プロが教える新社会人のための印象力アップ講座 第4回: 新社会人が身につけたい「ビジネス雑談力」12のヒント
本連載では、 “ディレクションもできるアナウンサー”として活躍しているフリーアナウンサーの井上智惠(いのうえ さとえ)氏が、新社会人が知っておくべきマナーの基本を5回にわたって指南します。4回目のテーマは「ビジネス雑談力の高め方」。職場では、年齢も価値観も違う人と話す機会が一気に増えます。そんなときに役立つのが「雑談力」。職場の空気をやわらげ、困ったときに助け合える関係をつくる“仕事の武器”にもなります。「雑談は苦手……」という方でも今日から実践できるヒントをご紹介します。
【ヒント➀】心を開けば、会話は自然と弾む
人見知りの方でも、雑談を避けすぎるのはもったいないことです。ふだんから言葉を交わしておくことで、いざというときに助け合えたり相談しやすくなったりと、雑談は人間関係のリスク管理にもなる大切なコミュニケーションです。
とはいえ、初対面の相手との雑談はベテランでも難しいもの。そんなとき大切なのは「自分がどう見られるか」という自意識を手放し、相手への興味のアンテナを思い切り立てることです。
私はアナウンサーとして初対面の方にお話を聞く機会が多いのですが、「この方は私の知らない世界をたくさん知っている」と思いながら、「ぜひ教えてほしい」という気持ちで向き合うようにしています。そうした気持ちは言葉にしなくても態度から伝わるもの。「あなたのことを知りたい」という心の窓を開いていると、相手も安心してたくさん話してくれるようになります。ワクワクしながら相手の話を聞く姿勢こそが、初対面でも打ち解けるきっかけになるのだと思います。
【ヒント②】雑談は「話すこと」より「聞くこと」を大切に
雑談が始まると、「自分から何か話題を提供しなければ」と焦ってしまう新社会人も多いと思います。でも、雑談というのは、実は情報を交換する場というよりも、相手の“心の温度”を確かめるような時間。ですから、面白い話をしようと無理に頑張る必要はありません。特に新社会人のうちは、気の利いた話をしようと思わなくて大丈夫です。
それよりも大切なのは、相手の話を一生懸命聞く姿勢です。「あなたのことを大事に思っています」「あなたの話を聞きたいです」という気持ちを持って向き合うこと。それだけで、十分に相手に伝わるメッセージになります。最初のうちは、会話の8割くらいは相手に話してもらうつもりでいいと思います。自分は聞き手に徹するくらいの気持ちで、ちょうどいいのではないでしょうか。
【ヒント③】緊張したら「変顔」でリラックス
にこやかに雑談しようと思っているのに、顔が緊張でこわばってしまう……。新社会人の場合、こうしたことがよくありますよね。緊張していると、どうしても顔の筋肉が固まってしまいがちです。ですから、意識して一度大きく動かしてあげると、自然とリラックスしやすくなります。
私の場合、人と会う前には(ちょっと意外かもしれませんが)「変顔」をして顔の緊張をほぐしています。周りに人がいないところで、例えば、顔のパーツをぎゅっと真ん中に集めて、梅干しを食べたときのような「すっぱい顔」をしてみたりして、顔の筋肉を思いきり動かしてみるんです。そして次に、ぎゅっと寄せた顔をふっと緩める。これを何回か繰り返すと、表情の筋肉がほぐれて、顔がだんだん柔らかくなってくるんです。ほんの少し顔を動かすだけでも、気持ちまでふっと軽くなることがありますよ。
もちろん、人前でやると少し恥ずかしいので、マスクの中やお手洗いなど、人に見られない場所でこっそりやるのがおすすめです。でも仮に、待ち合わせの時に変顔をしているところを見られたとしても、「緊張で顔がこわばってしまって、ほぐすためにやっていました」と正直に伝えれば大丈夫。そこで雰囲気がやわらいで心の距離が近づき、以降の会話がスムーズになるかもしれません。
【ヒント④】沈黙の時間も、相手との大切な時間
新社会人の場合、会話が途切れる沈黙の時間を必要以上に怖がる傾向があります。私はそういう時でも、無理に何か話そうとするよりまずは「相手との時間を楽しもう」と思うことが大切だと思っています。会話の中で少し沈黙が生まれることは、決して悪いことではありません。焦って話題を探そうとするよりも、落ち着いてその場の空気を味わうくらいの気持ちでいると、自然と次の言葉が出てくることも多いものです。
【ヒント⑤】相づちには「共感」「感想」「質問」を添える
緊張してしまって思うように会話のキャッチボールができない時、まずはシンプルな相づちから始めましょう。「はい」「そうですね」といった基本的な言葉でも、しっかりうなずきながら聞くだけで、十分に相手に「あなたのお話を興味深く聞いています」という気持ちは伝わります。
その上で、少し余裕が出てきたら、「相手の気持ちに寄り添う言葉」を添えてみるといいと思います。例えば「おっしゃる通りですね」「確かにそうですね」といった共感の言葉です。そして、そのあとに自分の感想を少し加えます。「それは知りませんでした」「素晴らしいですね」といった一言でも構いません。最後に、「それでどうなったんですか?」「そのときはどう感じたんですか?」といった質問を添えると、会話が自然と続きやすくなります。つまり、「共感する→自分の感想を伝える→質問する」という流れです。この3つを意識するだけでも、会話はぐっと広がりやすくなると思います。
【ヒント⑥】オウム返しは「言葉」より「感情」を拾う
相手の言葉をそのまま繰り返す「オウム返し」は、「あなたの話を真剣に聞いています」という意思表示になります。ただ、どの言葉を拾えばいいか迷ったときは、相手の「感情が乗っている部分」を意識してみましょう。
たとえば「昨日、移動がすごく大変だったんですよ」と言われたら、「移動が大変だったんですね」と、感じていた大変さの部分を受け止めるように返します。そこに心配そうな表情やうなずきを添えると、「わかってもらえた」と相手は安心し、次の話を続けやすくなります。
逆に、感情が乗っていない言葉をそのまま繰り返すと不自然になることも。「エレベーター遅いですね」をそのまま返すより、そこに「困った」という感情があると気づけば「それは困りますよね」と返す方が自然な会話になります。大切なのは言葉そのものではなく、相手の気持ちを拾うこと。その意識ひとつで、オウム返しはぐっと使いやすくなります。
【ヒント⑦】目線は見つめすぎず、「やさしく」が基本
「相手の目を見るのが苦手」という方は、無理に目を見ようとしなくて大丈夫です。眉間や口元、男性であればネクタイの結び目あたりを見るだけでも、十分自然に映ります。大切なのは、相手をやわらかく見ること。じっと見つめすぎると相手が緊張してしまうこともあるので、視線を固定しすぎず、ふんわり向き合う感覚でいましょう。
ただし、相手が大切なことを話しているときは、意識してしっかり目を合わせるのがおすすめです。普段はやわらかい目線で聞きながら、ここぞという場面だけ目と目を合わせる——このバランスを意識するだけで、自然で心地よいコミュニケーションになります。
【ヒント⑧】褒めるときは、プロセスの「細かい部分」を「具体的」に
気持ちよく話してもらいたい時に有効なのが、相手を褒めること。その時に気を付けたいのは、「褒めポイント」です。最近は言葉の受け取り方も人それぞれなので、何が地雷になるかわからないと感じる場面もあります。そんなときにおすすめなのは、目に見える結果よりも、そこに至るまでのプロセスに目を向けることです。
たとえば「社長賞を取ったなんてすごいですね」と結果を褒めるだけでもいいのですが、それだけでは少し表面的な会話になってしまうこともあります。それよりも、「いつも資料の細かいところまで丁寧に見ていらっしゃいますよね」など、プロセスの細かい部分を具体的に褒めると、より気持ちが伝わりやすくなります。人は、結果だけでなく、自分が大切にしている姿勢や努力を見てもらえると嬉しいものです。小さなところでも「ちゃんと見ていますよ」という気持ちを伝えることが、自然な褒め言葉につながるのではないかと思います。
【ヒント⑨】質問から会話を広げるコツは「なぜ」「どうやって」を添える
「ラーメンとカツ丼、どちらが好きですか?」のように答えが限られるクローズドクエスチョンは、「ラーメンです」で会話が終わりがちです。会話を広げたいときは、相手が自由に答えられるオープンクエスチョンを意識しましょう。
最初の質問がYes/Noで答えられる内容でも、そのあとに「なぜですか?」「どんな感じでしたか?」と一言添えるだけで会話はぐっと広がります。特に「Why(なぜ)」「How(どのように)」を意識すると効果的です。たとえば「ラーメンが好きです」と返ってきたら、「どんなところが好きなんですか?」と続けてみる。さらに「どんな気持ちになりますか?」のように感情に寄り添う質問を加えると、相手は出来事だけでなく自分の体験や思いを自然と話してくれるようになります。小さなひと工夫で、雑談はぐっと豊かになります。
【ヒント⑩】まずは「安心できる話題」から。ビジネス雑談のタブー
ビジネス雑談で避けたい話題の筆頭は、政治と宗教です。考え方の違いから対立が生まれやすいため、触れないのが無難です。意外かもしれませんが、スポーツ(特にプロ野球など)も注意が必要です。応援チームが違うと思わぬ対立になることがありますし、そもそも興味のない方もいます。また、結婚や家族といったプライベートに踏み込む質問も、価値観が多様化している今は関係性ができるまで控えめにしておきましょう。
雑談の入り口としておすすめなのは、相手の持ち物や身につけているものに触れることです。「そのバッグ素敵ですね」といった一言から会話が広がることもあります。ただし、体型など身体的なことに触れる表現は、褒め言葉のつもりでも避けておくのが安心です。
【ヒント⑪】オンライン雑談は「リアクション1.5倍」がコツ
画面越しのコミュニケーションでは、対面で伝わるはずの空気感や体の気配がどうしても伝わりにくくなります。そこで意識したいのが、うなずきや表情などのリアクションを普段の1.5倍大きくすること。少し大げさかなと思うくらいでちょうどいいのです。
また、時々カメラのレンズを見るようにすると、「あなたをちゃんと見ています」という気持ちが相手に伝わります。そして、動きを止めないことも大切です。相手が話している間もうなずいたり体を少し動かしたりすることで、フリーズしていると思われるのを防ぎ、聞いていることが視覚的に伝わります。
「リアクションは1.5倍」「時々カメラを見る」「動きを止めない」——この3つを意識するだけで、画面越しでもぐっとコミュニケーションが伝わりやすくなります。
【ヒント⑫】私生活でも、年代が違う人と触れ合う機会を多く持つ
普段から、学生時代はあまり話す機会がなかった少し年上の方と会話してみる機会を多く持つのもおすすめです。たとえば休日に、年齢層が少し高めの人が集まるサークルに参加してみたりするのもいいですね。そういう場所であれば、仕事とは違って気軽にコミュニケーションの練習ができますし、もし合わないと感じても、距離を取ることがそれほど難しくありません。いろいろ試しながら、体当たりで経験を積める環境だと思います。もし抵抗がなければ、ふらっと飲み屋さんに行ってお店の人や常連の方と会話してみるのもいい経験になります。少し年上の方と、自然に敬語を使いながら話すことに慣れていくと、職場でも落ち着いてコミュニケーションが取れるようになります。
年上の人と話すことに慣れておくことは、社会人としての大きな力になります。無理のない範囲で、いろいろな世代の人と関わる機会をつくってみてください。きっと、その経験が仕事の場面でも役に立ってくるはずです。
プロフィール
井上 智惠(いのうえ さとえ)
大学卒業後、NHK徳島にてニュース番組、情報番組のキャスター他、ラジオニュース、中継など幅広く担当。2012年からはNHK水戸に移り、観覧者を巻き込んだ公開生放送番組のメインキャスターを5年間務める。その他「おはよう日本」ローカルパートのキャスターや渋谷の放送センターにて首都圏枠の「ひるまえほっと」にリポーター兼ディレクターとして出演。NHKに在籍した10年間でディレクター業務を含め複数の賞を受賞。現在はディレクションのできるアナウンサーとして活動を行う一方、株式会社トークナビの女子アナ広報室に所属し、企業のメディアプロモーションを行っている。









