「人手不足」倒産が前年同月比37.5%増、「人件費高騰」は2.7倍 TSR調査
株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2025年8月の「人手不足」関連倒産(速報値)に関する集計結果を発表した。本調査は、2025年8月の全国企業倒産(負債1000万円以上)のうち「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出し、分析したもの。なお、後継者難は対象から除いている。
8月では初めての20件台 累計237件で前年同期比21.5%増に
TSRの発表によると、2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は、8月では初めて20件台となる22件(前年同月比37.5%増)だったという。1-8月の累計は前年同期比を21.5%上回り、237件に達している。TSRは年間累計の予測として、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いだと分析した。
8月の「人手不足」倒産が大幅に増加した要因のひとつは「人件費高騰」とみられている。11件と8月では過去最多を記録し、前年同月の2.7倍に急増。企業の“賃上げ疲れ“がうかがえる。採用や退職阻止に不可欠ともなっている賃上げだがコスト増が収益を圧迫するなか、経営にとって「諸刃の剣」となっているようだ。
また「従業員退職(4件/前年同期比100.0%増)」も前年同月の2倍に増えたことが判明。一方で「求人難(7件/同30.0%減)」については、3年ぶりに前年同月を下回ったことがわかった。
出典元:2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増(株式会社東京商工リサーチ)
まとめ
人手不足の深刻さが増している状況がうかがえる集計結果となった。年間累計は初めて300件台に乗るとみられており、今後の推移についても注視する必要があるだろう。退職の増加による人材の流動化が進んでいることもあり、TSRは「人手不足」倒産についてこれからが本番となる可能性も高いと指摘する。
倒産理由に「人件費高騰」が急増していることからも、賃上げが経営に与える影響の大きさがうかがえる。安定した収益確保への取り組みに対する公的支援や施策の必要性が、より一層増しているといえるだろう。補助金の活用や福利厚生を活用した「第3の賃上げ」の導入など、積極的に検討したい。
参考:「賃上げ」支援助成金パッケージ(厚生労働省)
参考:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト(株式会社エデンレッドジャパン)













