85%の企業が賃上げを実施予定も、賃上げ率5%未満が多数 TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2025年2月に実施した「賃上げ」に関するアンケート調査の結果を発表した。ここでは調査結果の概要を紹介する。
調査概要
調査期間:2025年2月3日~10日
調査手法:インターネットによるアンケート調査
有効回答:5467社
出典元:中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定(株式会社東京商工リサーチ)
※賃上げの実態を把握するため「定期昇給」「ベースアップ」「賞与(一時金)」「新卒者の初任給の増額」「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義
※資本金「1億円以上:大企業」「1億円未満(個人企業等を含む):中小企業」と定義
2025年度、賃上げは85%が実施予定! 2016年以降で最高
TSRの発表によると、2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%となっており、TSRが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みであることがわかった。しかしながら、全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまるという。日本労働組合総連合会(連合)が2025年の春闘方針で掲げた賃上げ率を達成するには、厳しい状況にあるようだ。
TSRは2025年度に賃上げを「実施する」企業に対して毎年の賃上げを持続できそうか質問。34.6%の企業で持続的な賃上げの見通しが立っていないことが判明したという。このうち「毎年実施するのは難しい」企業が5.3%あり、診療報酬が定められている医療業(19.0%)などで高さが目立ったことが報告された。
賃上げを「実施しない」理由としては「原材料価格・電気代・燃料費などが高騰している(49.5%)」との回答が最も多く、僅差で「コスト増加分を十分に価格転嫁できていない(48.4%)」が続いている。
TSRは賃上げ実施状況別に、コスト高騰分の価格転嫁割合を尋ねており、賃上げを「実施しない」企業では「価格転嫁できていない(36.4%)」企業の割合が「実施する」企業の17.3%を19.1ポイント上回ったことを報告した。
まとめ
本調査結果からは、賃上げについて企業規模による格差が未だ大きいこと、価格転嫁の実施が賃上げの重要なポイントとなっている様子がうかがえる。また、2025年は賃上げ実施企業の割合が最高値を示したというが、持続的な賃上げの見通しがたたない企業も少なくないようだ。
実質賃金の上昇は個人消費の回復にも効果が期待でき、持続的な賃上げが実施されていくことで国内景気も上向く可能性がある。一方で、価格転嫁が進展しない中小・零細企業では、賃上げによる疲弊が経営に大きなダメージを与える場合もあるだろう。適切な価格転嫁に対する取引先の理解と行政の指導・管理や、経営支援などが、今後より重要となりそうだ。











