長い話は商談を逃がす! 今すぐ役立つ「エレベーターピッチ」とは【中間管理職のビジネスマナー10の基本 Vol.7】
こんにちは。株式会社トークナビ代表取締役・アナウンサーの樋田かおり(といだ・かおり)です。社内外問わず、「話が長い」人に出会うこと、意外とあるのではないでしょうか。スピード感を求められるビジネス環境において、「手短に話すこと」はビジネスマナーの1つです。そこで今回は、今すぐ役立つ「エレベーターピッチ」と呼ばれるプレゼン手法を取り上げます!
長い話は相手の時間を奪う
商談や打ち合わせの際、「話が長い人」に出会うことがあります。ある企業では「初めまして」の場で管理職の方がご自身の経験を語り続け、予定の1時間が終わってしまいました。その後、何度か打ち合わせを重ねましたが、決断には至りません。同席した担当者が「社内でもいつも話が長くて」とこぼすほどでした。
一方、打ち合わせを和やかにスタートさせながらも、話が短く、決断の早い人もいます。その後の仕事もスピーディに進んだことは言うまでもありません。
スピード感を求められるビジネス環境において、「手短に話すこと」はビジネスマナーの1つです。長い話で相手の時間を奪うことは、ビジネスマナーに反しているとも言えるからです。
そこで、今回は社内でも社外でも、また上司の立場でも部下の立場でも使える「エレベーターピッチ」と呼ばれるプレゼン手法をご紹介します。
上司に手短に提案するとき
「エレベーターピッチ」とは、起業家が投資家とエレベーターに乗り合わせた15秒や30秒というわずかな時間で自らのビジネスをアピールする手法のことです。一般のビジネスパーソンもエレベーターピッチを練習することで、短時間でわかりやすく伝える力が身に付きます。
例えば、総務部門のリーダーであるあなたは、業務生産性向上策として社内にマニュアル作成ツールを導入することを検討しているとします。ある日、会議で待ち時間が発生し、この場を使って上司に次のように説明しました。
「〇〇や〇〇などいくつかのツールを検討したのですが、ビジュアルSOPをベースにしたプラットフォームで、今、注目されているものなんですが、〇〇というサービスを導入候補にしています。これは〇〇の業務に必要な操作や手順をわかりやすいマニュアルにして作成したり共有できたりというツールで、教える人の負担を軽くしたり、あと、困った人がすぐ解決したりできて、業務生産性向上につながるものになります」
いかがでしょうか?
一文に多くの情報が入っているため、聞き手の上司にとっては肝心の「候補となっているツールの良さ」が伝わりにくいと思われます。
3つの改善ポイント
これを改善するポイントは3つあります。
1つめは一文を短くすることです。句点の数を増やし、「です。」「ます。」で文章を区切ることを意識して話します。
2つめは、専門的な言葉を一般的な言葉に置き換えることです。担当者としては聞きなれた言葉であっても、初めて聞く人にも伝わる工夫が必要です。耳から聴きやすい言葉にします。
3つめは、最初に結論を持ってくることです。短い中でわかりやすく伝えるには、結論・理由・具体例・結論の流れで相手に話を伝える「PREP法」がお勧めです。
3つのポイントを実践してみると、このような説明になります。
「導入したいのは、画像や動画をベースにしたマニュアルが簡単に作成できる〇〇というサービスです。いくつかのツールを検討した結果、当社の業務にもっともマッチしていると考えたからです。これを使うと、〇〇の操作や〇〇の作業を視覚的にわかりやすいマニュアルにするこができ、教える人の負担を減らせます。〇%のトレーニング時間削減効果が見込めます。次の会議で、〇〇サービスの導入を正式に提案したいです」
「です。」と言い切ることで、聞き手が理解しやすくなります。また、わかりやすい言葉を使いながらも、論理的な話し方で、伝わりやすくなりました。
日常の短い報告の場などで、ぜひ、3つのポイントを意識して話してみてください。
さらに上達を目指す人には
さらに上達を目指す方には、結論・理由・具体例・結論の流れで相手に話を伝える「PREP法」A=Ahead(未来・主張)を加えた「PREPA法」をお勧めします。例えば、上述のツール導入提案では、最後に「動画マニュアルの導入で〇〇を変革します!」のような言葉を加えます。結論を繰り返したあとに未来の話を加えることで、相手の印象に残りやすくなるからです。
話し方の3つの改善ポイントについて述べましたが、もう1つ大事なことを付け加えるとすると、「相手に伝えようとする気持ちを持つこと」です。
いくらわかりやすい言葉を使っていても、論理的な構成になっていても、相手に伝えようという気持ちを忘れてしまうと、機械的な表現になってしまいます。相手にこれを伝えるんだという気持ちを持って話しましょう。
「エレベーターピッチ」の練習として、話し方の改善と同時に行いたいのが、”伝わる声”づくりです。
管理職世代の方からよく聞くお悩みに「声が通らない」「低く、こもった声になる」というものがあります。
低音でも”伝わる声”にするために、長音の発声練習がお勧めです。長音とは、「あー」のように長く引きのばして発する音のことです。
まずは、足を肩幅に開きます。
いつも通り「あー」と声を出します。
次に、指を3本立てて、口に縦に入れてみます。今度は、そのくらいしっかりと口を開けた状態で、「あー」と発声します。
空気の通り道ができ、声が出やすくなったことを感じていただけると思います。
普段、話すときはこれほど大きく口は開きませんが、発声練習では指を縦に3本入れるくらい開きます。
今度は息を軽く吸い、口から吐き出しながら「あーーーー」と長めに声を出してみてください。
口から息をすべて吐き切る(お腹がへこむ)、鼻から息を吸う(お腹がふくらむ)という腹式呼吸ができていないと、5~10秒程度しか声が続かないと思います。目指すのは、20秒~30秒です。
3メートル先の人に声を届ける
実際に話し始めるときは、出だしの発声を高く、しっかりと行ってください。長音の発声練習をした後、出だしを力強く発声するだけで、自信に満ちた声に変わり、堂々とした話し方に聞こえます。
例えば、「おはようございます」の場合、「お」をしっかりと発声します。よくあるNGパターンは、「はようございまーす」という、出だしの「お」が聞こえない挨拶です。やる気がない、疲れていると感じますよね。「お」をしっかり発声することで、やる気にあふれた挨拶になります。
また、声が通らないとお悩みの方は「声を前に出す」ことを意識してみてください。自分の3メートル先に人がいると想定し、その人に対して声を届けるようなイメージです。「声を前に出そう」という意識を持つだけで、相手に届きやすい声になりますよ。
次回は「ファシリテーターを任された!慌てないための心得」
本コラムでは、社会人経験10数年以上、役職もつき、部下もいる。そんな中間管理職のあなただからこそ再確認しておきたい「ビジネスマナーの基本」を、アナウンサー社長の樋田かおりがお教えします。
次回のテーマは「ファシリテーターを任された!慌てないための心得」です。ファシリテーターは司会とは異なります。総務や管理部門として社内会議のファシリテーターを務めることがある方は、ぜひお読みください!