約4割の大企業が「転勤が要因の退職」を経験 TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は「転勤」に関するアンケートを実施。異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職の発生状況や、柔軟な転勤制度の導入予定について明らかにした。
調査概要
調査期間:2025年7月30日~8月6日
調査方法:インターネットによるアンケート調査
有効回答:6691社
出典元:「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり(株式会社東京商工リサーチ)
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義
転勤の実績 大企業は8割近く
本調査ではまずはじめに「Q1.貴社には、転勤や配置転換、グループ会社への転籍の実績はありますか?」と質問。全企業では「ない(37.8%/6691社中2532社)」「ある(36.2%/2428社)」という結果となった。なお「本社(本店)以外に事業所がなく、グループ会社もない」は25.8%(1731社)だった。
TSRは規模別・産業別の調査結果についても報告。規模別では「ある」の回答割合は「大企業:75.6%(604社中457社)」「中小企業:32.3%(6087社中1971社)」。産業別では「金融・保険業:60.0%(70社中、42社)」「運輸業:52.6%(268社中、141社)」「卸売業:42.1%(1228社中、518社)」「製造業:37.8%(1683社中637社)」などが多く、最少は「不動産業:24.5%(244社中、60社)」となった。
「転勤が理由の退職」を約3社に1社が経験も、柔軟な転勤制度の導入は進まず
続いて「Q2.(Q1で「ある」と回答した企業)貴社では転勤や配置転換、グループ会社への転籍を理由とした従業員の退職が直近3年でありましたか?」と質問。全企業では「正社員・非正規社員であった」「正社員のみであった」「非正規社員のみであった」が合わせて30.1%(2338社中、704社)となっている。
規模別の調査結果についてTSRは、大企業では合わせて38.0%(415社中、158社)で、中小企業が合わせて28.3%(1923社中、546社)と報告した。
また本調査では、転勤や配置転換、グループ会社への転籍を「する」「しない」を自身で選択出来る制度や転勤手当、エリア社員制度(勤務地限定の社員)といった柔軟な転勤制度の導入状況についても質問。「導入している」「導入し、直近3年以内に内容を見直した」との回答は、14.6%(4430社中、648社)。大企業でも31.1%(475社中148社)と、その割合は決して高くない状況のようだ。
まとめ
約3社に1社は転勤を理由に従業員が退職している実態が明らかになった、本調査。しかしながら、柔軟な転勤制度の導入は進んでいない様子がうかがえる。「導入する予定がない」という企業も多く、前向きな企業は少ない印象だ。
とはいえ、共働き世帯や育児・介護と仕事を両立しているなど、転勤が生活に大きな影響を及ぼす人も少なくない。転職市場も活況な中「あえて転勤を受け入れる必要はない」と、退職の決断に至るケースが増えていると考えられる。転勤を望まない、転勤ができない事情がある従業員とどう向き合っていくか。人材確保の面からも転勤制度の在り方の再考が必要といえる。














