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運動会や社員旅行は定期的に流行する? 社内コミュニケーションチャネルの実態【リモートワーク共存時代~これからの社内コミュニケーションの在り方とは? Vol.1】

「リモート」「出社」どちらも選べるハイブリッドな働き方ができる企業が増え、ビジネスチャットなど文字を使ったツールでのやり取りがメインになるなど、直接のコミュニケーションは減少傾向にあるのではないでしょうか。こうした中、課題となることが多いのが社内コミュニケーションです。本コラムでは株式会社リクルートマネジメントソリューションズの柳井裕至氏が、「これからの社内コミュニケーションの在り方」について仮説を立てたうえで、その在り方を、リモートワーク共存時代の中、どのように実現していけばいいのか、具体例を提示しながら考えていきます。

第1回は、コミュニケーションのこれまでの変遷を見ていきます。

働き方の多様化が進む中、社内コミュニケーション活性化はどうする?

今、多くの企業は「リモートワーク」と「出社勤務」のバランスをとりつつ、新しい働き方を模索している段階である。仕事柄多くの企業と接する筆者も、「他の企業ではリモートと出社の比率はどれくらいなのでしょうか?」「おたくではどのようにされているのですか?」と聞かれることが多い。あいさつ変わりに交わされる会話でもあるのだが、一歩突っ込んで話を聞いてみると「リモートワークなど働き方の多様化をある程度認めつつも、社内コミュニケーションを活性化させるにはどうすればいいのか?」という問題意識を持つ経営企画・管理部門の方は多いのではないだろうか。

多様化・増大する世の中の「コミュニケーションチャネル(=コミュニケーションの場)」

本連載では、“人と人との言葉による相互のやり取り”“何らかの場に2人以上の人が集い、なされるもの”を「コミュニケーション」、そのコミュニケーションが持たれる“場”を「コミュニケーションチャネル」とする。

社会ではほんの10数年の間に生まれた新しいコミュニケーションチャネルが盛隆だ。Facebook、X(旧:Twitter)、LINE、InstagramなどSNSが爆発的に広がり、多くの人といつでもどこでも気軽にコミュニケーションをとることが可能になった。YouTubeは映像を通じてさまざまなメッセージを発信する者とその映像を視聴する受信者のコミュニケーションのチャネルとなり、YouTuberという新しい職業まで生み出してまった。トランプ前米大統領は、Twitter(現:X)というコミュニケーションチャネルを選挙・政治に大いに活用した。身近なところでも、私の長男は部屋にこもりLINEで友達とつながりながら、オンラインゲームをして遊び、会話を楽しんでいる。明らかなことは、このSNSという新しいコミュニケーションチャネルの誕生・波及によって、それまでは繋がらなかった人同士がつながり、従来のチャネルではなかったコミュニケーションが行われており、その影響力は計り知れないものになっているということだ。企業のマーケティングやプロモーションチャネルとしても無視できない存在になっている。

では、社内のコミュニケーションチャネルは、ここ10数年でどう変化したのだろうか?

企業内にある様々なコミュニケーションチャネルとその特性

企業内にもさまざまなコミュニケーションチャネルが存在している(図表1-1参照)。
それぞれのチャネルには、果たすべき機能があり、コミュニケーションの特徴がある。

※図表1-1 企業内のコミュニケーションチャネル

最もフォーマル色が強い会議を見てみよう。取締役会~課の会議、部門間調整会議など、縦・横の多岐にわたる「会議」が定期的になされている。情報の伝達・共有と意思決定が主たる機能であり、目的が明確で役割と責任を前提にした場。論理性・客観性が求められる。

逆にインフォーマル色が強いものとして、かつて「職場での雑談(休憩室、たばこ部屋など)」が存在していた会社も多い。他愛もない会話が交わされる。立場、目的も意図もない交流だが、時にフォーマルな場では語られない価値ある情報が流れることも少なくなかった。

「職場」というのも一つのチャネルと見ることもできる。課やチーム単位、組織活動の拠点であり、さまざまなコミュニケーションがなされる活動の核となる場、最もベースとなるコミュニケーションチャネルでもある。基本役割ベースだが、ふとした瞬間に個性や人間レベルのコミュニケーションも繰り広げられる。

コミュニケーションの特性という観点でみてみたい(図表1-2参照)。

※図表1-2 企業内のコミュニケーションチャネル

フォーマル色の強いチャネルは、インフォーマル色の強いそれと比較して、役割・責任レベル、合理的・論理的・客観性、結論を求める、指示・説明・指摘という傾向が強い。逆にインフォーマル色の強いチャネルは、比較して、「人と人」人間レベル、感覚的・感情的・イメージ、思うこと・感じることを自由に、疑問・違和感・好奇心の発露という傾向が強い。

着目すべきは、この10数年で、社内コミュニケーションは大きく変貌を遂げたということだ。

社内コミュニケーションの「かつて」と「今」

10数年前の変化として下記3つの変化が見られている。

①運動会や社員旅行といった社内イベント、たばこ部屋、営業同行帰りなどの他愛もない会話、飲み会など、インフォーマルな特性をもつコミュニケーションチャネルは減少した

②リモートワークの拡大により、フォーマル色とインフォーマル色の両方を併せ持ち、社員の活動の起点となった職場というチャネルが機能しづらくなった

③フォーマル色の強い会議や打合せはオンラインツールを通じた非対面コミュニケーションに代替されている


コロナ禍に加速した急激なリモートワークシフトにばかり目が行きがちだが、10数年というレンジで社内コミュニケーション全体の傾向を捉えたときには、想像以上にインフォーマルなコミュニケーション機会が減少している、ということがわかる。

リモートワークと対面出社という枠組みをもう少し広げて、社内コミュニケーションチャネルという点で見つめたときに、長期レンジの変化は踏まえておくことが重要だ。まずは俯瞰的に見つめることからスタートすることとしたい。

では、このような変化はいいことなのか、悪いことなのか。問題なのか、むしろ機会なのか。まずはこうした変化が企業の成長や働く人にどのような影響を与えているのか。その影響について次回は考えていきたい。