掲載希望の方 オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

フラット組織の運営は難しい! 上下関係は必要だった?人材育成の今【中小企業の組織づくり~いまこそ階層別育成の時代 vol.1】

皆さんの組織にはどのような役職の方がいらっしゃるでしょうか。部長、課長はあるとして、最近課長、係長、主任といった役職はない、あるいは、部長も課長もない、というケースもあるでしょう。スタートアップ企業だと、階層が3階層程度…ということも珍しくありません。そもそもピラミット構造ではなく、フラット化しているという企業もあり、それが肯とされるような気運があります。ところが、いざ組織運営をしてみるとフラットな組織の運営難易度は非常に高く、あらためて階層別組織の良さが見直されているように感じています。そこで本連載では。中小企業の組織づくりをテーマに、階層別育成の考え方について解説していきます。ぜひ、自社の組織づくりに生かしていただければ幸いです。
第一回は、人材育成の今について、変遷を振り返りながら見ていきます。

目次

(1)組織階層の変遷について~フラット化からの揺り戻しで求められる階層制
(2)組織を機能させるには~階層に求められる期待が実は結構多い
(3)多様性を活かすマネジメントと組織づくり~それぞれの階層が期待役割を発揮できる組織に
(4)階層別期待役割(トランジションモデル)~成長を10の役割ステージに分けて考える

組織階層の変遷について~フラット化からの揺り戻しで求められる階層制

「組織のフラット化」というキーワードを皆さんお聞きになったことがあるかと思います。日本の企業では、かつては階層があることが好まれていましたが、徐々にフラット化(=階層が少なく平坦な)組織が求められるようになってきました。

改めて、皆さんの組織にはどのような役職の方がいらっしゃるでしょうか。部長、課長はあるとして、最近、係長、主任といった役職が、めっきり少なくなったな、と感じています。創業間もない新興の企業だと、階層が3階層程度…という企業様も見かけます。

組織形態にはそれぞれメリット、デメリットがあります。階層が多い組織は、組織を統制しやすいというメリットがあります。一方、承認の段階が増えるので、意思決定に時間がかかる、ということや、職場の中での「上下関係」をたくさんつくってしまうことで下の階層から意見が出にくい、といったデメリットが生まれます。そのことが昨今の時代に合わない、ということから、フラットな組織づくりが目指されるようになりました。

意思決定のスピードが上がる、組織の風通しがよくなるといったことはフラットな組織のメリットです。一方でフラットになってしまうことにより、例えば、新しく入ってきた人に先輩として手本になる、指導育成に関わるといったことを期待しにくくなる、ということが起きます。

フラットな組織が増えてきた揺り戻しとして、やはりしっかり階層を作って、期待した階層の役割を果たしてほしい、と希望される企業様がまた徐々に増えてきた気がします。

組織を機能させるには~階層に求められる期待が実は結構多い

以前担当した企業様で、フラットな組織を目指しマネジメント層をつくらなかった企業様がありました。若い方たちからするとフラットな組織は魅力的に映ったようで採用もうまくいっていましたが、数年経って「やはり組織の統制が利かない…」ということで管理職の任命を行い、階層を新たに設けた企業様がありました。

フラットな組織は、人数規模が少ないときは良いのですが、社員数が増えていくとだんだん統制が取りにくくなっていきます。マネジメントを効かせ、多くの人数を統制しながら戦略を推進しやすいのは階層があるピラミッド型の組織です。

フラットな組織はメンバーそれぞれが自律していればいいのですが、入社したての新人や、まだ組織に馴染んでいない中途入社の社員の端まで全員が自律しているというのは現実には考えにくいことです。必要な人には適切な指導や支援を組織でしっかり行っていかなければ、フラットな組織のメリットが生かせず、逆に立ち行かなくなってしまう可能性が高くなります。

会社というのは一見、それぞれが任された業務(タスク)をきっちり果たしていれば、事業が前に進むように感じてしまいます。しかし、「職場における、周囲の人に感じる不満」をイメージしてみると「任されたタスクを、しっかりやってほしい」ということだけではないような気がします。

「先輩社員なんだからもっと後輩の面倒みてほしい」「マネージャーなのに、仕事を乱暴に割り振るだけ!私の将来や成長をちゃんと考えてくれてるのかな…」こんな不満を周囲に感じたことはないでしょうか。こういった不満がある、ということは「先輩として」「マネージャーとして」という「階層に見合った期待役割を果たしてほしい」という期待があることの裏返しともいえます。周囲の方を見渡してみて、果たしてほしいことを整理していくと、階層に求められる期待が実は結構多いことに気づくのではないでしょうか。

多様性を活かすマネジメントと組織づくり~それぞれの階層が期待役割を発揮できる組織に

「組織として統制はとりたいが、上下関係をつくることで窮屈な組織にしたくない」「コンプライアンスもあるし、組織としてしっかり管理したいが意思決定のスピードは緩めたくない」など、なんとか良いところを両立させたいものですがなかなか難しいところです。

「組織は戦略に従う」という言葉があるように、戦略が進みやすい組織を作っていくというのが原則的な考え方ですが、組織の形態はさまざまで、その形態の特徴としてメリット・デメリットはどうしても生まれてしまいます。

ただ、このような組織のデメリットとなるような点は、マネジメントで補うこともできるのではないでしょうか。確かに上下関係をつくると下の人は上の人にものを申しにくくはなりますが、マネジメント層の“関わり方”がフラットであるということや、普段から信頼関係が作れているといったことが担保できれば、風通しの良い組織をつくることは可能です。

マネージャーだけでなく、リーダークラスの皆さんが後輩指導を役割として担ってくれるとさらに人も組織も成長が加速できます。

組織の形態も大切ですが、それぞれの階層が期待役割を発揮できるように促すことも組織づくりには重要なのではないでしょうか。

階層別期待役割(トランジションモデル)~成長を10の役割ステージに分けて考える

ビジネスパーソンの成長を10の役割ステージに分けた、弊社作成の「トランジションモデル」というものがあります。

さかのぼると、お客様から「『役割転換不全』が起きているのだけれどどうしたらいのだろう?」とご相談を受けたことがこのモデル作成の発端でした。「役割転換不全」とは、例えば「課長に任命したのにプレイヤー業務ばかりやる人がいる」「部長に任命したのに課長のようなことしかしない。あれでは大課長だ」といったことです。

このような現象の原因や解決策を考える手がかりとして、当時600社を超える多くの企業様に、社内の「階層」についてのアンケートやインタビューを行いました。

この結果から、社会人が入社してから社長になるまでに10のステージ(階層)があることがわかりました。このことから、それぞれのステージで期待されている役割、期待された役割を全うするために必要なスキル、経験なども併せてまとめていきました。

なお、ステージを上がることを「トランジション」と呼んでいますが、各ステージの定義の他にトランジションを起こすために周囲がどう関わったら良いのか、トランジションが進んでいる兆し、トランジションがうまくいかないときの状態なども併せてまとめています。

※出典:リクルートマネジメントソリューションズ『トランジションデザインブック2.0』

※出典:リクルートマネジメントソリューションズ『トランジションデザインブック2.0』

本コラムではこのトランジションモデルをご紹介しながら、それぞれの階層に期待される役割と実践へのつなげ方のヒントをお伝えできればと思います。