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コンプライアンスをどう教える?SNS、テレワーク時代に気を付けたいこと【中間管理職のビジネスマナー10の基本 Vol.10】

こんにちは。株式会社トークナビ代表取締役・アナウンサーの樋田かおり(といだ・かおり)です。

【中間管理職のビジネスマナー10の基本】最終回となる今回のテーマは、「コンプライアンスをどう教える?SNS、テレワーク時代に気を付けたいこと」です。「部下が知らないうちにコンプライアンス違反をしていた!」という事態にならないよう、コンプライアンスについて教え、リスクを未然に防ぎましょう。

目次

・社員のSNS投稿が炎上
・コンプライアンス=法令順守だけではない
・コンプラ違反?10のケース
・上司や管理職がお手本に

社員のSNS投稿が炎上

社員のSNS投稿が炎上

ある企業の若手社員がXの個人アカウントで、好きなプロスポーツチームの試合結果を見て、相手チームの選手を名指しで批判する投稿をしました。すると、投稿を見つけた相手チームのファンが怒りのコメントをつけてリポスト。あれよあれよという間に拡散され、怒りのコメントが止まらない事態になってしまいました。いわゆる炎上です。

その社員はプロフィールに会社名を出していたことから、相手チームファンの怒りの矛先は会社にまで及びました。炎上直後から会社の代表メールや代表電話に、「あんな社員を雇っているのか」「会社として責任をとれ」などと怒りのメールや電話が相次いだのです。

会社側は数日の間、対応に追われ、ホームページにお詫び文面を掲載、顧客に騒動のお詫びを入れる事態にまで至りました。社員は就業規則にのっとり、減給処分となりました。

SNSで他者を誹謗中傷する行為は、内容によって名誉毀損罪や侮辱罪等の刑事責任を問われる場合があります。また、SNS時代においては、一社員の軽率な行動が、所属企業に大きなダメージを与える可能性があることも、教えておかなければいけません。

コンプライアンス=法令順守だけではない

コンプライアンス=法令順守だけではない

最近では「コンプラ」と略され、企業活動においてよく耳にする「コンプライアンス」とは、そもそもどういう意味でしょうか?

コンプライアンスは「法令遵守など」と訳されることが多く、実は法令を守ることだけを指すのではありません。企業活動やビジネスパーソンにとってのコンプライアンスは、業界や会社の規則を守ること、社会的規範や倫理も含めて守ることを指します。

それでは、具体的にどのような行動がコンプライアンス違反に当たる可能性があるのか、見ていきましょう。次に挙げる10のケースは、コンプライアンスNG?それともOK?考えながら、読んでみてください。

①会社の倉庫にあった旧商品サンプル。持ち帰ってフリマアプリで販売した
②家のプリンタが紙切れになったので、会社備品のコピー用紙を1束もらってきた
③日本株が乱高下!気になったので、勤務中に私用スマホで株を売買
④新聞に自社の社長インタビュー記事が掲載!紙面を社員休憩室に貼り出した
⑤営業活動に使う提案書。外部セミナーでもらった資料から、業界サービス比較図を掲載
⑥会社の公式YouTubeで、自社ヒット商品の開発裏話を紹介。思わぬ業界から反響が!
⑦新規営業先で他社の導入例を聞かれ、同業の大手A社の名前や導入効果を教えたところ、受注に成功!
⑧今月の受注目標が未達だったので、ある会社名で契約書を作り、来月すぐ解約扱いにする
⑨通勤手当をもらっているけど、健康のために歩いて通勤
⑩休日に社用車でドライブ!

コンプラ違反?10のケース

①会社の倉庫にあった旧商品サンプル。持ち帰ってフリマアプリで販売した
②家のプリンタが紙切れになったので、会社備品のコピー用紙を1束もらってきた

①②どちらも勝手に持ち帰ったのであればNG行為です。会社の商品サンプルや備品は会社のものなので、社員が家に持ち帰った場合、窃盗罪や業務上横領罪にあたる可能性があります。

備品をたびたび持ち帰っていたり、他の備品にも及んでいたりして、会社に損害を与えたとみなされると、就業規則違反により懲戒処分を受ける可能性もあります。

③日本株が乱高下!気になったので、勤務中に私用スマホで株を売買

株価をチェックする行為は法律違反ではありません。しかし、多くの企業は就業規則で「勤務中は職務に専念すること」を定めています。そのため、勤務時間中に職務に関係のない株価をチェックしたり、取引を行ったりすると、職務専念義務違反とされる可能性があります。実際に、ある自治体職員が減給処分を受けた事例があります。

勤務時間中にスマホゲームをする、プライベート用のSNSをチェック・投稿することなども、同様にNGです。テレワーク中ならいいだろう、私用スマホならいいだろうと、甘く考えてはいけません。


④新聞に自社の社長インタビュー取材記事が掲載!紙面を社員休憩室に貼り出した
⑤営業活動に使う提案書。外部セミナーでもらった資料から、業界サービス比較図を掲載

どちらも、著作権がかかわる事例です。

④のように社長が取材を受けて記事が掲載された場合、その記事の著作権はどこにあるのでしょうか?「うちの社長が話したことだから、著作権は自社にある」と考えてはいけません。記事の著作権は取材・編集を行った新聞社にあります。

そのため、新聞社の許諾を取らずにコピーして配布したり、営業資料に載せたりするのはNGです。ただし、掲載紙そのものを休憩室に置いたり、貼り出したりするのは複製には当たらないため問題ありません。

⑤の外部セミナーでもらった資料は、主催者や講師の著作物です。資料にあるデータや図表を無断で営業資料に載せることは、著作権を侵害することになります。許可を取るようにしましょう。

⑥会社の公式YouTubeで、自社ヒット商品の開発裏話を紹介。思わぬ業界から反響が!
⑦新規営業先で他社の導入例を聞かれ、同業の大手A社の名前や導入効果を教えたところ、受注に成功!

どちらも成功事例に聞こえますが、⑦はコンプライアンス違反の可能性が大きいです。

多くの場合、社員は会社と守秘義務契約を結んでおり、職務上知った秘密を他者に漏らしてはいけないことになっています。そのため、A社の了承なしに、営業先で話すことはできません。電車の中やカフェなど不特定多数の人がいる場所で、顧客の社名や担当者名を挙げて話すことも控えましょう。

一方、ヒット商品の開発秘話などいわゆる「裏話」であっても、会社が公開許可を出したものであれば、発信することは問題ありません。

⑧今月の受注目標が未達だったので、ある会社名で契約書を作り、来月すぐ解約扱いにする

他人の印章や署名を使って契約書を勝手に作成した場合には、私文書偽造罪などに問われる可能性があります。「すぐ解約すれば問題ない」などと考えてはいけません。

領収書の偽造も同じです。金額を水増ししてうその経費を申請することは、私文書偽造罪や詐欺罪にあたると考えられます。「ちょっとくらい」と安易な気持ちでこのような行為をしたり、見逃したりしないようにしましょう。

⑨通勤手当をもらっているけど、健康のために歩いて通勤
⑩休日に社用車でドライブ!

どちらも軽い気持ちでやってしまう人がいるかもしれませんが、会社の就業規則により、処分を受ける可能性があります。

通勤手当については、自転車で通勤していたにもかかわらず、バスで通勤しているとうその申告をして通勤手当を受け取っていた自治体職員が減給の懲戒処分となったケースがあります。

社用車は業務用途で使用することが前提ですので、休日にプライベートでのドライブに使ってはいけません。ただし、福利厚生の一環として、社用車を私的に使うことを認めている企業もあります。業務利用外の範囲について、よく確認しておきましょう。

上司や管理職がお手本に

上司や管理職がお手本に

管理職世代の「当たり前」の感覚は、新入社員や若手社員にとっての「当たり前」とは限りません。ビジネスマナーについても、コンプライアンスについても、「このくらい知っているだろう」という思い込みを捨て、教える必要があります。最近は新入社員で「コンプライアンス研修」を行う企業も増えてきているようです。しかし、実際に彼らがビジネスパーソンとして成長する中でお手本とするのは、日々オフィスで接する人たちです。上司や管理職自身が意識を持って行動することが大切です。

本コラムでは管理職やリーダー職の方向けに、私がアナウンサーや経営者として意識してきたビジネスマナーやコミュニケーションの基本をお伝えしてきました。マナーのおさらいや情報のアップデートにお役立ていただければと思います。ご愛読、ありがとうございました。

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