いまさら聞けない!立ち居振る舞いのマナー【中間管理職のビジネスマナー10の基本 Vol.3】
こんにちは。株式会社トークナビ代表取締役・アナウンサーの樋田かおり(といだ・かおり)です。中間管理職のあなただからこそ知っておきたい「基本」をお伝えする本連載。今回のテーマは「いまさら聞けない!立ち居振る舞いのマナー」です。
好印象だった人、違和感があった人
最近、仕事でお会いして好印象だった中堅ビジネスパーソンの男性がいます。どこが好印象だったのか思い出してみると、まず立ち姿がきれいで、お辞儀の感じがとても良かったのです。また、年下である私に対しても敬意を持って接してくださいました。
一方、違和感を覚えた光景もあります。著名な経営者の講演会に行ったときのことです。講演会後に経営者と名刺交換をする列にいた男性が、自分の番になると、何度も何度も角度の深いお辞儀をされていたのです。その姿はまるで謝罪されているかのようで、お近づきになる挨拶の場としては大げさすぎると感じました。
このように、お辞儀1つとっても、人が受ける印象は変わります。また、ビジネスシーンには場面に応じた所作や振る舞いのマナーがあります。
そこで、今回は、取引先の来訪時や会議などで欠かせない、立ち居振る舞いのマナーをご紹介します。
美しいお辞儀の流れをおさらい
中間管理職世代の方はいつもしっかりとお辞儀をされている印象です。ただ、自己流になっている方も多いように感じます。読みながら、ぜひ一度、美しいお辞儀の流れをおさらいしてみてください。
<立ち方>
1. 背筋をまっすぐ伸ばします
2. お腹を引っ込めます
3. あごを引きます
4. 手の位置を整えます(男性は体の横、または前で重ねる。女性は体の前で重ねる)
5. かかとを揃えます
美しい立ち姿ができたら、ここからお辞儀の動作に入ります。
<動作>
1. 相手に視線を合わせます
2. 背筋をまっすぐ伸ばします
3. 腰から上体を倒し、一旦、動きを止めます(お辞儀の角度は次項目の図を参照)
4. ゆっくり上体を起こします
5. もう一度、相手に視線を合わせます
5を忘れがちですが、お辞儀の後にもう一度相手と視線を合わせることで、さらに印象付けをすることができるようになりますよ。
顔は、挨拶の言葉やその場の状況に合わせた表情を心掛けます。
3パターンのお辞儀 角度と視線
お辞儀の種類には上体の傾きの浅い順に、会釈、 敬礼、 最敬礼があります。角度を決めるのは視線の位置です。会釈は3m先、敬礼は2m先、最敬礼は1m先を見るようにすると、ふさわしい角度が作れます。
ビジネスシーンでは、場面に応じてこれらのお辞儀を使い分けます。例えば、会議室に呼ばれて「失礼いたします」と入るときは会釈が適しています。会議の進行役として出席者の前で「宜しくお願いいたします」と挨拶をするときは、敬礼がふさわしいでしょう。お詫びをするときは、相手が社外の方であっても社内の方であっても、最敬礼です。
挨拶はお辞儀の前にする?同時にする?
ところで、「失礼いたします」などの言葉は、お辞儀の動作のどこで発するのが良いのでしょうか?
お辞儀には同時礼と分離礼があります。同時礼は言葉を発しながらお辞儀をするもの、分離礼は言葉を発したあとにお辞儀をするものです。
日常の挨拶では「おはようございます」と言いながら頭を下げるなど同時礼のことが多いと思います。ただ、マナーとしては分離礼の方がより丁寧であるとされており、お客様を迎えるときや謝罪のときには分離礼にすることを覚えておきましょう。
スマートな椅子の座り方
会議室で椅子に座るときは、椅子を静かに引き、音を立てないように座るのがマナーです。
座り方は、椅子の前の方の3分の1のスペースに腰掛けるイメージで、浅く座ります。背もたれには寄りかからないようにします。背中を付けて座ることは一見姿勢が良いように思えますが、威張った印象になってしまうからです。
中間管理職世代の方であれば、自分ではなく、部下がメインの話し手となる会議もあると思います。この場合も、同じように浅く腰掛けます。
もし、相手が1人で、自分たちが2人であれば、相手に対して体を正対にして座ります。正対とは相手に対して真正面に向き合うことです。腰から上だけをひねるのではなく、おへそとつま先を相手に向けるイメージで、体ごと相手に向けます。このとき、ヨイショと椅子ごと動かすと音を立ててしまいますので、そっと体だけを動かすのがポイントです。
PC時代のメモの取り方
最近は会議でパソコンを使うことは一般的になってきましたので、パソコンでメモをとること自体はマナー違反にはあたらないと思います。
ただし、相手がパソコンを使用していない場合やスマホでメモをとる場合には、「メモをとっても宜しいですか」と一言断わりを入れてからにしましょう。会議でのパソコンやスマホ利用状況は会社によって異なるため、自社の“当たり前”が他社にとっては“マナー違反”になることもあります。
また、会議の内容を録音する場合は、必ず全員の了承を取りましょう。「メモ代わりに」と断りなくスマホで録音するのはマナー違反です。
会議中にパソコンでメモをとる場合も、手元に集中せず、話している相手と視線を合わせることを忘れないでくださいね。
モノの渡し方、指し示し方のマナー
最後に、ちょっとした所作のマナーをお教えします。例えば、相手に資料や物を渡すとき、落としてしまったペンを拾うとき、「トイレはどこですか」と聞かれたときなど、普段、自分はどうしているかなと振り返ってみてください。
<物の渡し方>
・原則として両手で渡します(ペンなどの小さい物は片手で持ち、もう一方の手を添えます)
・相手が取りやすい位置に差し出します
・相手が見えやすいよう、使いやすいように向きを変えます
・「~でございます」等の一言を添えます
<物の拾い方>
・背筋をまっすぐ伸ばし、ひざを曲げてサッと腰を落とします(上体だけ曲げて拾わないようにします)
・拾う物に対して斜め後ろから拾います
<指し示し方>
・指は閉じて指先を揃え、手のひらを相手に向けます
・右の物(や方向)は右手で、左の物(や方向)は左手で指し示します
・ひじの角度で遠近を示します(近い場合は角度を小さく、遠い場合は角度を大きく)
・「あちら(こちら)でございます」等の一言を添えます
忘れがちなのが、書類のある箇所を指し示す場合です。方向と同じように指先を揃え、手のひらを上にします。そのまま、指し示したい箇所に中指を置きます。指1本で「こちらです」と指し示すのはNGですよ。
次回は「敬語の使い方、間違っていない? 」
本コラムでは、社会人経験10数年以上、役職もつき、部下もいる。そんな中間管理職のあなただからこそ再確認しておきたい「ビジネスマナーの基本」を、アナウンサー社長の樋田かおりがお教えします。
これまで、1)第一印象が9割!中堅ビジネスパーソンの身だしなみとは、2)伝わる話し方って何?「笑顔」と「声」のトレーニングが重要! に続き、今回は3)立ち居振る舞いのマナーを取り上げました。身だしなみや立ち居振る舞い、声を整えたら、次は言葉づかいのマナーを振り返りましょう。
次回は、4)敬語の使い方、間違っていない?部下にも伝えたい基本をおさらい のテーマでお届けします。堅苦しくなりすぎず、すぐ実践できることをお伝えしていきますので、ぜひご愛読ください。