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これからの「採用」は どう変わるのか?~ 二極化する採用戦線!コロナ禍での転職市場の今~

 急激な少子高齢化、労働人口の減少、サービス経済化、デジタル社会への転換、AIの進化など、社会構造は大きく変化しています。働く個人の生き方や働き方に対する意識も大きな変化を遂げつつあり、そこに向き合う企業も採用戦略の新たな在り方が問われ始めています。

 そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、転職市場も急激に変化しています。前回に引き続き、転職市場の現状と今後の見通しについて解説したいと思います。

事業領域ごとに「攻め」と「守り」の採用が混在している

 前回もお伝えしましたが、コロナ禍において企業の採用戦略は多角化しています。

 例えば、小売業において店長の募集は止めるものの、ECサイトのカスタマーサポートやデジタルマーケティング担当の採用は積極化するなど、同じ企業内であっても既存事業を中心とした守りの人事戦略と、市場創造を見越した攻めの採用戦略が並存するケースが増えています。

 採用戦略においては、TMP(ターゲティング・メッセージング・プロセッシング)が重要とされています。T(Targeting)は、採用ターゲットをどこに置くか、M(Messaging)はそのターゲットに対して何をメッセージとして伝えるか、そしてP(Processing)は企業と個人が出会う方法としてどんな手段を選ぶのか。

 今回は「自動車」業界と「総合電機・半導体・電子部品」業界の転職市場動向についてご説明しますが、このTMPを頭に置きつつ、読み進めていただければと思います。

「自動車」業界では「MaaS」や「CASE」を牽引する人材採用は堅持

 前回は、「IT通信」「コンサルティング」「インターネット」の3業界を取り上げ、「企業や事業領域ごとに濃淡はあるものの、全体的には採用ニーズは活発」とご説明しました。今回取り上げる「自動車」「総合電機・半導体・電子部品」も同様で、事業領域によってはコロナ前よりも採用を積極化しています。

 まずは「自動車」。自動車業界は、コロナ前から100年に一度の大転換期にあります。「MaaS」(Mobility as a Service)や「CASE」(Connected, Autonomous, Shared, Electric)の推進に関わるポジションは引き続き旺盛であり、現在はこの分野に絞り込んで採用活動を行うケースが増えています。

 ただ、採用ターゲットとなるようなデジタル人材は他の業界でもニーズが高く、競争率が高いため、確保できるか危機感を持つ企業は少なくありません。

 リクルートワークス研究所では『戦略的採用論』において、戦略目標との紐づき方によって採用を2×2の軸で4つに分類しています。第一の軸は、「新たな競争優位の源泉」を採用した人材が個人で生み出すのか、集団の一員として生み出すのかという「Talent」と「Organization」の軸。第二の軸は、競争優位を築くまでに見込まれる期間が短期なのか、長期なのかという「Short-term」と「Long-term」の軸。この4つに分類して採用戦略を考えることの重要性を説いています。

 コロナ禍で、どの企業もOS(=Organization×Short-term)とOL(=Organization×Long-term)採用は減らす傾向にありますが、TS(=Talent×Short-term)採用には注力しています。自動車業界で言えば、「Maasや「CASE」を牽引するデザインやUIUX系の経験を持つ人材です。今、このTS人材の採用競争が激化しているのです。

その中、大きな課題となっているのが、採用手法の進化。従来、自動車業界は人気が高く、比較的応募者も集めやすかったのですが、TS人材獲得のために各社とも新しいイベントやオンラインでのコミュニケーションを増やすなど工夫を始めています。中でも、Web面接への対応は急速に進んでおり、工場や拠点が地方にあったり、移動が長距離になったりするため対面の面接が難しかった人も、スムーズに面接を受けられるようになっています。

「総合電機・半導体・電子部品」業界ではハードからソフトへの移行が顕著

 「総合電機・半導体・電子部品」業界は、電機系では、5G、コネクティッド領域、IoTなどサービスとしての通信関連のニーズが加速しているほか、PC・周辺機器などはテレワーク需要で好調。Webカメラなどの周辺機器、通信系の半導体、PC関連の半導体も好調であり、これらの事業領域における採用ニーズは引き続き旺盛です。

 また、大きな流れとしてコロナ前からDX推進がキーワードになっており、ハードからソフトへ移行していく動きに変化はありません。足元の業績の影響で一時的に採用が止まったとしても、先行開発系のポジションやDX人材など、TS人材への投資は変わらず続くと見られます。

 一方で、コロナ禍でも対面での面接を実施している企業が散見されます。求職者、特にDX人材においては、Web面接に対応していない企業、そしてテレワークにも対応していない企業に対して「変化に対応できない企業なのでは?」と、応募意欲が下がる傾向が見られます。DX事業戦略を推進するならば、ターゲットに沿ったP=プロセッシングを整えることが重要です。

 ただ、今やどの業界においてもDX人材に採用ターゲットを絞り、異業界からの採用を積極化しています。コロナ禍において採用競争はさらに激化しており、P=プロセッシングで差別化しないと競争に勝てない状況。希少なTS人材であればあるほど、DX環境で企業の優劣を判断する傾向があるため、早急な対応が求められています。

 なお、トップエンジニアになればなるほど、「何のためにこの事業を展開しているか」という社会的意義を重視する傾向にあります。なぜ、MaaSを推進するのか、なぜ5G領域を強化するのか…TMPのうちのM=メッセージングがこれまで以上に重要になっています。

 メッセージングを強化するには、「4P」の視点が大切です。4つのPとは、Purpose(目標の魅力)、Profession(活動の魅力)、People(人員の魅力)、Privilege(特権の魅力)のこと。この4つの魅力要因を明確に訴求することが、優秀な人材を惹きつけるカギとなります。

 Web面接への対応やオンラインイベントの実施などP=プロセッシングを進化させつつ、4つのPの視点でメッセージングをよりシャープに磨き上げる。これが、TS人材採用の近道と言えるでしょう。

参考資料:
・株式会社リクルートキャリア【転職決定者データから見る】2020年中途採用市場(2020年1月)
https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2020/200123-01/


・株式会社リクルートキャリア 【転職市場は日進月報】新型コロナウイルス禍の転職市場動向レポート 全14業界を解説(2020年6月)
https://www.recruitcareer.co.jp/news/information/2020/200608-01/