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数値の可視化とは?退職クライシスへの備えと対応【退職クライシスを乗り切る! バックオフィス安定運営の秘訣Vol.4】

2024.04.03

アウトソーシング事業者である株式会社TMJの村上亘氏が、「退職」に伴う「危機」=「退職クライシス」を乗り切り、バックオフィス安定運営の秘訣を紹介していく本コラム。第4回のテーマはバックオフィス安定運営のための「数値の可視化」について解説します。

先の見えない現場からの脱却

バックオフィス業務は定められた期日内に処理を行う必要があり、また、繁忙・閑散の差が激しい業務です。時には「終わるまでやりきる」対応で、終わりも見えず、残業が積み増される日々に悲壮感が漂っているといった会社も拝見しました。これではベテラン社員は力尽き、苦労して採用した新人が早期に離職してしまうといったクライシスの連鎖が起こる可能性が高まってしまいます。

私たち、アウトソーサーはこれらの状況を回避するため、数値を可視化することで将来を予測し、計画を立案した上で繁忙を迎え撃つスタイルを確立しており、本稿でご紹介できればと思います。

数値の可視化が実現する業務予測と現場コントロール

バックオフィスの現場では、取得の難しさはあるものの、多種多様な数値の可視化に取り組みます。今回は多くの数値の中から①業務量(業務の種類とそれぞれ処理する件数)②発生タイミング(業務の発生から期日までの数量変化)③生産性(1件の業務を処理するのに必要な時間)の3つの観点で数値の可視化に注目し、活用方法などをご紹介できればと思います。

結論、私たちはこれらの数値をもとに、毎月の運営計画を立案することで、事前に繁忙対策を進め、毎月無理なく効率的な生産性を実現しております。具体的例をタイムライン順にご説明しますと下記のようになります。

・前月20日~1週間前まで(翌月運営計画立案)
まず、過去の数値や直近のトレンドを参考に、業務の種類ごとに繁忙の発生タイミングを予測し、日々の業務量変化を考慮した日別の業務量見込みを立てます。業務量の予測は、クライアントとも共有し確認します。これに各業務の生産性を組み合わせることで、日別の必要稼働時間数を算出し、必要なスタッフ数やシフト時間帯を稼働シフト計画として仮決めします。

稼働シフト計画と、スタッフの希望を照らし合わせ、稼働日や時間帯の変更、残業可否などの判断を行いながら、必要な稼働時間を確保し、稼働計画を完成させます。

・当月日次
日次で稼働計画を確認しながら各担当者に当日の担当業務、目標数値を割り当てて業務を開始します。管理者は時間事、最低でも午前中には業務の進捗を確認し、計画との差異があれば原因を特定し対処を行います。一例ですが、特定の処理で遅延や予想外の申請数が舞い込んだ場合などは、何か突発の要因が発生したのか、繁忙タイミングがずれたのか、生産性が下がったのか等の原因を特定し、ヘルプ人員の要請、スタッフの残業対応可否、翌日への繰り越し可否などの解決手段から取るべき手段を導きだし、午後から運営をシフトさせることで事態の打開を図ります。

このように3つの数値が可視化されると、先々の業務予測を立案できるため、イレギュラーが起こっても運営をコントロールできるのです。

退職クライシスへの対応メリット

また、業務の予測やコントロールは退職クライシスに通日メリットも教授出来る事となります。代表例を2つご紹介します。

メリット1:人員数ではなく、稼働時間で業務を捉えることが可能になる

業務量の可視化により、特定業務で繁忙が顕著になる場合が見られます。この場合、比較的余裕のある担当者に協力を仰ぐ、この時に特化した人員を確保(パート/派遣さんを雇う等)するという手段も可能になります。

少々特異ではありますが、弊社ではシフト形態を10通り前後用意しており、月の上旬は週5日・1日8時間勤務ですが、月中旬、下旬は週3勤務1日8時間以下でもOKといった変則的なシフトで採用するケースもあります。バックオフィス部門の方とお話をしていますと、多くは正社員/非正規社員を問わず、週5日/8時間勤務を必須として捉えている場合も多いのですが、第3回で扱った「フロー・ルール・マニュアル」が可視化された上で、本稿の数値の可視化がかなうと、予想される業務量に対して必要な稼働時間を確保するといった考えに変換することが可能となり、離職に伴う新たな担当者の採用・育成対策以外の柔軟な手段の検討につながると考えます。

気付き2:新人育成への効果
数値の可視化は新人育成にも効果的です。目標にしても、「この業務の標準的な作業時間は1件10分だが、あなたは今月1件15分以内を目標に、月末には1日32件の処理を目指してください」など、具体的に設定できるようになります。

ご存じの通り、新人は処理速度と正確性の両立が難しく、どちらかに偏る傾向があります。速度を優先すると、確認不足・手順の簡略化から質が伴わなくなる可能性が高まりますので、マニュアルを順守した高精度な処理時間の提示は成長の指針となります。また、成長の足取りが数値で表されることは、新人にとって励みや自信につながり、新人の早期退職という最悪のクライシスを回避する特効薬となります。

数値の取り方

このように、数値の可視化は離職クライシスの防止策としても有用ですが、取得方法と注意点について、最後にご説明いたします。

数値の可視化はカウントや計測が基本となります。ただ、バックオフィス業務は複雑で精緻な数値を求めるとかえって負荷となりかねません。一歩目ではベテランの経験を参考にするのも一つの手となります。第3回で定めたフローをもとにこの月間業務量や、繁忙のタイミング、繁忙閑散の数量差や処理時間などをベテランへのヒアリングで数値化することで大まかな概要を捉える事が出来ます。この概要を参考に気になるポイントを、担当別・日別・時間別などの切り口でサンプリング調査し、可視化の精度を高めていければ良いと考えます。

また、進める際のポイントが下記の2点となります。
・カウント対象の定義
処理件数や発生タイミングについて起こりがちなのですが、受付けた時点での数量/タイミングなのか、処理した時点での数量/タイミングなのか、終了は何を持って終了とみなすかなどの目線合わせがない中で記憶や計測を行うと、担当者間で数値にズレが生じてしまいますので、事前に目線合わせは必要です。

 ・標準数値を可視化する
生産性の可視化では、優れた数値に目が行きがちですが、それが標準的であるか否かの判断には注意が必要です。新人を除く担当者がどんな日に実施しても処理できる数値が標準数値となっているか、見極めましょう。というのも、全員が優れた担当者を目指すのはなかなかハードルの高いことですし、なかには、必要な工程を簡略化しているといった要因で、ハイスコアを出している場合もあるからです。

正しいフローやマニュアルが順守された上で誰もが目指す生産性=標準数値に着目し、全体を一定のブレ幅に収めることで業務予測や新人育成に効果がある数値の可視化ができると考えます。

数値を可視化していくことで、「来たものを終わるまで対応する」といった力わざ以外の選択肢や対策が増えると考えており、私たちは常々数値で物事を捉える癖をつけるに至っています。

いま手元に業務上の数値をお持ちでいない場合、一歩踏み出した瞬間から新たな気付きが生まれてくるものですので、できる範囲から始めてみることをお勧めいたします。