カスハラ対策講じていない企業が7割超、カスハラ原因の休職・退職は1割超の企業で発生 TSR調査
株式会社 東京商工リサーチ(以下:TSR)はカスタマーハラスメント(以下:カスハラ)が社会問題化していることを受けて、企業向けに調査を実施。カスハラ被害によって、従業員の休職や退職が発生している企業がいる一方で、7割を超える企業が対策を実施できていない実態が明らかになった。
調査概要
◆調査期間:2024年8月1日~8月13日
◆調査方法:インターネットによるアンケート調査
◆調査対象:5748社
◆出典:企業のカスハラ対策に遅れ、未対策が7割超 「カスハラ被害」で従業員の「休職・退職」 13.5%の企業で発生(株式会社 東京商工リサーチ)
※本調査では資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義
およそ5社に1社でカスハラ被害が発生 大企業ほど発生割合高い傾向
TSRによると、直近1年間でカスタマーハラスメントを受けたことが「ある」と回答した企業は19.1%(5748社中1103社)とおよそ2割に達したという。
規模別に見ると、受けたことが「ある」との回答は、大企業で26.1%(567社中148社)、中小企業では18.4%(5181社中955社)となり、大企業の方が7.7ポイント高い。
業種別では「宿泊業(72.0%/25社中18社)」「飲食店(64.8%/37社中24社)」「道路旅客運送業(55.5%/18社中10社)」が上位に。個人客と接する機会が多い業種ほど、カスハラ被害に遭いやすいことが示唆された。
カスハラによる従業員への影響
カスハラを受けたことがある企業を対象に、従業員への影響も調査。その結果「休職が発生した(4.3%/1040社中45社)」「退職が発生した(5.3%/56社)」「休職と退職が発生した(3.8%/40社)」との回答が寄せられており「休職や退職が発生した」は合計で13.5%(計141社)と1割超に及ぶ実態が明らかになった。
規模別で見ると「休職や退職が発生した」は大企業で17.4%(132社中23社)、中小企業では12.9%(908社中118社)と、大企業の方が4.5ポイント高い。
カスハラの内容で最も多いのは「攻撃的・威圧的な口調」
実際に発生した内容としては、「口調が攻撃的・威圧的だった(73.1%/1047社中、766社)」「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた(50.1%/525社)」「大きな声を上げられた(38.9%/408社)」「一方的に話し続けられた(37.5%/393社)」「過度に謝罪を要求された(24.5%/257社)」「自社担当者の人格否定があった(24.0%/252社)」などが多かった。
「口調が攻撃的・威圧的」について規模別に見ると大企業で72.6%(139社中101社)、中小企業で73.2%(908社中665社)と、大きな差は見られない。一方「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」では大企業が59.7%(83社)で中小企業では48.6%(442社)と大企業の方が多いこともわかった。
カスハラ対策「講じていない」が7割超
本調査では「カスハラ」への対策実施状況についても質問。「貴社ではカスタマーハラスメントについて、どのような対策を講じていますか?」と複数回答で聞いたところ、「特に対策は講じていない」が71.5%(5651社中4041社)と、企業側の対策が遅れている実態が明らかになった。
講じた対策としては「従業員向けの研修を行った(12.4%/701社)」「従業員向けの相談窓口を設置した(8.7%/496社)」「カスタマーハラスメントの対応方針(に類するものを含む)を策定した(6.3%/359社)」などが挙げられたという。
規模別で見ると「特に対策を講じていない」は大企業が54.4%(569社中310社)で、中小企業では73.4%(5082社中3731社)と、中小企業の方が19.0ポイント高い。一方で「従業員向けの研修実施」は大企業24.0%(137社)、中小企業11.0%(564社)と、大企業の方が進んでいるようだ。また「相談窓口の設置」についても大企業18.8%(107社)中小企業7.6%(389社)となり、大企業が10ポイント以上高いことがわかった。
まとめ
今回の調査では、顧客等からの著しい迷惑行為であるカスハラが、従業員に悪影響をもたらし、企業側にも早期の対策が求められる実態が判明した。厚生労働省では「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等(※)を作成しており、従業員が安心して働ける職場環境を整備するために、本マニュアルも参考に対策を講じてみては?
※参考:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省)











