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これからの「働く」はどう変わるのか?②~転職市場は、100年に一度の大転換時代へ~

急激な少子高齢化、労働人口の減少、デジタル社会への転換、AIの進化など、社会構造は大きく変化しています。その中で、我々が働く環境も変化を遂げつつあり、個人の「働く意識」が問われ始めています。
ビジネスパーソンがこれからの「働く」をどう捉えればいいのか、どのようにキャリアプランを見立て、どのような働き方を選択していけばいいのか、解説したいと思います。

■企業も個人も「多中心化」の時代へ

前回は、日本において4つの不可逆な社会構造の変化が訪れていることをお伝えしました。今回は、社会構造の変化に伴う、転職市場の大きな変化についてご説明したいと思います。

少子高齢化に伴い、日本の労働人口は急速に減少しています。
高度経済成長期以降は、黙っていても若い働き手がどんどん市場に入ってくる「人口ボーナス期」にありました。しかし現在の日本は、少ない労働者が高齢者を背負っていく「人口オーナス(負担)期」にあります。

経済成長期においては、企業は「一中心」、すなわち同じモノを量産していれば業績を伸ばすことができました。同じ車、同じ家電、同じ家…「みんな同じ」でみんな幸せになれました。
しかし今は、企業も個人も「多中心」の時代です。企業は1つの事業だけを推進していてもすぐに提供価値は陳腐化し、業績が立ち行かなくなるため、事業の「多角化」を進めるところが増えています。個人も、1社に一生縛られるのではなく、副業を持ったりパラレルキャリアを目指したり、会社員と介護、子育て、大学院を両立するなどマルチフォームな働き方をする人が増えています。「変化の時代」に対応するには、企業も個人も、既存市場・既存事業で培った経営資源・経験資源を多重活用して、新規市場・新規事業、そして新たな領域に踏み出す必要があるのです。

■個人は「成長大陸への大移動」の動きが顕著に

労働人口の減少により、転職市場も構造的な売り手優位が続いています。

企業は、新規事業に乗り出したいのに、新しい分野に長けた人材を集めることができず悩んでいます。その結果、新規事業を別会社化して、これまでのブランドイメージを再定義し、リブランドによって新領域のタレント採用を成功させようとする動きも出ています。大手自動車メーカーがAI子会社を設立し、AIの知識と経験に長けた人材の採用に成功しているのが好例です。

一方で個人は、企業規模や知名度よりも、「自分が成長できるかどうか」を重視するようになっています。成長できる環境があれば、無名のベンチャーでもOKという、「成長大陸への大移動」が顕著になっています。

このような動きを背景に、転職市場では業界や職種、年齢、企業規模、地域など、これまで「壁」と言われていた採用基準のハードルがメルト(溶解)しつつあります。

リクルートエージェントの紹介実績を見ると、同業種転職よりも異業種転職の割合が増えているほか、5000人以上の大企業より300人以下の中小ベンチャーに転職する人が増えています。「同業種転職」が主流で「知名度の高い大企業への転職」を志すというこれまでの常識が、大きく変化しているのです。
また、40歳以上のミドル世代で転職を実現する人が増えています。人生100年時代に、ミドル世代も成長大陸に大移動しているのです。

■個人の「経験資源」に着目すれば、成長領域への移動が可能に

転職のハードルだったさまざまな「壁」がメルトすることで、個人は、自分の「経験資源」を活かすことで、今より成長可能な「新規市場・新規事業」に踏み出すことが可能になります。

例えば、生命保険会社で営業マネージャーをしていた人が、食品メーカーの品質管理マネージャーに転身したという例があります。生保に長らく務めていた人が転職先を考えたとき、これまでの常識であれば、視野を広げたとしてもせいぜい「金融業界の営業」止まりだったでしょう。しかし、食品メーカーの製造現場ではたくさんのパート女性が働いていて、彼女たちをうまくマネジメントすることが品質を大きく左右します。業界や職種は違えども、支店で女性営業を束ねてきた「経験資源」に着目したことで、自信の可能性を広げることができたのです。

企業側にも同様の視点が求められます。「ほしい人材がなかなか集まらない」と嘆く前に、「応募者を見る目」を変える必要があります。応募者の業界や職種、年齢などといったあいまいなラベルではなく、その人のもう一段奥にある知識や経営、さらに業務遂行能力や、人間関係の構築力といった「経験資源」をしっかり見れば、採用可能性はぐんと広がります。採用の常識をメルトさせられる企業=多様な人材を活かし多中心化を実現できる企業、と言うことができそうです。

実際、今まで企業が重視してきた「ラベル」はもはや意味を為さなくなりつつあります。例えば名刺に「営業」と書かれている人が100人集まっても、誰一人として同じ仕事、同じ働き方をしている人はいないでしょう。職種などで一括りに捉えず、肩書の奥にある「その人の経験資源」を見るべき時代なのです。企業も同様で、例えばトヨタを自動車メーカーと捉えるのはもう時代遅れであり、Maas(モビリティ・アズ・ア・サービス)など着々とモビリティ・カンパニーに移行しつつあります。

これまでの常識を完全にメルトして、モノの見方をガラリと変えることが、企業にも個人にも求められる時代。それぐらい日本の社会構造は大きな変革期にあり、転職市場も100年に一度の転換点にあるのです。

次回は、そんな環境下において企業はどのように人材を採用し、定着を図ればいいのか、どんな人事体制を整えればいいのかなどについて、考察したいと思います。

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