2023年新設法人が前年比約8%増加し過去最多の15.3万社に 10年前と比較すると1.4倍
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、2023年の「新設法人」調査を実施。新設法人が過去最多の15万2860社となったことを報告。2年ぶりの増加となり、前年と比較すると7.9%増加しているという。ここでは調査結果の概要をお伝えする。
新設法人増加の要因は?
2023年に全国で設立された新設法人は15万2860社に上り、前年から7.9%増加。TDBによれば法人の新設動向は、特に2010年代後半から増加傾向が顕著となり、10年前の2013年に比べて年間の設立数は約1.4倍に増加したという。
TDBは新設法人増加の要因のひとつとして、新興企業や太陽光発電への投資など特定の事業活動を目的とした企業設立が活発であることを挙げた。また、2023年10月からスタートしたインボイス(適格請求書)制度に対応するため、法人格を取得した小規模事業者も一定数あったとみている。加えて、個人の趣味や特技を生かした起業への心理的なハードルが低下していること「スタートアップ創出促進保証」など経営者保証を必要としない国・自治体による創業支援制度の取り組みが、起業の増加をより後押ししたとの考察を示した。
なお、同年の休廃業・解散件数(5万9105社・前年比10.6%増)企業倒産件数(8497社・同33.3%増)と比べると、いずれも新設法人の増加率を大幅に上回っている。一方で企業倒産・休廃業・解散の総数との比較では2.26倍高い水準となった。
法人格別「株式会社」が最多の10.1万社
TDBは法人格別の分析結果も報告。最も多いのは「株式会社」で10万1459社となり、全体の66.4%を占めたことが明らかになった。TDBによると、株式会社が10万社を超えたのは2000年以降で初めてだという。低コストでの設立が可能で、利益配分面などで経営の自由度が高い「合同会社」は4万630社で、株式会社と合同会社で23年全体の9割を超えている。
法人格別に増加率をみると「土地家屋調査士法人」が最も高く、42.9%増(42社→60社)となったこともわかった。TDBは2020年に法人化への要件緩和が行われたことも要因として挙げている。また、マンション建設ラッシュなどを背景に、共用部分の維持管理といった機能を担う「管理組合法人」も29.2%増(65社→ 84社)と増加が目立つ結果となった。一方「社会福祉法人」(86社→55社、36.0%減)は、職員不足や介護報酬が小幅なプラス改定にとどまるなど経営環境の悪化を背景に3割以上も落ち込んでいる。
調査概要
調査方法:TDBが保有する起業データベースのほか、登記情報などを基に2023年に全国で新設された企業を対象に実施
※設立時点の代表者情報や本社情報については、遡って最も古い情報を基に算出・推計
出典元:「新設法人」調査(2023年)(株式会社帝国データバンク)
まとめ
前年を大きく上回る15万社が設立され、高い水準で推移した新設法人。TDBは「30年ぶりとなる高水準の賃上げや国内への投資など、長期にわたるデフレ経済からの脱却が見据えられ、新陳代謝をさらに活発化させる一つの要因となる「新設法人」の動向が注目される」とコメントしている。
また、日本政策金融公庫が2024年1月に発表した「2023年度起業と起業意識に関する調査(※1)」の結果を引用し、隙間時間に起業する「パートタイム起業家」のうち、約4割が現在の職業を「勤務者(正社員)」と回答していることを指摘。「起業」が「副業の発展系」といった性格を併せ持つ傾向が強まっているとして、起業に対する心理的ハードルが低下しているとの見解を示した。
パーソルキャリア株式会社が運営する「HiPro」が実施した調査(※2)によれば、副業する人のうち約6割は、副業によって仕事のやりがいやモチベーションが上がったと感じていることが報告されている。副業や起業を後押しすることで会社へのメリットが生まれる可能性もある。今後の従業員の働き方を考える上で、参考にしていただきたい。
※1 出典元:「2023年度起業と起業意識に関する調査」~アンケート結果の概要~(日本政策金融公庫 総合研究所)
※2 出典元:<副業がもたらす仕事への意識変化に関する実態調査>副業開始前と後では、仕事に対するモチベーションが1.7倍上昇~副業は働きがいに繋がりSDGs達成にも影響を与える可能性~(HiPro)














