生成AI活用の企業は2割未満 今後の活用推進に必要な取り組みは?TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)が生成AIの活用状況に関する調査結果を発表した。近年、ニュースやメディアで生成AIが取り上げられる機会が増え、動画投稿サイトやイベントなどでの活用方法の紹介も多い。活用用途の広がりとともに、企業でも生成AIを取り入れる動きが盛んになり、生産性向上やビジネスチャンス創出などに期待が寄せられている。そこでTDBは本調査にて、生成AIの企業での活用状況や使用用途などを明らかにした。
調査概要
調査期間:2024年6月14日〜7月5日
有効回答企業数:4705社
調査方法:インターネット調査
出典元:生成AIの活用状況調査(帝国データバンク)
活用する企業は2割未満も効果実感は約9割
TDBによれば、所属企業において業務で生成AIを「活用している」と回答した人は、17.3%にとどまったという。「活用していないが検討中」は26.8%で「活用しておらず予定もない」が48.4%と半数近くに。
従業員規模別の分析では「1000人以上(36.9%)」だけが3割を超え「100人以上1000人未満(18.2%)」「50 人以上100人未満(13.9%)」「10 人以上50人未満(14.3%)」「10人未満(17.8%)」はそれぞれ1割台にとどまっている。
業種別で最も活用が進んでいるのは「サービス・その他(28.0%)」で、活用しているサービスとしては「ChatGPT(84.2%)」が突出して高いことも判明した。
また、活用する企業では「大いに効果あり(36.1%)」「やや効果あり(50.6%)」と、9割近くが一定の効果を実感しているという。特に、規模が小さい企業の方が効果を実感する割合が高い傾向にあることも報告されている。
情報収集がメイン 半数超が内製化
続いてTDBは、活用の用途として「情報収集(59.9%)」が最多となったことを報告。次いで「文章の要約・校正(53.9%)」「企画立案時のアイデア出し(53.8%)」が続く。TDBは本結果について「ビジネスパーソンが日常的に行う業務であり、プロンプトが比較的容易なため、取り組みやすいことが要因であると考えられる」との考察を示した。
なお、活用するうえでの推進体制については「すべて内製(57.6%)」が最も多く「ほぼ内製で一部を外注している(15.3%)」「ほぼ外注している(6.9%)」とを合わせて約2割が外注していることが判明。TDBによれば、従業員数が増加するにつれて内製の割合が低下する傾向にあるという。
理解へのギャップと指針策定の重要性 生成AI活用推進の障壁は?
TDBは生成AIを活用している企業において、活用への理解に「経営者」と「一般社員」とで大きなギャップが生じていることに注目。「経営層の理解」への認識は「大いに理解あり」が「経営者」は67.7%と7割に迫る一方で「一般社員」では30.4%と半数以下になっている。また「現場の理解」についても「大いに理解あり」は「経営者」が29.7%で「一般社員」が19.6%であったという。
指針やガイドラインの策定状況に関しては「策定している(19.5%)」「現在、策定中(9.5%)」「策定を検討している(23.5%)」と、半数以上が策定に前向きな回答となっている。なお「策定している」企業では、従業員一人当たりの売上高が高い傾向にあることも明らかになった。
リスク・トラブルの対応方法としては「特に部門は決めていない(45.1%)」が最も多いという。活用指針やリスク対策の情報開示状況については「開示していない(66.6%)」が最多。TDBはこうした状況について、急速なAIの広がりで、ガバナンス整備が追いついていないと見ている。
また、活用するうえでの懸念や課題としては「AI運用の人材・ノウハウ不足(54.1%)」「情報の正確性(41.1%)」「生成AIを活用すべき業務が不明確(39.1%)」が上位に挙げられたという。
まとめ
本調査では生成AIを活用する企業はまだそう多くなく、活用によるメリットの理解について経営層と一般社員とでギャップが生じていることが明らかになった。TDBは「このギャップを解消するためには、経営者がビジョンを描き、その目的を達成するために生成AIの活用が有効であることを組織内で共通認識として広める仕掛けも必要となるだろう」と提言している。
活用への課題として人材・ノウハウの不足や正確性への懸念なども示されており、そもそも活用すべき業務がわからないという企業も少なくない。今後さらに活用範囲が広がると考えられる生成AIだが、実際に活用するには社内体制の整備と業務の整理が必須とも言えそうだ。