コミュニケーションを活性化させるうえで最も重要なものは? 【リモートワーク共存時代~これからの社内コミュニケーションの在り方とは? Vol.6】
第5回では、これからの企業の持続成長に必要なコミュニケーションチャネルについての仮説と、それをつくっていくにはどうすればいいのかということについての仮説を提示した。最終回となる今回は、なお残る疑問、よくある質問について回答していきたい。
質問1 会社で飲み会などをしたら事足りるのではないか?
第5回でも掲載しているが、今回提案しているコミュニケーションチャネルが、通常の飲み会や会社のフォーマルな会議と何が違うのか?をご覧いただきたい。
飲み会は、他愛もない話、プライベートな話をするには最適なチャネルである一方で、当事者たちが真剣に悩んでいることが交換されづらい。交換されても愚痴や不満になって、拡散して終わってしまいがち。最初のうちは新鮮でも何度かやっていると、個性がぶつかり合い、気が合う・合わないという問題が顔を出しやすい。
それに対して、本来必要なチャネルは、フォーマルな場でも、インフォーマルな場でもなかなか話されないテーマを交流する場。
具体的には、当事者たちが、「実は、仕事を進めていく上で大事、重要だと感じていること、悩んでいること、問題・ヒントを感じていること」を巡ってやり取りし、お互いに意図を確認したり、自分たちで前に進める場、学び合ったりする場として最適なチャネルだ。このような場を、是非社内で作っていただきたい。
質問2 社内ではそのような場をつくることが難しいように思う(つくってもなかなかうまくいかなかった)
簡単でないからこそ、今多くの企業で枯渇しているとも言える。仮にうまく言ってないとすれば、下記のようなことが原因ではないかと思われる
① 「こんなことを悩んでいるのは自分だけではないか」「相手にどう思われるかわからない」という不安が払しょくされず、場に表出されない。
② 「そういう場を用意したから、さあ話して!」と言われても、話すことを強要されると、問題意識や疑問、違和感があってもひっこめたくなってしまう。
③ 正解を導き出すような場になってしまう。社員の問題意識の大半は「正解のない問題」。しかしそういった議論の展開をしているうちに、どうあるべきか?が議論され、結果解決の難しい問題になってしまう。
④ 不全感が残る話し合いが積み重なってしまい、「話したところで変わらない」という既決感が生まれる。
では一体どうすればいいのか?
弊社は仕事柄、コミュニケーションチャネルづくりを請け負うが、もしも社内で実践するのであれば、その際に重要になるのは、「現場を受け持つマネジャー」が、所属チーム内で、こういったコミュニケーションチャネルをつくることにトライいただくことであり、そのためのポイントは下記3点だと考える
① 話題(と順番)
・参加者の関心や思いを引き出すケース・場面・話題を選定
・受講者の「関心」を起点にして、次のテーマを用意していく
・必要ならば順番・時間・ケースの変更も柔軟に
コミュニケーションを活性化させるうえで最も重要なものは「テーマ」。多くのフォーマルな会議体はあらかじめテーマが設定され、時間も限定されているが、こうした場で疑問や違和感を自由に表出することは難しい。一方で飲み会のようにテーマそのものがセットされていなければ拡散するだけ。参加者にとって話したいテーマは何か?を考え、セットいただくこと
② コミュニケーションのスタイル
・お互いの立場に立ち会って
・感じたまま、思ったままを自由に発言。互いの違いを感じ、楽しむ
・正解はなし、すべては仮説
・批判・分析はNG
・共感・賛成・好奇心からの質問はOK
多くの会議体では、「営業としては……」「リーダーとしては……」と各々の役割・責任を前提にした話し合いになり、一度対立構造になると平行線をたどりがち。かといって、お互いが立場や役割を無視して野放図にしてしまえば議論は拡散するだけ。ではどうすればいいか? 一つのポイントは、お互いがお互いの立場に立ち合うことを念頭に置いて交流することを推奨したい。
また正解は何か? どうあるべきか? という議論をしたり、お互いの発言に「それはいかがなものか?」と評価したりする場ではなく、批評は一切なしで、「自分はどう感じるのか?」「自分はどう思うのか?」を自由に発言し、お互いの違いを感じ、楽しむスタイルで進めていくこと。
③ 進行役のスタンス
・説明・説得・誘導しない
・発言者の真意・関心にフォーカス
・参加者と一緒になって悩み、楽しむ
通常の会議体の進行役のミッションは、あるテーマについてしっかりと議論を進め、何らかの結論を出すこと。よって目的から逸脱した発言があればたしなめるのが普通であり、議論を進める中でなにかの結論に結び付けたいと焦るもの。しかし焦らず待っていただきたい。参加者の喉元でつっかえていた疑問や違和感は、ふとしたことで表出するものであるし、参加者の根源的な欲求は、「自分のことをわかってもらいたい」というもの。満たされれば自分たちで事を前に進めようとするもの。マネジャーからは、「そのような場の行き着く先がわからない議論は耐えられない」というお声をいただくが、メンバーは様々な意見の中から、自分に相応しい意見を自分たちでつかみ取っていくものと信じて関わっていただきたい。
質問3 結局対面でないと、コミュニケーションは活性化しないのではないか?
以上3つのポイントがしっかりと守られた場であれば、それが「オンライン」であっても活性化したコミュニケーションが実現できるのではないか? というのが、弊社が当初抱いた仮説であり、実際にコロナ禍で様々なお客様に対して、オンライン上のセッションを実施した。結果、多くの企業でコミュニケーションの活性化を実現することができている。その意味では、対面でなくても、コミュニケーションは活性化するというのが筆者の見解だ。
ただし、1点だけ留意いただきたいのは、人は言語だけでなく、表情や身振り手振りなど様々な情報から意味・意図を受け取るもの、ということ。
対面のコミュニケーションで最も利点があるのは、「五感」で相手の言いたいことやその思い・真意を受け取れる点。相手が身を乗り出して話をした瞬間、私たちはそれが相手にとって大変関心のあるものだと感じられるし、深いため息の後コメントを出した瞬間、それが相手にとって何らか深い意味を持つのではないかと感じられる。その点はオンラインよりも対面の方が受け取れる情報が多い。相手が本気でそのことを言っているのか、言葉以外のあらゆることを含めて他人は判断するものだと筆者は考える。
上記の特性を踏まえたときに、対面とオンラインで取り扱うべきテーマは分けるべきだと感じている。
深刻で、深い悩み、通常よりもセンシティブな問題、例えば会社にとって重要な戦略推進など、メンバーが本気でやるといっているのかどうかを強く信頼しあわなければ進まないテーマを扱うチャネルとしては、対面に適性があると考える。他方で、悩みのレベルがそこまで深いものではなく、仕事上の些細な疑問、違和感を交換・交流するようなもの、例えば日常の業務改善などを取り扱うチャネルとしては、オンラインでも十分通用するのではないか。
質問4 ここまで社内コミュニケーションに気を遣わなければならないのか?
これからの新しい働き方が進んでいく企業において、「コミュニケーションをマネジメントする」という概念が必要になってきているのではないか。そこに投資する必要性も価値も十分にある、というのが筆者の見解だ。
自律・分散・協働の時代において組織の新しい力を引き出すには、「社員の自発性・協働性を引き出し共に学び合いながら事業を前に進めていく」場の創出が必要不可欠。そして今の環境はまさに新しいコミュニケーションチャネル創造のチャンスともいえる。
対面だけでなくオンラインツールを活かせば、時間や場所の制約からも解放され、コストも負担も大幅に軽減する。これまでの組織内では、なし得なかったコミュニケーションのチャネルを創ることができる。フォーマルでもなくインフォーマルでもないチャネル、自由に感じていることや思うことを言い合える、自発性・協働の精神に満ちたチャネルが創造できる。何よりも、社員はフォーマルなチャネルではなし得ないコミュニケーションに飢えている。
「こんな話が本当は(みんなと)したかった」 と発する内容の先に、社員の願望と会社の願望実現を両立するヒントが隠されている。是非一度お試しいただきたい。