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これからの「採用」はどう変わるのか?⑪~コロナ禍で急増する「オンライン面接」~

 急激な少子高齢化、労働人口の減少、サービス経済化、デジタル社会への転換、AIの進化など、社会構造は大きく変化しています。働く個人の生き方や働き方に対する意識も大きな変化を遂げつつあり、そこに向き合う企業も採用戦略の新たな在り方が問われ始めています。

 そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業の採用活動も大きく変化しています。3月下旬に、リクルートキャリアが企業の人事担当者1,030人に実施した調査結果をもとに、詳しく解説したいと思います。

オンライン面接導入済み&導入決定企業は約30%、中途採用でも優位の傾向

 リクルートキャリアが企業の採用担当者に向けて実施した「オンライン面接導入の現状」調査によると、3月末時点でオンライン面接を「すでに導入済」と回答した企業は18.0%、そして「導入を決め、これから導入する」と回答した企業は11.8%でした。すなわち、導入済み・導入決定合わせて約3割の企業が、オンライン面接に本格的に着手していることがわかりました。

 さらに、「導入を検討している」と答えた企業は24.8%と、4社に1社は導入を検討していることがわかりました。アンケートを実施したのが3月下旬であり、4月の非常事態宣言の発令を背景に、多くの企業が在宅勤務を推奨したことを考えると、足元ではさらに多くの企業がオンライン面接の導入決定、もしくは新たに導入を検討しているものと予想されます。

 なお、オンライン面接を導入済み(これから導入も含む)、および導入検討している採用担当者に「導入する理由」を聞いたところ、上位は「自社と離れた地域・場所に住む候補者とも面接をするため」が61.4%、「面接場所の確保や案内などの時間を効率化するため」が55.5%、そして「候補者の移動の時間や交通費を削減してもらうため」が46.4%でした。

 候補者との距離を縮めたい、時間を効率化したいというだけでなく、「候補者の金銭的負担を減らしたい」という声からは、企業の「候補者に寄り添う姿勢」が見えてきます。コロナ禍にある求職者全般、そして子育てや介護といった行動に制約のある求職者に対して、オンライン面接の導入によって距離、時間、コスト面で寄り添いたいと考える企業が増えているのが特徴的です。

 さらに「中途採用充足状況」と「オンライン面接導入率」を比較したところ、興味深い傾向が見えてきました。

 2019年度の中途採用数について「計画を上回った」と回答した企業においては、すでに30.3%がオンライン面接を導入済みでした。一方、「計画を下回った」企業におけるオンライン導入済みの割合は14.3%にとどまっており、「計画を上回った」企業との差は実に16.0ポイントに上ることがわかりました。この結果を見ると、オンライン面接の導入により求職者の距離や時間、コストに配慮することは、採用優位につながる…と判断できそうです。すべての会社においてオンライン面接の導入は難しい現状もありますが、アフターコロナ時代、採用活動のオンライン化が「ニューノーマル」になる時代が来る日も近いでしょう。

「WEB面接ありの求人」は1週間で約5.5倍に伸⾧

 転職・求人情報サイトの『リクナビNEXT』では、このほど新たに「WEB面接ありの求人」を一覧にして、トップ画面から検索しやすいよう特集化しましたが、足元でオンラインでの面接に対応している求人件数が急増しています。4月17日時点で923件だった「WEB面接ありの求人」は、4月24日には5,058件に伸長、つまり、わずか1週間で約5.5倍に増えた計算になります。

 以前この連載で、『リクナビNEXT』内で検索された「検索ワード」ランキング上位に「在宅勤務」「残業なし」など働き方に関するワードが入るようになったとお伝えしました(参照)。場所や時間の制約を解き放ち、介護中でも子育て中でも働きたいという求職者の想いは、新型コロナウイルス感染症拡大の前から顕著に表れていました。

 こうした求職者の「ライフフィット志向」は、コロナ禍においてより顕在化しています。転職プロセスにおいても、「時間や場所にとらわれない転職活動がしたい」「WEB面接を実施している企業と(優先的に)出会いたい」という意向は、ますます高まると予想されます。「WEB面接ありの求人」の急増は、このような求職者の想いに企業側が本腰を入れて応え始めている…と捉えることができます。

求職者を選ぶのではなく「選ばれる」という意識を持つことが重要

 そんな中、企業側は、今後ますます「求職者に選ばれる」という意識を持つことが求められます。オンラインでの面接は、企業と求職者の関係性をよりフラットにする効果があるだけに、求職者に寄り添うことなく「志望動機は?」「うちで何ができるの?」など従来型の“上から目線の質問”をしてしまうと、求職者との距離を縮めるどころか余計に遠ざけてしまいます。一方的な質問ではなく、求職者が何を求めているのか「対話する」姿勢が、オンライン面接においてはますます求められるようになります。

 そしてこれらの姿勢は、人事だけでなく現場にも広く浸透させる必要があります。
ライフフィット採用には、経営・人事・現場による三位一体の採用活動が重要であると以前からお伝えしてきましたが、オンライン面接においても、現場社員に対してオンライン面接のトレーニングなどを実施するなど、現場を巻き込むことが重要です。

 人事という一部分ではなく、全社を挙げてオンライン面接に邁進できる企業は、そうでない企業と早晩、採用において大きく差をつけることができるはず。オンライン面接は、いままさに本格的な拡大を見せたばかりです。誰が・何を・どのように実践するのが有効的なのか? そうした仮説と実行と検証をどこまで全社レベルで実践できるか? いち早く現場を巻き込み、オンライン面接における「トライアンドエラー・アンド・ラーン(learn)」のサイクルを回し続けた企業が、採用において競争優位を確立できるのです。

 求職者の「ライフフィット志向」は、企業と個人の関係を「時間や場所での束縛志向」から「本来の目的や成果志向」に転換する駆動力となります。働く個人を“選ぶ”企業から、働く個人から“選ばれる”企業へ。そして、働く個人と企業が、時間や場所を超えて、目的や成果にまい進できる関係へ――企業の採用プロセスや働き方のリデザイン、そして今回のオンライン面接の普及拡大の流れは、企業の「あり方」をも再定義する一つの好機となるでしょう。

*「2020年5月27日執筆・寄稿」