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中小企業の半数以上が最低賃金を引き上げる方針も、価格転嫁は進まず ネットオン調査

2024.09.18

株式会社ネットオン(本社:大阪市北区、代表取締役CEO:木嶋諭)は、同社が提供する採用業務マーケティングツール「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の人事・採用担当者を対象に、最低賃金の引き上げに関するアンケート調査を実施。2024年度の最低賃金の改定で全国平均50円の引き上げが決定したことを受けて、中小企業の対応を探った。

調査概要

調査期間:2024年8月20日~9月3日
調査方法:インターネット調査
調査対象:「採用係長」利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数:173
出典元:中小企業の最低賃金引き上げに関する調査を実施しました(株式会社ネットオン)
※小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合がある

「賃金を引き上げる」事業所は53.2%。その理由は?

「賃金を引き上げる」事業所は53.2%。その理由は?

本調査ではまずはじめに、最低賃金の改定による賃上げ予定について質問。「引き上げる予定はない(46.8%)」が最多となったものの、「最低賃金を下回るため、賃金を引き上げる予定(23.1%)」「最低賃金を下回っていないが、賃金を引き上げる予定(30.1%)」と、回答企業の過半数で賃上げを予定していることがわかった。

同社が2023年8月に実施した調査の結果と比較すると、引き上げ予定の事業所(「最低賃金を下回っているため、引き上げる」+「下回っていないが、引き上げる」)の割合は10.1ポイント低下したが、「下回っていないが、引き上げる」事業所の割合は7.7ポイント増加したという。

引き上げの理由としては「最低賃金の引き上げに対応するため(71.7%)」が最多となり、2位以下には「人材採用を有利に進めるため」「従業員の定着率向上(引き留め)のため」が続いている。「業績が回復した(伸びた)ため」は、7.6%にとどまったことから、企業側として厳しい状況下での賃上げとなっている実態がうかがえる。

続いて、引き上げ予定の事業所へ、引き上げ後の最低賃金額を負担に感じるかどうかについて質問。「非常に負担に感じている(57.6%)」と「多少負担に感じている(31.5%)」を合わせると、89.1%が負担に感じているとの結果になっている。

人件費の上昇分を「販売価格に転嫁する」のは4割未満 十分な価格転嫁は進まず

人件費の上昇分を「販売価格に転嫁する」のは4割未満 十分な価格転嫁は進まず

さらに本調査では、賃金を引き上げ予定の事業所に、人件費の上昇分を販売価格に転嫁するかどうかについて質問。63.0%の事業所が「価格転嫁を行わない」と回答したことを報告。

また、「価格転嫁を行う」もしくは「行った」と回答した事業所に、販売価格に転嫁した割合について質問した結果「1~3割(73.4%)」との回答が最多に。「上昇分すべて(10割)」を転嫁できた事業所は4.7%にとどまっており、人件費の上昇を価格転嫁で補うことが容易でないことを示す結果となった。

なお、昨今の株価の影響については「影響がある」と回答したのは32.9%で、現状では「影響がない」事業所が多数を占めている実態も明らかになっている。

まとめ

半数以上が最低賃金の引き上げを予定している一方で、業績の回復や十分な価格転嫁は進んでおらず、中小企業にとって厳しい状況が続いていることが明らかになった。2024年度の最低賃金改正は過去最大の引き上げ幅ではあったものの、多くの中小企業にとっては人件費の上昇が負担となっているのが実情のようだ。

東京商工リサーチが2024年8月に実施した「最低賃金引き上げに関するアンケート(※1)」では、引き上げへの対策として、企業規模を問わず「価格転嫁」を挙げる企業が約半数となったことが報告されている。また、毎年3月と9月は中小企業庁が定める「価格交渉促進月間」でもあり、このタイミングで改めて自社の状況を見直してみてはいかがだろうか。

※1:最低賃金改定で「給与を見直す」企業 4割 約2割は現在、 10月以降の最低賃金を下回る時給(株式会社東京商工リサーチ)
参考:全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました(厚生労働省)
参考:価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果