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ゾンビ企業と「取引きある」は12%。債権回収の状況は大差なし TSR調査

2024.10.22

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)が、いわゆる「ゾンビ企業」との取引に関するアンケート調査の結果を発表した。同社が「健全な経営状態ではないにもかかわらず、融資や補助・助成金などにより倒産や廃業を免れている企業」という認識が広がっているとする「ゾンビ企業」。しかし支援の枠組みしだいで、経済活動を押し上げる可能性が残されているという。

調査概要

調査期間:2024年10月1日~10月8日
調査手法:インターネットによるアンケート調査
有効回答:5443社
出典元:ゾンビ企業との「取引あり」は12.1% 回収に「問題なし」約7割、適切な支援で成長を秘める(株式会社東京商工リサーチ)
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義

「ゾンビ企業」との取引 収益機会の最大化に課題か

「ゾンビ企業」との取引 収益機会の最大化に課題か

本調査では、健全な経営状態ではないにもかかわらず、融資や補助・助成金などにより倒産や廃業を免れている企業を「ゾンビ企業」として、取引の有無を尋ねている。その結果「仕入れ先にある(2.8%)」「販売先にある(5.9%)」「両方にある(3.2%)」と、合計で1割を超える企業が取引を有していることが明らかになった。

また、ゾンビ企業と思われる企業とそれ以外の企業を比較したここ数年(3~5年)の取引量については「大きな変化はない(50.0%)」「減少(43.3%)」「増加(6.6%)」との回答が寄せられたという。TSRは「こうした企業の取引先は、与信面から取引枠に上限を設けたり、積極的な営業を避けている可能性もあり、円滑な取引で収益機会の最大化が図られていない構図が浮かび上がる」と指摘している。

債権回収状況「大きな差はない」が6割超

債権回収状況「大きな差はない」が6割超

同じく、ゾンビ企業と取引があると答えた企業に、債権回収の状況について聞くと、「回収状況に大きな差はない(65.2%)」が最も多く、次いで「「期日を超えて入金される傾向にある(29.6%)」「期日までに入金される傾向にある(5.1%)」という結果に。

「期日を超えて入金」と回答した企業を業種別に分析した結果では「物品賃貸業(80.0%)」がトップで、次いで「設備工事業(62.5%)」「機械器具小売業(60.0%)」が上位に並んだという。

TSRはこうした状況について、リスクマネージメント体制を構築した上で適切な関係性を築くことができれば、自社の業績拡大に貢献するパートナーと位置付けられるようになるとの見解を示している。

まとめ

本調査結果からは「ゾンビ企業」と認識される企業であっても、期日通りに支払いが履行されている企業は少なくないことが明らかになった。

TSRは2024年3月に発表したレポートの中で、2023年度のゾンビ企業率参考値を4.89%と報告(※1)。2022年度より悪化している背景について、海外需要や昨年5月の新型コロナの5類移行による国内の経済再活性化を取り込み、売上債権や棚卸資産が増加(営業CFのマイナス要因)したことがあると解説していた。

今回の調査結果を受けてTSRは、過剰債務に陥った企業でもバランスシートや収益環境の改善によって取引ボリュームが増加すれば、日本経済を底上げする切り札になる可能性を残しているとの考察を示す。淘汰するばかりでなく、ゾンビ企業の状態から抜け出すために客観的な分析に基づいた支援の枠組みを拡充することこそ、経済活性化に近づく取り組みと言えるかもしれない。

※1 出典元:2024年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 推定56.5万に迫る利上げ、重点支援先の見極めが重要 ~(株式会社東京商工リサーチ)