2024年医療機関の倒産・休廃業が過去最多の786件に TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は「医療機関」における倒産・休廃業解散の発生状況について調査・分析を行った。なお、本調査では負債額1000万円以上かつ法的整理となった「病院」「診療所」「歯科医院」の経営を主業とする事業者を抽出。倒産件数、休廃業・解散件数は事業者数であり、施設数ではない。
調査概要
集計期間:2024年12月31日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:
医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)(株式会社帝国データバンク)
医療機関の倒産は過去最多の64件 診療所と歯科医院が急増
TDBによると、2024年の医療機関(病院・診療所・歯科医院を経営する事業者)の倒産(法的整理、負債1000万円以上)は64件と報告されている。2009年の52件を大きく上回っており、過去最多を更新した。64件の倒産主因についてTDBは「収入の減少(販売不振)(41件)」が全体の64.1%を占めたことを報告している。
さらにTDBは業態別の分析結果についても報告。「病院(6件)」「診療所(31件)」「歯科医院(27件)」の割合となっており「診療所」「歯科医院」が過去最多を更新して全体を押し上げている。TDBによれば、コロナ禍前の2019年には過去3番目となる45件の倒産が発生したが、翌2000年にはコロナ禍での事業者支援などを背景に27件に減少していたという。しかし、翌2021年から増加に転じ、2022年、23年と2年連続で40件を超えた。
負債総額は前年の253億7200万円から11.3%増加し、282億4200万円に。2000年以降の25年間で5番目に多い水準だと報告されている。
休廃業・解散は倒産の11.3倍に 経営者の高齢化が最大の要因か
TDBの報告を見ると、2024年に休業・廃業・解散が判明した医療機関は722件となっている。2023年の620件を100件以上上回り、過去最多を更新した。TDBは10年前(2014年)と比べて2.1倍、20年前(2004年)と比べて5.6倍に増加したことを報告。さらに業態別では「病院(17件)」「診療所(587件)」「歯科医院(118件)」との内訳が判明しており「診療所」と「歯科医院」が過去最多を更新したこともわかった。
2024年の件数は同年の倒産件数(64件)の11.3倍にも及ぶ。中でも「診療所(18.9倍)」は「病院(2.8倍)」「歯科医院(4.4倍)」と比べ高い割合となった。
TDBは休業・廃業・解散が増加し続けている最大の要因について、全体の81.3%(587件)を占める「診療所」における経営者の高齢化にあると分析。全国の診療所の経営者(年齢の判明している1万836人)の年齢分布を調査した結果、70歳以上の経営者が全体の54.6%で過半数を占めたという。「診療所」における経営者の高齢化は、歯科医院(70歳以上の経営者は25.6%)と比べてもより深刻な状況に陥っていることがわかる。
まとめ
2024年、医療機関の倒産、休廃業・解散件数が過去最多を更新したことがわかった。TDBは2023年度の医療費が高齢化や医療の高度化を背景に3年連続で過去最高を更新した一方で、倒産の主因としては「収入減少」が多くを占める点に注目。受診者の選別意識の高まりやコロナ関連補助金の削減、材料費・人件費の増大、コロナ関連融資の返済開始などが背景にあるとの見解を示した。
また、経営者の高齢化も深刻な状況に陥っているようだ。特に「診療所」ではその傾向が顕著に出ており、半数以上が70歳以上の経営者との報告もされている。日本医師会が全国の病院・診療所に行った調査でも、診療所の後継者不足が明らかになっており、今後も診療所の廃業は年々増加すると見られる。
なおTDBは2026年には医療機関の倒産、休廃業・解散は1000件に達するとの予測を発表している。今後の動向についても注目したい。
日医総研ワーキングペーパー(日本医師会総合政策研究機構)














