「雇用調整助成金」などの不正受給総額、5年間で累計517億82万円に TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、雇用調整助成金、または緊急雇用安定助成金を不正に受給したとして、各都道府県の労働局が2025年6月30日までに公表した企業を集計、分析。2025年上半期の公表件数を発表した。
不正受給の前年同月比は9ヵ月連続で減少 「雇調金のみ」が約6割
TSRによると全国の労働局が公表した雇調金等の不正受給は、2020年4月から2025年6月30日までの5年間で累計1,764件、総額で571億82万円となった。1件あたり平均3,237万円になる。
2025年上半期(1-6月)は、219件で月平均36.5件となり、前年同期(345件)の月平均57.5件に比べ21件下回った。2024年10月から9ヵ月連続で前年同月を下回っている。この結果を受け、TSRは「不正受給の公表は山を越えた可能性がある」と分析している。なお、公表された1,764件の内訳は「雇調金のみ:1,026件(58.1%)」「緊急雇用安定助成金のみ:236件(13.3%)」「両方受給:502件(28.4%)」となっている。
出典元:「雇用調整助成金」の不正受給ワーストは愛知県 6月末で累計1,764件 業種別の最多は飲食業(株式会社東京商工リサーチ)
産業別 サービス業他が約半数で最多に
雇調金等の不正受給が公表された1,764件のうち、TSRの企業情報データベースで分析可能な1,345社(個人企業を含む)を対象に、産業別と業種別も分析。産業別では「サービス業他:612社(45.5%)」が最多で、次いで「建設業:179社(13.3%)」「製造業:148社(11.0%)」「運輸業:100社(7.4%)」が続いている。
業種別では「飲食業:190社(14.1%)」「建設業:179社(13.3%)」「他のサービス業:131社(9.7%)」「生活関連サービス業,娯楽業:106社(7.8%)」「運輸業:100社(7.4%)」が100社を超えていることがわかった。
公表企業の5.95%が倒産
続いて、不正受給が公表された企業の中から倒産した企業を集計。その結果、6月までに105件が倒産しており倒産発生率は5.95%と、2月から0.15ポイント上昇したことがわかった。倒産した105件のうち66件(62.8%)は不正受給の公表当日や公表後に倒産が発生している。TSRが集計した2024年度の倒産発生率は0.28%。雇調金等の不正受給が公表された企業の、倒産発生率の高さが歴然としている。この結果を受け、TSRは「不正受給の発覚時にすでに経営不振に陥っていた企業では、受給金の返還が難しいケースも少なくない」と指摘している。
厚生労働省によると非公表企業を含む不正受給は、2025年3月末で4100件。支給決定取消金額は約978億6000万円に及んでいる。
参照:「雇用調整助成金(不正受給関係)」(厚生労働省)
まとめ
コロナ禍で休業や営業縮小に伴う従業員の雇用を維持する上で、大きな役割を持った雇用調整助成金。迅速な支給にするために、特例措置として手続きが簡略化されたことを悪用した不正受給の摘発が続いている。
不正受給が発覚すると、状況に応じて違約金と延滞金を加えた支給金額の返還を求められる。そのほか、管轄都道府県労働局のホームページで事業主名が公表される。経済面でも、このような”コロナ禍の後遺症”ともいえる状況があることを、心にとめておきたい。














