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高市政権の「賃上げ」方針、企業現場とギャップ フォーバル GDXリサーチ研究所調査

2025.12.09

フォーバル GDXリサーチ研究所(本社:東京都渋谷区、所長:平良学)は、中小企業を対象にした「2025年度第2回 中小企業経営実態調査」を実施。2025年6月の「骨太の方針」で「実質賃金を毎年1%程度増加させる」方針が示され、企業の賃上げに向けた支援がさらに拡大する中で、中小企業の賃上げ状況や取り組みによる効果などを明らかにした。

調査概要

調査主体:フォーバル GDXリサーチ研究所
調査期間:2025年9月16日~2025年10月17日
調査対象者:全国の中小企業経営者
調査方法:ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
有効回答数:1464人
出典元:フォーバル GDXリサーチ研究所調べ

3割の企業が「賃上げできていない」

3割の企業が「賃上げできていない」

本調査ではまずはじめに、中小企業の経営者を対象に賃上げの実施状況を質問。「2025年1月以降に実施している(15.4%)」「2025年以前から実施している(50.9%)」「実施していない(33.7%)」という結果となった。

同研究所が昨年9月に発表した、賃上げの実施状況に関するレポート(※)では「実現できている(14.3%)」「物価上昇を上回るほどではないが、賃上げは実施した(41.7%)」と、実施していた企業は56.0%。賃上げの実施企業は10ptほど増加している。

しかし同研究所は「政府の支援状況を踏まえると、その上昇幅は小さい」との見解を示している。

※参照:ブルーレポート 2024年9月号

賃上げを実施していない理由「売上や利益が伸びていないため」が最多

賃上げを実施していない理由「売上や利益が伸びていないため」が最多

続いて、賃上げを実施していないと回答した経営者に理由を質問。その結果「売上や利益が伸びていないため(39.9%)」「人件費の増加が経営を圧迫するため(24.1%)」「賃上げの必要性を感じていないため(17.6%)」といった回答が上位に並んだ。

一方で、賃上げを実施した企業では賃上げを実現するために「売上・利益の向上に向けた事業推進(38.2%)」「価格改定(値上げ)・価格転換による利益改善(36.8%)」「取引先との価格交渉(32.2%)」などに取り組んだことが判明。継続的な賃上げを行うために健全な経営とともに売上・利益を増加させ「賃上げの原資」を確保していることがうかがえる。

「賃上げを実施した効果」実感している企業は約4割

「賃上げを実施した効果」実感している企業は約4割

また、賃上げを実施した理由として「従業員の定着率や満足度を高めるため(73.6%)」が最も多く挙げられた。一方で、賃上げを実施した効果については「どちらともいえない(34.0%)」「特に効果は感じていない(23.8%)」との声が過半数を占めた。

しかし、「賃上げの効果を感じた」と回答した、約4割の経営者からは「従業員のモチベーションが向上した(85.6%)」との回答が最も多く、実施した理由に見合う効果を得られている経営者も一定数いることが明らかになった。

まとめ

同研究所は「賃上げを実施しながらも効果を十分に感じられていない企業においては、目的や業績との連動性など、賃上げの背景情報が従業員に伝わっていない可能性がある」と指摘。賃上げで従業員の定着率や満足度の向上を実現するためには、従業員が賃上げの意義を実感できるような戦略的コミュニケーションが不可欠であると解説している。

高市政権は「稼ぐ力」の強化を通じた持続的な賃上げの重要性を強調しており、2025年6月の「骨太の方針(※)」では「実質賃金を毎年1%程度増加させる」方針が示された。しかし、本調査はそうした政府の意向と企業の現場とではギャップがあることがうかがえる結果となった。このギャップを埋めるには、支援策を十分に活用しながら賃上げの原資確保に向けた取り組みの拡充と、従業員と経営層とのコミュニケーションの充実を図っていく必要がありそうだ。

※参照:経済財政運営と改革の基本方針2025