人や組織への投資が“戦略経理”実現につながる可能性 パーソルワークスイッチコンサルティング調査
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社は、経理部門の組織志向性に関する調査結果を公表した。同社では、経営陣から各バックオフィス部署に対して、役割の転換、“事業戦略へ寄与するバックオフィス”化(=戦略経理、戦略人事など)を求められることが増えていると、調査の背景を説明。経理部においても同様の要請を受ける一方、業務の属人化や保守的な人材が生み出され、それらが役割の転換の障害となっていることを踏まえて、経理部における業務内容・業務環境・業務課題と紐づく形で各個人の志向性を調査することで、戦略経理の要因を明らかにすることを目指したという。
調査概要
経理部門における組織志向性に関する調査
調査期間 :2024年3月1日~3月3日
調査方法 :調査会社モニターを用いたインターネット調査
サンプル数 :2000名
調査対象:男女20代~60代の経理・財務部門に所属している方で会社勤務の正社員/役員/派遣社員/契約社員、公務員など
対象地域 :全国
出典元:経理部門における組織志向性に関する調査(パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社)
業務に関する経理・財務部の特徴は? 見えてきた離職行動の要因
本調査で、年齢や勤続年数ごとの担当領域の違いを分析したところ、年を経ても同じ担当者が同じ業務を続けることが多いという、経理・財務部の特徴がみられたという。また、業務間で強い相関は見られず、業務シェアすることなく一人ひとり担当が明確なことが多いという特徴も明らかになっている。
そうした中で「勤続年数毎の仕事量適切度合いの認知」では、業務量が適切かどうかについて3年以上5年未満を谷にV字を描いていることから(左図)、入社から段階的に業務負荷が与えられ、3年目以降は業務をコントロールできるようになることがうかがえる。
一方で、業務へのポジティブな感情は1年を過ぎて急激に落ち込み、それ以降はほぼ横ばいであり、1年目で下がった感情面は再度ポジティブな方向へ浮上しない傾向にあることも判明(右図)。同社では、ようやく一人前になったタイミングで辞めてしまう人がいることについて、これらの結果からプレッシャー期でありつつ諦観期(不協和期間)に入ったことによるギャップから離職行動を取る可能性が考えられるとの推察を示した。
また、入社から時間が経つにつれて、問題に対して意見しても無駄と感じたり、挑戦に対して評価されないと感じるなど、組織に対しての無気力感を覚える様子がうかがえるとも報告されている。管理職においても、人材や組織体制を十分に組むことができていないと感じている人が4割を超えており、組織体制の不十分さも一因となっていると考えられる。
“戦略経理”的素養があるのは進化志向性が高く保守性が低い層?
本調査の組織志向性に関する設問を主成分分析にかけた結果、経理・財務部における組織志向性は3種類のカテゴリに分かれることが明らかになったという。さらに進化志向性と保守性を軸に4象限に整理し、それぞれの象限をどのような層かを命名している。
その中で“戦略経理”的素養のあるのは、既存の業務や組織に囚われることなく新たな役割を追い求める傾向が強い「進化志向性が高く保守性が低い層」だと分析したという。しかしこの層は全体のわずか4.8%であったことも報告されている。
“戦略経理”的素養のある層については、他の層と比較して「人や組織体制が比較的十分である」と感じていることも明らかに。業務の時間的制約や上層部の経理理解、システムへの評価については、大きな違いはみられなかったようだ。
まとめ
役割が多様化し、特に事業戦略への寄与を求められることも増えているバックオフィス部門。同社では「今回の結果からは、人や組織への充実度を高めることで戦略経理を生み出せると言い切ることは難しい。しかし、戦略経理か否かによってその充実度に違いが見られたことから、取り組む重要性は高いと考える」と考察している。
法規制への理解や業務の専門性から属人化と保守的な風土が根強い経理部門において、新たな役割への転換には多くの障壁があるだろう。システムやインフラへの投資だけでなく、人材や組織への投資にも注力していく必要がありそうだ。