オフィス移転してからが本番!運用面の課題をどう乗り越えた?【バックオフィスのお悩み、freeeではこうして解決した!Vol.3】

皆さんの会社では事業成長や組織拡大に伴う様々なバックオフィス業務に課題を感じていませんか?
そんな「バックオフィスのお悩み」に、フリー株式会社がどのように対応し、それを乗り越えたのか、実例とともにご紹介しています。同様の課題に直面する企業の総務担当者様への実践的なヒントになれば幸いです。
第3回は1,000人規模のオフィス移転後の運用面の課題解決について。freeeでは移転直後に社内アンケートで課題を洗い出し、運用改善チームを立ち上げて物理・ルール整備・コミュニケーション施策の3軸で対応。オフィス移転は完璧を目指すより、使われ方を見ながら柔軟に改善を重ねる姿勢が鍵だと実感した事例を紹介します。
本社移転から数カ月、見えてきた課題
オフィスの移転は、企業にとって一大プロジェクト。立地や設備、働き方の再定義など、膨大な準備を経てようやく移転が完了すると、ひとまずホッと一息つきたくなるもの。しかし、私たち総務として実感したのは、「本番はむしろ移転“後”から」だということでした。
移転して約2カ月が経過したタイミングで、私たちは社内アンケートを実施しました。目的は、現場のリアルな声を吸い上げ、日々の運用における課題を明らかにするため。項目としては、「行きたいオフィスになっているか」という総括に加え「通信環境」「会議室」「執務室」「コミュニケーション」の4項目で移転の目的が達成されているかを確認する質問を用意しました。
結果は好意的回答が8割以上を占める一方で、多岐にわたるコメントから改善のヒントも多く得ることができました。アンケートから見えてきた主な課題は、以下のようなものでした。
●ファシリティ関連の混乱
会議室の場所が分かりにくい、会議室や収容人数が不足している、移動が多くて非効率など。
●備品・インフラの不足
飲み物が足りない、ごみ捨てルールが分かりづらい、ランチスポットが少ないなど、日常のちょっとした困りごとが業務の妨げに。
●ワークスタイルの課題
集中スペースが少ない、執務時フリースペースでのWEB商談の声が気になる、そもそも「コンセプト会議室*」を使ったことがないなど、オフィスのコンセプトと実際の運用とのギャップが明らかに。
*コミュニティ形成や交流をサブ目的とした会議室。会議ができる機能の他に、キッチンやゲーム、ダーツやビリヤード、DIYなどのコンセプトを持つ。(第2回コラムでコンセプト会議室の写真がご覧いただけます)
●コミュニケーションの停滞
オフィスに人はいるのに、部署を超えた自然な会話や出会いが生まれにくいという声も。
「運用改善チーム」を立ち上げ、総力戦で解決へ
これらの課題を一過性の問題として片付けず、継続的な改善サイクルを回していくために、私たちは「運用改善チーム」を立ち上げました。このチームは総務を中心に、Corporate ITチームやインフラチームから代表者を招いて構成し、部署横断で課題の共有と解決策の検討を進めました。
まずは、短期的に解決できる課題の中でも、特に物理的な改善が可能なものから取りかかることにしました。例えば、
●オフィスマップの刷新
会議室や共有スペース、備品の配置場所や現在地などを視覚的に分かりやすく表示した新マップを作成し、パネルとデジタルの両方で配布・掲示。
●備品の増強、明示化
ウォーターサーバーやホワイトボード等を増設。ごみ箱も増設し、分別ルールや備品の場所をわかりやすく掲示するなど要望に対応し細やかな改善を実施。

●ランチ環境や軽食コーナーの整備
移転した大崎エリアは飲食店が少なかったため、オフィス内で手軽に食事が取れるよう整備。牛丼自販機の設置に加え、お弁当販売を複数社に依頼し飽きないラインナップに。並行して従業員が自由におすすめ飲食店を入力できるランチマップをGoogleマップで作成し全社に共有。軽食コーナーや軽食自販機も増設し残業時のエナジーチャージをサポート。


●集中スペースの新設
静かに作業できる「集中スペース」を一角に設置。簡易なパーティションと音対策で、気軽に使える場所に。また集中業務を行う部署のフリースペースではオンラインミーティングや商談を控えるルールを制定。


●会議室設備の増強
収容人数の最適化、オンライン会議設備のチューニング、利用率の低い来客会議室を社内兼用へ変更。

しかし、物理的な改善にはどうしても限界があります。特に「会議室が足りない」「予約が取れない」といった根本的な課題については、ガイドラインの制定や会議利用ルールの明確化と周知というソフト面での対応も並行して進めました。
ガイドラインの制定では、会議室の利用に適したケースや優先度を明確にし、フリースペースでの代替利用ケースや利用マナーなどを定義することで、混乱の緩和を図っています。freeeの場合、オンラインの商談や面接で一人で会議室を利用していたケースも多かったため、専用のスペースを新たに設置し、交通整理を行いました。
さらに、会議自体の効率化や時間短縮を狙い、社内の「会議の達人」にインタビューしTipsを共有する連載記事を総務から発信し、まとめたTipsを会議室内のモニターに掲示するなどの啓発活動も実施。

偶発的なコミュニケーションを生む仕掛けづくり
コミュニケーションに関しては、「仕掛けがなければ自然には生まれない」という現実を直視しました。オフィスが新しくなっても、人の動きや心理はそう簡単に変わりません。
そこで実施したのが、継続的な部活動の新歓イベントや、コンセプト会議室を使った従業員同士をつなぐイベントなどの場作りです。これらの仕掛けにより、移転後部活動は50以上新たに増え、コンセプト会議室の稼働率は65%以上を維持しています。(会議室の稼働率は一般的には65~75%の稼働率が適正と言われています:参照 )
運用改善は“終わりのない旅”
オフィス移転はゴールではなく、新しい働き方を試し、調整していくスタート地点にすぎません。総務としては、現場の声を聞き取り、速やかに改善につなげていく姿勢が求められます。
freeeでは、いわゆる会社のバリューのひとつに「アウトプット→思考」という価値基準があり、アウトプットしたものを、フィードバックを得ながら改善し、よりよくしていくというアプローチを大切にしています。そのため、オフィス運用においてもその考えを軸に動いています。重要なのは、「最初から完璧を目指さず、着実に一歩ずつ前進すること」。課題は日々生まれますが、それに対して柔軟に向き合い、全社を巻き込みながら改善していくことが、真に機能するオフィスを作る鍵だと感じています。
次回は急成長中の企業にありがちな、人員の急激な増加による課題とその対応をお届けします。