスターや渋谷の放送センターにて首都圏枠の「ひるまえほっと」にリポーター兼ディレクターとして出演。NHKに在籍した10年間でディレクター業務を含め複数の賞を受賞。現在はディレクションのできるアナウンサーとして活動を行う一方、株式会社トークナビの女子アナ広報室に所属し、企業のメディアプロモーションを行っている。









