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マネジャーが生きれば組織も生きる! 人材育成の今【中小企業の組織づくり~いまこそ階層別育成の時代 Vol.8】

皆さんの組織にはどのような役職の方がいらっしゃるでしょうか。最近は「係長、主任といった役職がない」あるいは「部長も課長もない」というケースもあるでしょう。スタートアップ企業だと、階層が3階層程度……ということも珍しくありません。そもそもピラミット構造ではなく、フラット化している企業もあり、それが肯とされるような気運があります。ところが、いざ組織運営をしてみるとフラットな組織の運営難度は非常に高く、あらためて階層別組織の良さが見直されているように感じています。そこで本連載では中小企業の組織づくりをテーマに、階層別育成の考え方について解説していきます。ぜひ、自社の組織づくりに生かしていただければ幸いです。
第8回は、マネジャーに昇進したて、もしくは昇進して2~3年など、新任マネジャーに期待される役割と実践へのつなげ方のヒントをお伝えできればと思います。

【過去のコラムはこちら!第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回

目次

(1)マネジャー(前期)の特徴
(2)期待役割
(3)こんなことは起きていませんか?

マネジャー(前期)の特徴

「マネジャー」と聞いた時、どのような対象を想起するか、範囲は人によりさまざまかと思います。以前ご紹介した弊社のトランジションモデルではマネジャーになりたての方は前期、ベテランの方は後期と、2つに分類して整理しています。今回はマネジャー(前期)に焦点をあてます。「課長クラス・部下がいる」方をイメージして読み進めていただければと思います。

期待役割

「Manager(前期)=マネジャー(前期)」にはどのような期待役割があるのでしょうか。
弊社トランジションモデルでは以下の通り定義しています。

……………………………………………………………………………………………………
個人と集団に働きかけて、上位方針にもとづいた組織業績を達成していくステージ(マネジメント)
●自らも担当業務はもつものの、メンバーを通して組織業績を達成する
●上位方針に沿って自組織の目標・計画・方針を定め、達成に向けて業務が前に進むように最適な判断を行う
●メンバー一人ひとりの育成責任を負い、業務アサイン・日常の関わりを通して、メンバーの成長をはかる
●メンバー同士が切磋琢磨・協働しながら成果を出していける関係性を組織内につくる
●他部署や社外と関係をつくり、自部署との連携を促進する
……………………………………………………………………………………………………
【出典:リクルートマネジメントソリューションズ『トランジションデザインブック2.0』】

1つ下のステージ、「Leading Player=リーディングプレイヤー」から「Manager=マネジャー」への変わり目は一般社員から管理職への変わり目であり、他のステージ間での転換に比べ、隔たりが一番大きいと言えます。

それまではいちプレイヤーとして直接お客様に関わりながら自分で業績・成果をつくることを求められますが、マネジャーになった途端、部下を介して間接的に業績・成果をつくることが求められます。自分の時間や仕事の緩急はコントロールしやすい一方で、他人の時間や仕事もコントロールする必要が出てきます。そのうえ、多くのマネジャーは1人ではなく複数の部下を抱えることが一般的でしょう。複数の他人の仕事をコントロールする難度は非常に高いです。加えて、昨今は専任ではなくプレイングマネジャーであることがほとんどです。つまり、自分の業績をつくったうえで部下の業績も管理しなければなりません。その他にも業務目標の達成だけでなく、コンプライアンス遵守、リモートワーク下でのメンバーの育成、メンタル面を含めた健康管理……やることは多岐にわたり、複雑化もしています。

近年管理職になりたいと思う若手・中堅社員は減少しているようです。さまざまな業務を抱えて、日々奔走し、ヘトヘトになっている上司の姿は、残念ながら部下にはあまり魅力的に映っていないようです。ひるがえって、上司が魅力的に映ればメンバーに良い影響力を与え、組織全体にも活力をもたらすことにもつながる可能性があります。

マネジャーに活躍してもらうためには、周囲がどのように関わるのがよいか、特にマネジャーになりたての前期と想定して起こりがちなことをケースにしてみました。
一緒に考えてみましょう。

こんなことは起きていませんか?

ここからはケーススタディです。皆さんのまわりにこんなマネジャー(「Manager(前期)=マネジャー(前期)」)はいないでしょうか。またそんなマネジャーがいた場合、周囲はどのように関わるのがよいでしょうか。

ケース①
Aさんは4月に課長に昇進し、営業1課を率いて4カ月になります。プレイヤー時代のAさんの業績は圧倒的で、Aさんがマネジャーになることに異論を唱える人はいませんでした。

もうすぐ半期が終わろうとしていますが、やはりAさん、プレイングマネジャーということもあり、自身の業績をしっかりつくっています。頼もしいAさんの印象について、直属の部下Bさんにきいてみました。

「Aマネジャーはすごい人だと思います。1課はメンバーが4人いるのですが、目標達成できそうなのはAマネジャーだけで、他は皆苦戦しています。でもAマネジャーが上乗せしてくれる業績で課は達成できそうなんです。Aマネジャーと同じ課なら毎期目標は達成できるので安心です。自分ですか?私は未達成に終わりそうですが、Aマネジャーのやり方を見てもよくわからないし、難しそうで……。到底真似できそうにありません。まあ、でも、課が達成できるから、いいですよね?」

ケース②
Cマネジャーに対する印象を直属部下のDさんに聞きました。

「Cマネジャーの下について1年になるのですが……。大きな声では言えませんが、正直うんざりです。約2カ月前、Cマネジャーから『私は▲▲は売れると思う。みんなで力を入れて▲▲を拡販しよう!』と会議で提案がありました。マネジャーが言うことだから……と皆従って営業活動に力をいれたのですがお客様の反応はいまひとつで、1カ月たっても売れる気配が一向にありませんでした。すると今度は『■■がトレンドだ!■■を拡販しよう!』と言うのです。▲▲にしても■■にしても、なぜそれが強化商品として採択されたのか、判然としなかったので、どのような基準で選定したのか?とたずねてみると『営業としての勘だよ!』と返ってきました。

今までCマネジャーの勘に付き合っていたのか……となんだかがっかりしてしまいました。次に『また新しい商品を売ってほしい』と言われたとしても、もう二度とやりたくありません。一番腹が立ったのは、評価フィードバック面談の時です。評価結果が悪かったので、なぜこの結果なのか理由をたずねたら、『私はDさんを評価していたんだけど、部長が悪くつけちゃったからさ……。しょうがなかったんだよね。』とコメントがあり、それ以上の説明は何もありませんでした。全く納得できません。」

次回はこれらのケースの対応策についてご一緒に考えてみたいと思います。