伝わる話し方って何? 「笑顔」と「声」のトレーニングが重要!【中間管理職のビジネスマナー10の基本 Vol.2】
こんにちは。株式会社トークナビ代表取締役・アナウンサーの樋田かおり(といだ・かおり)です。今回のテーマは「伝わる話し方って何? 「笑顔」と「声」のトレーニングが重要!」です。「伝わる話し方」とは何でしょうか。ビジネスの現場では訪問先などの「アウェイ」の時はもちろん、慣れた社内でも上司や部下から「話を聴きたい」「協力したい」と思ってもらうために必要なことがあります。それが「笑顔」と「声」なのです。早速解説していきましょう。
慣れた環境では「表情」や「声」づくりを忘れがち?
先日、企業のマネージャークラスの男性とオンラインミーティングをしたときのこと。いつもと違って、男性の声のテンションが低く、言葉も表情も淡々としておられ、何か気を悪くされたのかと心配になりました。
おそらく男性はこの時は自宅で仕事をされていたため、いつもよりテンションが低めだったのだと思います。
私たちは、初めての人とのアポイントや訪問先などの「アウェイ」な環境では自然と表情や声に気を使います。逆に、会社の慣れた自席や自宅などの「ホーム」環境では、つい忘れてしまいがちです。また、長いマスク生活で、表情や声の感覚が鈍ってしまったという方もいるかもしれません。
そこで、今日は「アウェイ」の時はもちろん、慣れた社内でも上司や部下から「話を聴きたい」「協力したい」と思ってもらえるような「笑顔」と「声」の練習を一緒にやってみましょう。
笑顔を作るコツは「イ」の口になる言葉
人に安心感や信頼感を与える「笑顔」は、職種や性別に関係なく、ビジネスパーソンなら誰でも身に付けていただきたいマナーの1つです。あなたは職場で人と話すとき、笑顔で挨拶したり、話し始めたりしていますか?
実は自分では笑顔にしているつもりでも、慣れた環境では目が笑っていなかったり、口元が下がっていたりすることがあります。
まずは口角を上げた状態を鏡でチェックします。鏡がない場合は、スマホのインカメラを使ってみてください。
口角とは、上唇と下唇がつながる、口の両端の部分を指します。「口角を上げる」とは、口角をほおの方に向かってキュッと引き上げることです。
次に、「ハッピー」と口に出してみます。語尾の「イ」で、口角をしっかり引き上げてください。
続いて、「ラッキー」と口に出してみます。口角がしっかり上がっていますか?
最後に、「うれしい」と口に出してみます。口角がキュッと上がっていますか?
今度は続けて、「ハッピー」「ラッキー」「うれしい」と口に出してみます。これを何回か繰り返してみましょう。
特にハッピーやラッキーなことがなくても、口に出してみてください。ポジティブな言葉を発することで、気持ちが前向きになる効果もあります。
練習で発する言葉は、「イ」の口の形で終わる言葉であれば、好きなお酒の名前や“推し”の名前など、他の言葉でもOKです。ポイントはポジティブな「イ」の言葉を口にすることです。
このように、「イ」の口の形をすることで、顔回りの表情筋が鍛えられ、口角が上がり、笑顔をつくりやすくなります。筋トレをするように、普段からぜひ顔トレもしてみてください。テレワークの間にやってみるのも、おすすめです。
滑舌のお悩みには母音トレーニング
よく知られている「メラビアンの法則」ではコミュニケーションにおいて相手に与える影響は、表情やしぐさなどの視覚情報が55%、声や話し方などの聴覚情報が38%、話している内容(言語情報)は7%の割合と言われています。
次は、聴覚情報である声の練習をしましょう。
中間管理職世代の方からよく聞くのが、滑舌のお悩みです。「滑舌が悪くて、電話でよく聞き返される」「相手に伝わっているのか、心配になる」という方には、母音の発声練習をお勧めします。
鏡を見て、口の形を意識しながら母音を発声します。
「あ」
縦に指が3本入るくらい、口を大きく開けます。
「い」
横に口を開き、口角をぐっと引き上げます。笑顔の練習でやった通りですね。
「う」
口をすぼめるようにします。唇を突き出しすぎないようにしてください。
「え」
あごを少し引いて、唇を左右に開きます。「あ」と「い」の中間のイメージです。
「お」
口を縦にすぼめます。小指が1本入る程度に口を開きます。
いかがでしょうか。普段は口を十分に開いていないな、と感じた方もいるかもしれません。口の形を意識しながら、「あ」「い」「う」「え」「お」と何度も声に出してみましょう。
スムーズにできるようになったら、次は「あ」「い」「う」「え」「お」の順番を変えてみます。
あいうえお
いうえおあ
うえおあい
えおあいう
おあいうえ
さらに鍛えたい方は、役者や声優、アナウンサーの発声練習に使われる「あめんぼのうた」を検索して、挑戦してみてください。
このように、母音をはっきり発音できるようになれば、すべての声が明瞭に伝わるようになります。
伝わる話し方~話し始めは高く、最後は低く
伝わる「声」を手に入れたあなたは、次は「伝わる話し方」を身に付けましょう。
マスクをしている時は、相手に伝わるよう、声の大きさに気を付けていた方が多かったと思います。しかし、脱マスク生活で気を配っていただきたいのは、声の大きさより抑揚です。
日本語には「高低アクセント」というルールがあり、「高い音から始まって低い音で終わる形が、自然で美しい」と言われています。
例えば、「おはようございます」は、ドレミファソの音階で言うと「ソ」の音から始まって「ド」の音で終わると、抑揚ができて聞きやすくなります。
音階がわからなくても、大丈夫です。コツは出だしの声を高く、最後は低くすること。では、高低差を意識して、次のセリフを言ってみてください。
「お疲れ様です。これから会議を始めます」
「お疲れ様です」の「お」や「これから」の「こ」は高い音で、文尾は低い音で発声できましたか?高低差を付けるのが難しいと感じる方は、歌手が音程を取りながら歌うときのように、手を上から下へ振りおろしながら話してみましょう。
逆に、このセリフを高低差をつけずに一定の音で話してみると、どうでしょうか。だらだらとした印象や暗い印象に聴こえますよね。
また、始めの高い音を意識しすぎて、最後まで同じ音にならないよう気を付けてください。最後まで同じ高さの音で話すと、「キツい」という印象を与えてしまいます。
「表情」と「声」の身だしなみも整えて
表情や声、話し方を変えると、驚くほど相手に与える印象が変わります。顧客や上司の信頼を得て仕事を進めたり、チームをまとめたりするのに、笑顔や伝わる声、伝わる話し方は欠かせません。もちろん、「笑顔」や「声」のスキルは日常生活でも役立ちますよ。
「身だしなみを整える」というと服装や髪形をイメージしがちですが、表情や声、そして、姿勢や動作なども、身だしなみの一つです。
そこで、次回は、3)いまさら聞けない!立ち居振る舞いのマナー
のテーマでお届けします。
本コラムでは、社会人経験10数年以上、役職もつき、部下もいる。そんな中間管理職のあなただからこそ知っておきたい「ビジネスマナーの基本」を、アナウンサー社長の樋田かおりがお教えします。気軽にやってみようと思っていただけるようなお役立ち情報をお伝えしていきますので、ぜひご愛読ください。