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淘汰が続く情報通信関連企業、倒産件数が11年ぶりに400件超 TSR調査

2025.01.31

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、日本産業分類の「情報通信業」の倒産(負債1000万円以上)を集計、分析。2024年の「情報通信業」の倒産は425件(前年比21.7%増)で、2013年の450件以来、11年ぶりに400件を超え、小・零細規模のソフトウェア開発企業を中心に、情報通信関連企業の淘汰が続いていると報告した。財務分析では、東京商工リサーチが保有する財務データベースから、2023年4月期-2024年3月期を最新期とし、5期連続で売上高・営業利益が判明した企業(変則決算を除く)を抽出、分析。中小企業は「中小企業基本法」に基づいて分類し、中小企業以外で従業員数2000人超を大企業、従業員数2000人以下を中堅企業と分類している。

情報通信業の倒産が過去10年で最多の425件に

情報通信業の倒産が過去10年で最多の425件に

TSRの報告によれば、2024年の情報通信業の倒産は425件(前年比21.7%増)で、2013年(450件)以来、11年ぶりに年間400件を超えたという。

業種別の分析結果を見るとエンジニア不足が深刻な「ソフトウェア業:223件(前年比12.0%増)」が最多だと報告されている。TSRは「複雑化・老朽化したシステム刷新が遅れ、経済的損失が生じるとされる「2025年の崖」も現実味を帯びる」とコメントしている。次いで「映像情報制作・配給業:55件(同41.0%増)」「情報処理・提供サービス業:38件(同26.6%増)」が続き、この3業種は2015年以降の10年で最多件数を更新したことも報告された。

倒産形態については「破産:401件(同21.1%増)」が最も多く、全体の9割超を占めている。また、原因別では「販売不振:293件(同26.2%増)」「既往のシワ寄せ(赤字累積):43件(同30.3%増)」「事業上の失敗:41件(同2.5%増)」といった割合であった。

資本金別では、個人企業などを含む「1千万円未満:258件(同30.9%増)」が前年から1.3倍に増加し最多に。小・零細規模の企業が件数を押し上げている様子がうかがえる。

出典元:「情報通信業」の倒産 11年ぶり400件超 競合過多と収益悪化で中小・零細の淘汰が鮮明(株式会社東京商工リサーチ)

売上高は伸長 営業利益率には規模格差

売上高は伸長 営業利益率には規模格差

TSRは2023年度(2023年4月期-2024年3月期)を最新期とし、5期連続で財務データを比較可能な情報通信業の1932社を抽出。売上高は26兆1771億8900万円(前期比3.3%増)で、毎期伸びていることを報告した。

2023年度の規模別の売上高は「大企業:41社」が70.8%(18兆5437億5400万円)と、圧倒的な市場シェアを占めている。次いで「中堅企業:409社」が21.6% (5兆6705億1000万円)で「中小企業:1482社」が7.4%(1兆9629億2400万円)と報告された。

続いてTSRは、最新期の営業利益率についても分析。平均10.9%で、前期(10.5%)から0.4ポイント上昇しているが、5期推移では2019年度から2021年度まで11%台を維持していたという。2022年度に10.5%に低下し、2年連続での10%台であったことがわかっている。規模別では「大企業:11.4%」「中堅企業:11.1%」に対し「中小企業:5.7%」は半分にとどまり、二極化している様子がうかがえる。

中小企業の赤字企業率が突出 最新期に唯一上昇

中小企業の赤字企業率が突出 最新期に唯一上昇

TSRは次に最新期の赤字企業率について報告。全体が19.7%(381社/1932社)で、規模別では「中小企業:22.0%(前年度21.3%)」が突出したという。「中堅企業:12.7%(同13.4%)」「大企業:4.8%(同4.8%)」と、最新期に赤字企業率が上昇したのは中小企業のみであった。

TSRによれば、中小企業の赤字企業率は4年連続で20%以上で推移しているという。コロナ禍の2020年度に22.4%(2019年度18.1%)と大きく上昇した後、在宅勤務の普及に伴うシステム導入や開発の特需があり、2021年度は20.3%に下降。しかし、2022年度からは物価高や深刻な人手不足と人件費の高騰などで収益が悪化し、2年連続で赤字企業率が上昇している状況だ。

まとめ

売上高は上昇を持続している情報通信業だが、昨今の物価高や人件費などのコストアップの影響から、利益率が低調となっているようだ。また、原因別に見ると「販売不振」が約7割を占めており、二極化が進んでいる様子もうかがえる。

中小企業では営業利益率が大企業や中堅企業の半分にとどまっており、赤字企業率をみても特に厳しい状況であることがわかる。こうした状況の中、人材獲得やコスト削減といった取り組みは今後ますます重要となることだろう。

TSRは今後の動向について「情報関連の将来需要は拡大が期待されるが、技術の進歩が速い業界で将来を見据えた戦略を立てられない中小・零細企業の淘汰が、今後さらに進むことが危惧される」とコメントした。