AI導入「先進」企業は全世界で5％、「後進」企業の約1.7倍の売上高成長率を実現　BCG調査

経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ（以下：BCG）は、企業のAI導入とその効果について調査したレポート「The Widening AI Value Gap: Build for the Future 2025」を発表した。

60％がAIで十分な成果を出せず

本レポートでは9業界・25以上の業種における1250人の経営層およびAIに関する意思決定者を対象としたグローバル調査に基づき、戦略、テクノロジー、人材、イノベーション、成果といった、AIに関する基礎能力を示す41の指標からAI成熟度を評価。それに応じて「先進」「拡大」「後進（発展途上または停滞）」の企業群に分類している。

それによると、AI導入で「先進」に該当する企業は世界全体でわずか5％にとどまっており、ほか35％は「拡大」に、残る60％が「後進」に分類されている。最先端のAI活用の能力を部門横断的に構築し、AIによって継続的に大きな財務的価値を創出する「先進」企業に対して「拡大」は十分なスピードを伴っていないとみられている。

また「後進」については、基礎的な組織能力を整えてAIへの取り組みを始めている「発展途上（46％）」と、ほとんどAIへの取り組みを行えていない「停滞（14％）」とが含まれており、どちらの企業群も、AIによる収益向上・コスト削減の成果が上がっておらず、取り組みの拡大に必要な能力もまだ整っていないことがうかがえる。

先進企業は、2025年に後進企業の2倍以上のAI投資を計画。その結果として、売上高の伸びは2倍、コスト削減効果は40％増になると見込まれているという。さらに、BCGの分析によると、先進企業は後進企業と比べて売上高成長率は1.7倍、3年間のTSR（株主総利回り）は3.6倍、EBITマージン（利払い・税引き前利益が売上高に対して占める割合）は1.6倍といった、多方面の価値を創出していることが明らかになった。

出典元：「The Widening AI Value Gap: Build for the Future 2025」（ボストン コンサルティング グループ）

AIエージェントによる価値創出

BCGは企業がAIで生み出している価値に大きな差が生まれている理由の一つとして、AIエージェントの台頭を挙げる。調査によると、AIエージェントが生み出す財務的価値は、2025年時点ですでにAIが生み出している価値全体の17％を占めている。さらに、この割合は2028年までに29％へと増加する見込みだという。

また、BCGは先進企業において、AIに投じる予算のうち15％をAIエージェントに割り当てている点に注目。こうした先進企業の3分の1がAIエージェントの実運用に至っている一方で「拡大」に分類された企業で実運用に至っている割合は12％にとどまり、後進企業ではほぼ運用されていないことを報告している。

中核機能のほか、IT業務でも価値を生むAI

BCGは業種別のAI導入状況について、特にソフトウェア、通信、ペイメント・フィンテックといった領域で先行していることを報告。一方で、ファッション・ラグジュアリー、化学、建設などでは相対的に進行が遅い状況にあるという。

さらに業種を問わない傾向として、AIが全社的に生み出す価値の70％は営業・マーケティング、製造、サプライチェーン、価格設定など、直接的な業績に関わる中核機能に集中していることも明らかになった。ただし、IT業務ではAI導入による価値のうち13％が創出されており、この割合はサポート機能の中では例外的に高くなっている。

まとめ

AIの導入で先行している企業とそうでない企業とで、大きな差が開いていることが明らかになった。その理由のひとつが、AIエージェントへの予算分配にありそうだ。AIエージェントが生み出す財務的価値は今後数年で2倍近くまで伸びると予想されている。先進企業の取り組みを、今後の運用の参考にしたい。