日銀の追加利上げ「企業の経常利益」2%押し下げる試算 TDB調査
株式会社帝国データバンク(以下:TDB)は、保有する企業データベースのうち2024年11月-25年11月までに決算を迎えた企業財務データを対象に、企業の借入金利引き上げに対する影響度について、2025年1月に続いて3回目となる調査・分析を実施した。各平均値は、上下各5%、計10%のトリム平均値を使用している。
調査概要
【分析企業】
・長短借入金を含む「有利子負債」と、それに伴う「支払利息」が発生している企業
・対象は全国約10万社(全国・全業種)
・決算期末のデータに基づくため、借入金の返済・借り換え、追加での借り入れによる有利子負債の増減については考慮していない
【用語定義】
・借入金利:有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP等を含む総額)に対する利息の割合
出典元:日銀の追加利上げが企業に与える影響度調査(2025年12月)(株式会社帝国データバンク)
追加利上げによる企業負担は年64万円増加 1.6%の企業が赤字転落
TDBは、過去1年間に決算を迎えた企業で長短借入金を含む有利子負債を有する約10万社を対象に、借入金利の上昇に伴う支払利息への負担や経常利益に与える影響について2025年1月調査以来、3度目の分析を実施。借入金利の上昇幅は、現行の借入金利から+0.25%~最大+2.00%のシナリオを想定してそれぞれ試算している。
この結果、企業の借入金利が現状から0.25%上昇した場合、企業では1社当たり平均で年間64万円の支払利息負担が新たに発生。経常利益を平均2.0%押し下げる見込みだという。また、経常損益が黒字から赤字へと転落する企業は対象10万社のうち約1700社(1.6%)の発生が見込まれる。
また、今後さらに追加で1.00%まで引き上げられた場合には、利息負担は年128万円の増加、赤字へと転落する企業は約3500社(3.3%)の規模まで膨らむ可能性が示された。TDBは2025年1月時点の調査結果との比較について「いずれのシナリオでも赤字への転落企業、経常利益の下押し効果ともに減少した」と報告している。利上げによる影響度は低下傾向にあるようだ。さらに本調査では、業種別では「不動産業」の受ける影響が最も大きいことが判明。反対に、最も負担が小さいのは「建設業」だという。
まとめ
日本銀行は12月19日、政策金利を0.50%から0.75%に引き上げると発表した。「金利のある世界」への転換が着実に進む中、各種コスト高を背景に価格転嫁がしやすいインフレ局面への転換で、企業が収益性を改善しやすくなったことを背景に、徐々に利上げへの耐性を獲得しつつある様子がみられている。
とはいえ、業況の悪化を借入金等の補充で凌いできた中小企業については「急激な金利環境の変動による支払利息の増加で資金繰りが一層厳しい局面に直面する可能性もあり、その動向を引き続き注視していく必要がある」とTDBは指摘する。業界や取引先の動向にも注目しながら、利上げへの対応を進めていきたい。
金融市場調節方針の変更について(日本銀行)













