上場企業の平均年収、2023年度は過去20年で最高額を更新 TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、2023年度決算期の全上場約3800社における平均年間給与について調査・分析を行い、2024年8月6日にその結果を発表。過去20年で最高額を更新したという調査結果の概要をお伝えする。
※今回の調査は、有価証券報告書に「平均年間給与・従業員平均年齢・勤続年数」の記載がある全上場企業を対象に実施。持ち株会社などの業態、社員数などで対象を限定せず、業種分類は金融庁の定めに準じている
「上場企業」平均年収、2023年度は651.4万円
TDBの調査によれば、2023年度決算期(2023年4月~2024年3月期)の全上場約3800社における平均年間給与(平均年収、提出された有価証券報告書に基づく)は、651万4000円(前年比2.2%増)。3年連続での前年比増となり、過去20年で最高額を更新したことが明らかになった。なお、2023年度平均給与額が最も高い企業は、M&Aアドバイザリーや仲介業務を手がける「M&Aキャピタルパートナーズ」(2478万円、東証プライム)と報告された。
2022~2023年度の増減を比較すると、68.7%の上場企業で前年度から平均年間給与が「増加」しているという。増加率は「5%未満(20.1%)」が最も多く「10%未満(15.3%)」「10%以上(8.8%)」となった企業も。この結果、厚生労働省の調査(「令和5年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」)に基づく2023年の平均賃上げ率(妥結額ベース)3.6%を上回る上場企業は3割を超えた。
一方、上場市場別でみると、最も平均年間給与が高いのは平均735万7000円となった「東証プライム(市場)」上場企業。TDBの発表では、単純比較はできないとしながらも「旧東証1部」上場を含め、2年連続での700万円超えは2023年度が初めてであることも示されている。次いで高いのは606万4000円の「東証グロース」で、前身となる旧東証ジャスダック・マザーズ両市場と比較しても初めて600万円を超えたとしている。
また、業種別にみると最も平均年間給与が高い業界は「海運業(1008万円)」となり、全業界で唯一平均1000万円を超えた。
出典元:上場企業の「平均年間給与」動向調査(2023年度決算)(帝国データバンク)
まとめ
TDBは平均給与が上昇する背景の一つに、多方面で表面化した人手不足があるとみている。業績が好調な企業・業界を中心に、待遇を改善して人材確保を図る動きが広がっているようだ。2024年度はそうした動きがさらに強まっているとして、TDBは平均年間給与の上昇も続くと予測している。
他方で、TDBが2024年4月に公表したアンケート(※1)では、中小企業からは賃上げに対する厳しい声があげられていた。大企業と中小企業の間で格差が拡大する懸念も高まる中で、政府や日本銀行が目指す“賃金と物価の好循環”は実現されるのか。引き続き注視していきたい。
※出典元:<緊急調査>2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート(帝国データバンク)