「価格転嫁率」頭打ちか?調査開始以来、最低の39.4 % TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、全国2万6196社を対象に「価格転嫁」に関するアンケート調査を実施した。TDBは、前回2025年2月にも価格転嫁に関する実態調査を実施しており、今回で6回目となる。
調査概要
調査期間:2025年7月17日~7月31日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国2万6196社
有効回答企業数:1万626社(回答率40.6%)
出典元:価格転嫁に関する実態調査(2025年7月)(株式会社帝国データバンク)
8社に1社「全く価格転嫁できず」
本調査ではまずはじめに、自社の主な商品・サービスにおいて「コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているか」を質問。コストの上昇分に対して「多少なりとも価格転嫁できている」と回答した企業は73.7%で、前回調査(2025年2月)から3.3ポイント低下したことがわかった。
内訳をみると「2割未満:23.9%(前回24.7%)」「2割以上5割未満:17.0%(同17.2%)」「5割以上8割未満:17.1%(同18.6%)」「8割以上:11.9%(同13.1%)」「10割すべて転嫁:3.8%(同3.5%)」と部分的な転嫁にとどまる企業が多いことがわかる。
また「全く価格転嫁できない(12.5%)」は前回調査より1.3ポイント増えており、8社に1社は全く価格転嫁ができていないことからも、価格転嫁の状況が鈍化している様子がうかがえる。
2年半ぶりに価格転嫁率が4割を下回る
さらにTDBは、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」が39.4%となったことを報告。残りの6割超を企業が負担していることが明らかになった。前回調査(価格転嫁率40.6%)から1.2ポイント低下し、およそ2年半ぶりに4割を下回ったという。
続いて自社の主な商品・サービスにおいて、代表的なコストとなる「原材料費」「人件費」「物流費」「エネルギーコスト」をそれぞれ項目別にどの程度転嫁できているかを質問。その結果「原材料費:48.2%(前回48.0%)」「人件費:32.0%(同31.3%)」「物流費:35.1%(同34.7%)」「エネルギーコスト:30.0%(同29.5%)」となった。人件費のように、定量的な説明が困難なコストの転嫁が難しい様子がうかがえる。
TDBは全体の転嫁率が低減していることから、4項目以外の要素についても企業の負担になっている可能性があると分析。地代やオフィス賃料、リース料、消耗品費などを例に挙げ、価格上昇によるコスト負担増が商品・サービス価格に反映させづらく「全体の価格転嫁率を鈍化させている要因となっている可能性がある」と指摘している。
まとめ
適正な価格転嫁促進の重要性は認識されながらも、多くの企業が苦戦している様子がうかがえる。持続的な賃上げやイノベーションへの投資が停滞する可能性が高いとして、TDBは「顧客に理解を求める努力を続ける必要がある」と指摘。また、環境を整備するためには、政府や業界団体による制度的な支援が求められると提言した。
価格転嫁の結果、物価が上昇することは従業員の生活に直結する。日本経済全体を見据えた施策の必要に迫られている、といえるだろう。














