中小企業の約8割が正社員の昇給を実施 エフアンドエム調査
株式会社エフアンドエムは、運営する中小企業総合研究所にて「中小企業の昇給予定実態調査(2025年度)」を実施。2024年から続く物価高や最低賃金の上昇を背景に、企業における昇給への対応が注目される中、その実態を探った。
調査概要
調査期間:2025年3月1日〜31日
対象:エフアンドエムクラブ会員企業
回答企業数:2,823社
出典元:中小企業の昇給予定実態調査(2025年度)(中小企業総合研究所/株式会社エフアンドエム)
正社員への昇給は約8割が実施 昇給率の中心値は「2〜3%未満」
本調査では、正社員に対する昇給を「実施するまたは実施した(全体または一部)」と回答した企業が78.0%にのぼり、前回調査(2023年度:76.0%)から微増したことが明らかになった。その内訳としては「全社員に対して実施(53.5%)」「一部社員のみ(24.5%)」であった。
昇給率は「1〜2%未満」「3〜4%未満」も含めた「1〜4%未満」ゾーンで約7割を構成。最も多いのは「2〜3%未満(26.3%)」で前回に続き、この水準が全体の中心値となっていることがうかがえる。昇給金額(月給ベース)としては「5,000円〜10,000円未満(30.7%)」が最も多い。
本調査では業種別の分析結果についても報告されている。医療・福祉で3,000円未満の割合が高く、対照的に不動産業では10,000円以上が4割を超えるなど、昇給額の設計に業種特性が色濃く反映されている様子がみられた。
パート・アルバイトは約4割が実施せず
また、パート・アルバイトに対する昇給については「昇給を実施しない」企業が約4割にのぼる一方で「最低賃金の引き上げに合わせて対応する」といった、制度外の柔軟な対応を予定している企業も。昇給率の分布では、パート層の「1〜2%未満」が最多で「1〜5%未満」ゾーンで全体の約7割を構成している。
本調査では、制度化の有無や運用方法について企業ごとの差が大きい実態も明らかになった。地域別では、北海道・東北において「5%以上」の昇給率が全体の18.6%(10%以上:3.9%)に達するなど、地方圏においても高昇給への圧力が強く作用している。最低賃金改定や人材不足といった地域特有の背景が、パート層の昇給水準に直接影響を与えている実態が示唆された。
まとめ
物価高や人手不足の深刻化もあり、昇給の実施は企業にとって不可欠となりつつある。パート・アルバイトといった非正規雇用の従業員に対しては、昇給を実施しない企業も少なくないものの制度外の柔軟な対応を示す企業もみられた。
同社は本調査結果を受けて「中小企業には政府による賃上げ促進税制や業務改善助成金といった外部支援制度の活用も含めて『戦略としての賃上げ』が求められている」と指摘。人材確保の観点からも、採用・定着における訴求力を高める人事制度の再設計が重要、と提言する。
透明性と一貫性の高い昇給制度を持続的に運用していくため、自社でどのような対応が可能であり、必要なのか。本調査結果を、その検討材料とて有効活用したい。














