転職満足度「企業風土」が最も強く影響 スコラ・コンサルト調査
株式会社スコラ・コンサルトは、全国の社員100名以上の企業に勤める一般社員・管理職2106名を対象に、転職や働くことに関する意識についてアンケート調査を実施。本調査では、働く人たちが退職を考えてしまう会社の状況と、転職せずに長く勤めたいと考える会社の状況が明らかになった。
調査概要
調査主体:株式会社スコラ・コンサルト
調査方法:調査会社のインターネットアンケートモニターによる回答
調査期間:2025年5月23日~2025年5月26日
有効回答数:2106人(一般社員・係長1868人/管理職(課長・部長)238人)
出典元:株式会社スコラ・コンサルト
現在の勤務先の状況「仕事が属人的で負荷が集中」40.2%
本調査ではまずはじめに、現在勤務する会社について肯定的な状況と否定的な状況が対になった項目から、あてはまるものを選択する形で質問。その結果「⑮仕事が属人化されており、特定の人に負荷が集中している(40.2%)」が高い割合を示したという。
一方で「①有給休暇を取得しやすい雰囲気がある」や「②公平性や倫理、コンプライアンスが重視されている」「⑥残業が少なくワークライフバランスを取りやすい」のほか、③④⑤⑦の上司や同僚との関係に関する項目は、肯定的な項目が否定的な項目を上回ることが明らかになった。
否定的な項目が肯定的な項目を上回るものとしては、前述の「⑮仕事が属人化されており、特定の人に負荷が集中している」以外にも「⑪保守的で、新しい考えや取り組みは受け入れられにくい」「⑬社内政治・根回し・忖度の文化がある」「⑭トップダウンが強く、社員の意見が採り入れられることは少ない」などが挙げられた。
短期退職要因と長期定着要因について
続いて「勤務先の状況」について、転職意向別に分析。転職意向は「1年未満に転職したい」から「まったく転職を考えていない」まで6段階あり「上司に相談しやすい」「同僚と相談や助け合いをしやすい」「コンプライアンスが重視されている」との項目では「1年未満に転職したい」人の否定割合が肯定割合よりも高くなった。同社は周囲の人と相談・助け合いがしにくいことや会社のコンプライアンス軽視の姿勢に問題を感じていることが、短期退職の要因のひとつになっている可能性を指摘している。
また「心理的安全性がある」「成果を上げた人が正当に評価され活躍しやすい」「会社の方向性に共感している社員が多い」「上司が部下の成長を支援してくれる」「ワークライフバランスが取りやすい」といった選択をした人では「転職はまったく考えていない」人の肯定割合が否定割合よりも高くなった。これらの要素が、長期定着の要因となっていることがうかがえる。
なお「会社の方向性への共感」は他の項目に比べて、肯定が多くなりにくい傾向が見られた。しかしながら「転職はまったく考えていない」と回答した層では「肯定が否定を上回る」という、特徴的な結果が報告された。
転職先の総合満足度に与える影響力について
次に、転職者の分析を実施。「転職経験・転職検討経験」を回答した1986名のうち、1回以上転職したことがある人は49.1%(976名)だった。同社は転職理由やそれ以外のデータもあわせて分析している中で、働く上で重要な要因として「給与」が他の項目よりも突出した数値となっていること。加えて「企業風土」「人間関係(特に上司)」がそれに続く傾向が、しばしば見られることを報告している。
さらに、転職に関するさまざまな要因が「今の会社に転職して良かった」という転職先の総合満足度にどのように影響しているのかを分析。その結果「総合的な評価」において「今の会社の方が良い」と満足している割合は61.8%であることがわかった。「給与や福利厚生」「残業時間・休日出勤・柔軟な働き方」は「今の会社の方が良い」が他の項目よりも高く、それぞれ62.3%、65.5%という結果になった。
また、総合的に考えて「今の会社に転職して良かった」という転職先の総合満足度に最も強く影響するのは「会社の体質や企業風土」であり、その他の項目の3~4倍の影響力があることも可視化された。
まとめ
人材確保・定着において「賃上げ」への取り組みが重視される中、本調査では転職時の総合満足度は「給与」よりも「会社の体質や企業風土」が影響していることが可視化された。転職時にはすでに提示された給与に納得して転職していることから、こうした結果となったことが推察される。
人材定着において「会社の体質や企業風土」が重要なポイントとなっているということは、体質の改善やより良い企業風土の醸成が転職者だけでなく、既存の従業員にとってもプラスの影響になるといえるだろう。改めて自社の状況を見直すとともに、改善できる点がないかを検討する際の参考にしたい。














