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【中小企業の賃上げ実態】正社員で3.26% パート・アルバイト等は3.43%に

2024.06.06

日本商工会議所ならびに東京商工会議所(ともに小林健会頭)は、物価上昇や人手不足を背景に賃上げの機運が高まり、雇用の7割を支える中小企業の賃上げへの関心が高まるなか、中小企業の賃上げの実態を詳細に把握し、今後の要望活動に活かしていくために「中小企業の賃金改定に関する調査」を実施した。

調査概要

調査地域:全国47都道府県
調査期間:2024年4月19日~5月17日
調査方法:各地商工会議所職員による調査
回答企業数:1979社
回収商工会議所数:380商工会議所
出典元:「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果(日本商工会議所・東京商工会議所)

防衛的な賃上げが依然6割近く 業種により賃上げの中身に差

防衛的な賃上げが依然6割近く 業種により賃上げの中身に差

本調査結果によれば、2024年度に「賃上げを実施予定」とする企業は74.3%となり、1月調査から13.0ポイント増となっている。一方で、そのうち「防衛的な賃上げ」は59.1%と依然6割近い(2024年1月:60.3%)実態も明らかに。また、従業員数20人以下の企業では「賃上げを実施予定」は63.3%で、そのうち「防衛的な賃上げ」が64.1%であることもわかった。

業種別にみると「賃上げを実施予定」とする企業は、卸売業(81.5%)製造業(80.2%)で8割を超えている。 最も低い医療・介護・看護業でも52.5%となり、全業種で半数以上が賃上げすることが明らかになった。なお、情報通信業、宿泊・飲食業、金融・保険・不動産業では「前向きな賃上げ」が5割超に。一方で運輸業では「防衛的な賃上げ」が72.2%と、業種により賃上げの中身に差がある実態が報告されている。

雇用形態別の賃上げ率 正社員3.62% パートアルバイト等3.43%

雇用形態別の賃上げ率 正社員3.62% パートアルバイト等3.43%

本調査では雇用形態別の賃上げ実態も調査しており、正社員の賃上げ額は月給9662円、賃上げ率は3.62%(加重平均)であった。従業員20人以下の企業では賃上げ額が月給8801円、賃上げ率3.34%(加重平均)となっており、規模の小さな事業所ではやや厳しい状況がうかがえる。なお業種別では、その他サービス業、小売業で4%台と高く、運輸業、医療・介護・看護業は2%台にとどまった。

パート・アルバイト等の賃上げ額は時給37.6円、賃上げ率は3.43%(加重平均)に。従業員20人以下の企業では賃上げ額が時給43.3円、賃上げ率は3.88%(加重平均)であった。業種別では、医療・介護・看護業、運輸業で4%台後半と高い賃上げ率に。本調査では、介護報酬や標準運賃の設定も影響し、正社員の賃上げが難しい中、パート・アルバイトの賃上げで人員確保を図っているとの考察が示されている。

まとめ

依然として防衛的賃上げが6割近い実態が明らかになり、中小企業の多くが利益を削って賃上げを実施している厳しい状況がうかがえる調査結果となった。人手不足や残業規制、年収の壁による働き控えなど、課題も多い中小企業。

財務省の調査(※)によれば、人件費について価格転嫁ができたとする中堅・中小企業等はわずか3割であった。今後の持続的な賃上げに向けて、取引先の理解を得て価格転嫁を行えるかどうかがひとつのポイントとなりそうだ。

「地域企業における賃上げ等の動向について(特別調査)」(財務省)