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これからの「働く」はどう変わるのか? 不可逆な4つの「社会構造の変化」

 急激な少子高齢化、労働人口の減少、デジタル社会への転換、AIの進化など、社会構造は大きく変化しています。その中で、我々が働く環境も変化を遂げつつあり、個人の「働く意識」が問われ始めています。

 ビジネスパーソンがこれからの「働く」をどう捉えればいいのか、どのようにキャリアプランを立て、どのような働き方を選択していけばいいのか、解説したいと思います。

避けては通れない、4つの不可逆な変化

 これからの「働く」を考えるとき、避けることのできない4つの「不可逆な社会構造の変化」があります。

 1つ目は、「Social」(社会構造)
 2つ目は、「Economy」(経済構造)
 3つ目は、「Technology」(技術)
 4つ目は、「Political」(組織の統治機構)

 それぞれにおいて、どのような変化が起こると予想されるのか、順に説明していきましょう。

社会は終身雇用から「終身成長」に変わる

 まずは「Social」(社会構造)。
日本の人口は、戦後右肩上がりで増加してきましたが、2008年をピークにジェットコースターが急下降するかのように急速な減少に転じています。それに伴い、主な働き手となる15~64歳の生産年齢人口も、ものすごい勢いで減少しています。

 一方で、「人生100年時代」と言われるように、個人の寿命および“健康寿命”が伸びており、「生涯現役で働きたい」と考える人も増えています。つまり、一生涯において20歳から80歳ぐらいまで、実に60年ほど働くのが当たり前になりつつあります。

 しかし、「企業の寿命」は短命化しています。
 ある格付け会社の調査によると、1960年代には約60年だった企業寿命が、現在では20年を切っているとのこと。個人の就業寿命と、企業寿命のバランスが大きく崩れ、単純計算では一生のうちに4回は働く場所を変える機会がある、ということになります。

 このような環境下では、企業が個人の雇用を保証できなくなります。実際、トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」、経団連の中西宏明会長も「終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言しています。

 従ってこれからは、個人が、どこに所属していようと生きがいを持って働き続けられる“終身成長”の考えを持つことが大切になると考えられます。

サービス経済化が進み、「人・データ・期待」を備えた企業が主役になる

 次に、「Economy」(経済構造)。
 現在、日本のGDPの7割を第三次産業が占めており、就業人口の7割がサービス業に携わっていますが、今後はこの割合がますます高まると予想されます。

 トヨタ自動車では現在、Maas(Mobility as a Service)に注力する姿勢を打ち出しています。Maasとは、移動手段をモノではなくサービスとして提供するということ。第二次産業の権化ともいえるトヨタが、サービス業化を表明しているのです。建設業や不動産業でも、スマートシティ・デザインやプロパティ・マネジメントなどサービス業へと事業領域を拡大しており、あらゆる業態がサービス業化する時代になっています。

 サービス産業の特徴は、同時性、同場性、中小産業参入性の3つ。現在サービス業は、今ほしいものがクリック一つですぐに手元に届けられるような「リアルタイム性」が価値とされていて、供給サイドより需要サイドが力を持っていますが、そういうサービスを提供するのはフットワークのいい中小企業のほうが得意だったりします。メルカリやUberが代表例であり、「今すぐほしい」の需要に対応できるプレイヤーが経済の主役になると予想されます。

 少し前までは、企業の経営資源は「人・モノ・カネ」と言われてきましたが、現在は「人・データ・期待」。つまり、データを駆使してユーザーの期待に応えられる。そして、そういうサービスを次々生み出せる人が確保されている。そんな企業が力を持つ時代がやってきます。

人とデジタルが融合することで、人間の可能性が刷新される

 3つ目は、「Technology」(技術)。

 過去、人類は3回の産業革命を経験しました。18世紀に起こった第1次産業革命は、水力や蒸気機関による工場の機械化、19世紀の第2次産業革命は、分業に基づく電力を用いた大量生産、そして20世紀、1969年ごろに起こった第3次産業革命では、電子工学や情報技術を用いたオートメーション化が起こりました。これらにより、機会による人間の力の「代替」や「拡張」が進み、人の力ではできなかったことがどんどん実現できるようになりました。

 そして、今始まりつつあるのが「第4次産業革命」。デジタルと物理、そして生物(人)が融合することで人間の能力が刷新される…と予測されています。

 現時点でも、誰もがスマートフォンを手放せなくなっており、デジタルと密接につながった生活を送っていますが、これがさらに進めば、「技術」と「生身の人間」が切っても切り離せない時代になるでしょう。

 代表的なのが「VR」の普及拡大。例えば近い将来、ドクターがVRを装着し専用グローブでメスを握れば、地球の裏側のブラジルの手術室につながって、日本にいながら手術ができるようになるかもしれません。

 もっと身近なたとえで言えば、VRの中に職場ができ、オフィスの存在がなくなるかもしれません。みんな好きな場所でVRを装着して仕事をすれば、離れていてもコミュニケーションを取ったり会議ができたりします。職住近接なんて言葉は、早晩なくなるかもしれません。

「サッカー型」企業統治により、個が活かされる時代へ

 4つ目は、「Political」(組織の統治機構)。

 従来、日本企業は軍隊型の企業統治が主流でした。まるで野球のように、監督がいて、その下にコーチがいて、選手たちをコントロールするようなピラミッド体制でした。

 しかし、社会構造が目まぐるしく変化する現在では、変化に柔軟に対応できる「サッカー型」の統治が主流になりつつあります。監督はフィールドの外にいて、選手がボールや敵の動きに合わせてその場で判断し、実践する。つまり、社員一人ひとりが周りの動きに対して臨機応変に考え、対応し、その都度周りと共創する。そんなしなやかな組織形態が、ピラミッド型を凌駕する時代がやってきます。

 このように、日本社会においては、後戻りすることのない大きな変化が今まさに訪れています。社会は終身成長に変わり、サービス経済化が進んでリアルタイムな期待に応えられる組織・人が主役になり、テクノロジーを使って思考や肉体を拡張する「デジタルヒューマン」な人が台頭し、ビジネスパーソン一人ひとりの「個」を活かす時代になる――。

 我々は今、この大きな変化の“とば口”に立っているということを、ぜひ理解しておきましょう。

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