ファシリテーターを任された!慌てないための心得【中間管理職のビジネスマナー10の基本 Vol.8】
こんにちは。株式会社トークナビ代表取締役・アナウンサーの樋田かおり(といだ・かおり)です。
近年、ビジネスシーンで「ファシリテーター」という役割をよく耳にするようになりました。ファシリテーターとは、会議や研修、会合などの場で議論を円滑に進めたり、参加者の意見をまとめたりする役割を担う人のことです。今や特別な職ではなく、社内会議でも設定することがあるファシリテーターの役目を、もしあなたが任されたら?
今回はそんな時に慌てないためのファシリテーターの心得や基本スキルをご紹介します。
今回のコラムの目次
・会社員にも必要なファシリテーターのスキル
・司会や進行役との違いは中立性
・ファシリテーター、5つの役割とは
・最初に共有!会議の目的を明確にする
・目的に合った雰囲気をつくる
・より具体的な問いかけや名前の呼びかけで参加者の意見を促す
・バックトラッキングも有効! 出た意見を整理する、要約する
・社内会議でも会議の時間オーバーはNG…時間管理をする
・オープンとクローズド、2種類の質問形式を使い分ける
会社員にも必要なファシリテーターのスキル
ファシリテーターというと、一般的にはゲストが複数登壇するようなシンポジウムなどの大きな会合の場にいることが想像され、オフィスで働く自分には関係ないと思う方がいるかもしれません。
しかし、最近は会社の中で複数の部署メンバーが参加する場合などにファシリテーターを置くことがあります。また、「無駄な会議」をなくし、業務の生産性を高める目的で、日常的に社内会議にファシリテーターを置く会社もあります。
中間管理職の方はもちろん、若手でもリーダー層になると、社内会議のファシリテーターを任せられることがあるかもしれません。そこで、今回はそんな時に慌てないためのファシリテーターの心得や基本スキルをご紹介します。
司会や進行役との違い
ファシリテーターとよく混同されるのが、司会や進行役です。司会や進行役は会議や会合などをあらかじめ決められた台本通り、時間通りに進めるのが役割です。会社の入社式や経営方針説明会などでは司会をプロに依頼することもあれば、運営を代表して人事部長や広報部長らが担当することもあるでしょう。
一方、ファシリテーターは時間内に円滑に進めることは司会や進行役と同じですが、さらに参加者の発言を促したり、まとめたりしながら、会議の目的達成に導く役割を担います。
社内会議のファシリテーターは、参加する社員が務めることが多いです。その場合、ファシリテーターは所属部署を代表する人としてではなく、中立的な立場で参加します。つまり、ファシリテーターは「中立的な立場の調整役」と言えます。
ファシリテーター、5つの役割とは
では、仮に総務部門にいるリーダー職のあなたが、ある社内プロジェクトの会議でファシリテーターを任されたとします。初めてでも慌てないために、これだけは知っておきたいファシリテーターの役割を紹介します。
会議の目的を明確にする
まず、会議の目的を明確にして進行することが大切です。何のための会議か、どのような人が何人参加するのかは、必ず事前に確認しておきましょう。
例えば、今回が社内プロジェクトの初めての会議で、いわゆるキックオフミーティングの位置づけだとすると、「メンバーの顔合わせ」「プロジェクト概要やゴールの共有」「モチベーションの向上」などが目的になると思います。
ファシリテーターであるあなたは簡単な自己紹介のあと、まず、「今日の会議の目的」について伝えてください。
最近はオンライン会議が増えたことで、1日に何件も会議をはしごする人も少なくありません。時間通り参加したものの「何の会議でしたっけ?」という状態の人をなくすためにも、最初に目的を共有しましょう。
目的に合った雰囲気をつくる
続いて、目的に合った雰囲気づくりです。
ファシリテーターの声は場の雰囲気を左右するため、ボソボソと暗い声で話すのはNGです。ただ、常に明るく元気な声を出せばよいわけでもありません。会議の目的によっては明るい声が合わないこともあります。
今回は社内プロジェクトですので、さまざまな部署から参加する人がいます。最初は緊張ムードが漂うかもしれません。会議の目的の1つに「メンバーの顔合わせ」があることを踏まえ、ファシリテーターは和やかな雰囲気づくりに努めましょう。
笑顔で挨拶する、ゆっくり話す、参加者1人ひとりの名前を呼んで自己紹介してもらうなど、初めてファシリテーターを務める方でもできることはたくさんあります。
参加者の意見を促す
社内プロジェクトが進んでくると、会議の目的が「アイデア出し」「意見交換」「意思決定」などに変わっていきます。このような会議では、参加者の意見を促すこともファシリテーターの役割です。
ただ、「どなたか意見のある人はいますか?」といった促し方では、積極的な人だけが発言することになってしまいます。会議に全員の考えが反映されるよう、ファシリテーターは参加者に均等に話を振っていきましょう。
発言ができていないメンバーに注意を払い、「○○さんは○○についてどう思いますか?」「○○さんはいかがですか?」と名前を呼んで問いかけるようにします。
出た意見を整理する、要約する
アイデア出しや意見交換が続くと、参加者は誰がどのような発言をしたかわからなくなることがあります。そこで、ファシリテーターが意見の整理や要約する役を担います。例えば、似たような意見をまとめ、「大きく分けると、3つの意見が出ました。1つめは○○(略)です」のように整理します。
いきなり整理や要約をするのはハードルが高いと感じた場合は、発言者の話のポイントとなる言葉を使って「○○ということですね」と繰り返すだけでも、参加者にはわかりやすくなります。これはバックトラッキングといって、上手な聴き方の技法の1つです。
会議の目的が「意思決定」であれば、ファシリテーターはさらに合意形成に導く役割も担います。さまざまな意見を振り返り、最終的にどの意見を採用するか参加者の合意を取ります。
時間管理をする
会議の時間管理をすることも、ファシリテーターの役割です。これは簡単に見えて、実はとても難しいスキルです。
ファシリテーターは必ず、事前に「目的の説明に○分」「アイデア出しに○分」「まとめに○分」のように、終了までの時間配分を考えておきましょう。会議中は手元に時計を置き、終了までの時間を見ながら進行します。
予想以上に議論が白熱したり、テーマを脱線したりした場合は、ファシリテーターが軌道修正する必要があります。「ご意見ありがとうございます。今日のテーマは〇〇です。残り3分でまとめに入ってください」」といった声掛けをしてみましょう。
社内会議だからといって、会議の時間オーバーが許されるわけではありません。
2種類の質問形式を使い分ける
このように、ファシリテーターは参加者に質問を投げかける機会がたくさんあります。最後に、質問の仕方についてのアドバイスです。
質問をするときは、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの2種類を意識してみてください。
オープンクエスチョンとは相手に自由に答えてもらう質問形式です。例えば、「このアイデアについて、○○さんはどのようにお考えですか?」といった質問です。
クローズドクエスチョンとは、「はい」または「いいえ」、「A」または「B」のように択一で答えてもらう質問形式です。例えば、「○○さんは、A案とB案ではどちらが良いと思いますか?」といった質問です。
参加者の発言を促したいとき、ある人の意見を聞き取りたいときには、オープンクエスチョンを使用します。一方、会議の終盤、参加者の合意形成をしたいときには、クローズドクエスチョンを使い、時間内に終えるようにしてください。
次回は「部下のモチベーションを上げる!聞き上手な上司になるために」
本コラムでは中間管理職やリーダークラスの方が再確認しておきたい「ビジネスマナーの基本」を、アナウンサー社長でビジネスマナー講師でもある樋田かおりがお教えします。
次回のテーマは「部下のモチベーションを上げる!聞き上手な上司になるために」です。部下やチームメンバーとのコミュニケーションに悩む方はとても多いです。聞き方について学びたいという方は、ぜひお読みください!