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KiteRa、初のM&Aへ 「KiteRa GRCプラットフォーム」で企業統治を高度化

2026.02.18
奥山晶子
(左から)株式会社全国労務診断協会 代表取締役 今田真吾氏、株式会社KiteRa 代表取締役 執行役員 CEO 植松隆史氏

2026年2月5日、社内規程DXサービスを提供している株式会社KiteRaは事業戦略説明会を開催し、AIを活用した新たな「KiteRa GRCプラットフォーム」構想を公表した。社内規程DXで蓄積した「ルール整備と運用管理」のノウハウを起点に、不正・不祥事の未然防止、意思決定の高度化、企業価値向上を支える統合基盤の構築を目指す。

形式的コンプライアンスの限界とGRCの必要性

KiteRaは、「安心して働ける世界をつくる」をミッションに、社内規程をテクノロジーの力で運用する社内規程DXサービスとして、企業向け「KiteRa Biz(キテラビズ)」と社労士向け「KiteRa Pro(キテラプロ)」を開発・運営し、2025年12月時点で4000社以上に導入されている。

説明会ではKiteRaの植松隆史代表取締役が登壇し、事業戦略「KiteRa GRCプラットフォーム」の確立について語った。「GRCプラットフォーム」の「GRC」は、「Governance(ガバナンス)」「Risk(リスク)」「Compliance(コンプライアンス)」の頭文字を取った略称だ。これらの三つの要素を包括的に、徹底的にマネジメントをすることで、企業価値を向上させる。つまり、企業が「何をどう守り、どう判断し、どうリスクを避けるか」を仕組みとして整える取り組みだ。

2024年の内部統制の不備開示企業は過去最多の58社、コンプライアンス違反倒産も388件と過去最多を記録した。自動車業界の認証不正、製薬会社の健康被害問題、金融機関の不適切行為など、ガバナンスを揺るがす事案は後を絶たない。

植松氏は「GRCは『守り』の仕組みではなく、企業価値を高めるための取り組み」と強調した。海外ではGRC市場が急成長し、ServiceNowやWorkivaなど巨大プレイヤーが台頭する一方、日本ではまだ未開拓領域だという。

「ポリシーとコントロールの同期」を実現するKiteRa GRCプラットフォーム

KiteRaがGRC領域に踏み込む理由は、企業のガバナンスや内部統制が本来「社内規程(ポリシー)」と「実際の運用(コントロール)」の同期によって成り立つためだ。現状、多くの企業では規程類のWordやPDFをファイルサーバーに置く管理に留まり、最新版の特定や参照範囲の設定が困難で、同期が崩れやすい。

KiteRaは業務アプリケーション内に最新データを保持し、AIを活用して規程と運用の同期を維持する仕組みを提供することで、この構造的課題を解決しようとしている。

KiteRa GRCプラットフォームは、次の3要素で構成される。

・GRC WORK APPLICATION(実務者向け)
規程管理、内部監査、リスクコントロールマトリクス、業務規程書などを一元管理。AIが草案作成や整合性チェックを支援し、実務の精度とスピードを高める。

・GRC DATABASE(共通知能基盤)
外部データや社内情報を構造化し、AIが理解できる形式に再構成。各アプリに高精度な情報を供給する中枢となる。

・EMPLOYEE WORK APPLICATION(従業員向け)
社内ルールの検索・閲覧、業務プロセスにおけるリスク提示、オンボーディング資料の同期化、LMS連携など、現場の判断を支える。

これらにより、労基法改正時の自動整合性チェック、内部監査結果からの予防策自動立案、取締役会決議の矛盾検出など、従来は属人的だった判断をシステムが補完する世界が実現する。

全国労務診断協会とのM&Aでマーケット確立へ

KiteRa GRCプラットフォームを実現するために行ったのが、KiteRa初となるM&Aだ。社会保険労務士の労務監査業務を支援するクラウド「ヨクスル」を提供する全国労務診断協会をグループ化し、規程整備と労務監査を一気通貫でつなぐ体制を構築する。KiteRaはこのM&Aにより、KiteRa Bizへの監査ノウハウを展開し、国内GRCカテゴリーマーケットを確立する考えだ。

「ヨクスル」は、450を超える診断項目に基づき、労務リスクを定量的に可視化できる労務監査クラウドサービスだ。株式会社全国労務診断協会の今田真吾代表取締役は、「どんないい企業でも土台となる労務の部分がきちんとできていないと、エンゲージメントが上がりません。働き方が多様化する中、法規制も改正されています。我々の『ヨクスル』で雇用環境の課題を見える化し、社内規程を改善したうえで、KiteRaのツールによりその規程を確実に運用することで、企業のガバナンス高度化に貢献できます」とグループ化参画の狙いを語った。

新アプリ「公式文書」リリースで規程以外のマニュアル・手順書も一元管理へ

説明会では再び植松氏が登壇し、2026年3月から提供を開始する新アプリ「公式文書」について解説した。「公式文書」では、社内規程だけでなく、ポリシー、ガイドライン、手順書、マニュアル、細則など、これまで散在していた文書を一元管理し、最新版管理・履歴管理・承認・周知までをシステム上で完結させる。

これにより、規程と公式文書の整合性が保たれ、従業員が常に正しい情報へアクセスできる環境が整う。また、情報の探索時間が短縮されることも期待される。

日本発GRCプラットフォームの確立へ

説明会後の質疑応答では、日本のGRC市場がなぜ海外に比べて立ち上がりが遅れているのか、またAIエージェントの進化がGRC領域にどのような影響を与えるのかといった質問が相次いだ。

植松氏は、海外GRCプラットフォーマーが日本に参入しにくい理由として、日本固有の法制度や労使関係、商習慣を挙げた。米国では従業員ごとの契約に基づくルールブック文化が一般的だが、日本は労使合意や組合との調整を前提に会社全体のルールを整備する。こうした構造の違いが、海外製品のローカライズを難しくしているという。

AIエージェントの進化については、「GRCは判断・リスク許容度・企業文化といった文脈が強く影響する領域であり、汎用AIがそのまま代替することは難しい」と説明した。AIが担うのは意思決定そのものではなく、判断前の情報整理や整合性チェックであり、最終判断には企業文化や従業員への配慮といった非定型の要素が不可欠だと強調した。

また、外部LLMとの連携については、今後MCPサーバーを提供し、企業が利用するAIエージェントからKiteRaのレギュレーションデータにアクセスできるようにする方針を示した。

規程整備と運用の断絶を埋めるという長年の課題に真正面から挑むKiteRa。GRCが「悩みのタネ」から「組織を強くする投資」へと変わる日が近づいている。