2025年度「賃上げ」実施率80%台を維持するも2年連続で低下 TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、025年7月30日~8月6日にインターネットで、2025年度の「賃上げに関するアンケート」を実施した。
調査概要
調査期間:2025年7月30日~8月6日
調査方法:インターネットによるアンケート
有効回答:6823社
出典元:2025年度の「賃上げ」 82.0%の企業が実施 産業別トップは運輸業、トランプ関税の影響もジワリ(株式会社東京商工リサーチ)
※賃上げ実態を把握するため「定期昇給」「ベースアップ」「賞与(一時金)の増額」「新卒者の初任給の増額」「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義
※資本金1億円以上を「大企業」1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義
賃上げ実施率が2年連続で低下 規模を問わず「賃上げ疲れ」
TSRの発表によると、2025年度に賃上げを実施した企業は82.0%(前年度84.2%)と80%台を維持している。コロナ禍前の水準は上回ったものの、2年連続で低下。規模別の分析でも大企業(92.6%/前年度94.0%)中小企業(80.9%/前年度82.9%)と、ともに実施率が低下していることが明らかになった。規模を問わず「賃上げ疲れ」がみられている。
続いてTSRは、産業別の賃上げ実施率についても報告。トップは運輸業で89.6%となり「ベースアップ」と「賞与(一時金)の増額」の実施率についても、10産業で運輸業が最も高い。一方で賃上げ率5%以上は3割にとどまっている。深刻なコストアップの中でも、人材確保に向けて可能な限り利益を配分しようという苦渋の姿勢がうかがえる。
こうした調査結果を受けて、TSRは今後の賃上げには「課題が山積している」と指摘する。トランプ関税による来年度の賃上げへの影響をたずねた項目では「ネガティブに影響することはない」が6月の70.8%から8月に62.6%へ8.2ポイント低下。2ヵ月でネガティブな回答の構成比が上昇しており、トランプ関税が賃上げを阻む新たな懸念材料となっている様子がみられた。そのほか物価高や金利上昇など、企業には厳しい状況が続いている。安定した賃上げ継続に向けてTSRは「業務効率化などの収益改善への投資だけでなく、金融機関や行政の支援、環境整備も必要になる」と解説している。
まとめ
大企業と中小企業との賃上げ実施率の差は11.7ptと、過去最大の格差を更新。規模を問わず実施率の低下がみられた中で、規模間の格差も拡大していることが明らかになった。実施率8割を超えたのは10産業のうちわずか4産業。前年度の7産業から減少しており、厳しい状況にあることが示唆された。
高水準での賃上げが続く中、企業の規模を問わず「賃上げ疲れ」が出始めている。賃上げ機運は高いものの、継続に向けては解決すべき課題が多くあるだろう。厚生労働省においても様々な支援策が提供されている。併せて参考にしたい。
参考:「賃上げ」支援助成金パッケージ(厚生労働省)














